163・プライベートビーチを奪ってみた③
「おまえら~・・・」
「知らん。こっちだって知らん!」
占拠したことで転移してきたなまけものは既に戦闘態勢で僕たちを睨む。が、睨まれたところで仕方ないだろとしか言えない。僕らだってよく分からなかったんだから!
まぁ戦闘するならやるけどさ、
3対1になるよ?
「はぁ・・まぁアレは俺のミスだし大きくは言えねぇけどよ・・・。もうちょっと何とかならなかったのか?」
「なまけが攻撃やめてくれればもうちょっとゆっくり考えられたんだけどね」
「うっ・・・」
「もうちょっとなまけのHPが高けりゃ相手が先に死んでたんだけどね」
「ううっ」
「大体『エクスキューション』で一撃死を狙うからHP満タンで乗っ取られるのよ」
「いやそれは知らんがな!」
なまけものを待つ間に、この数か月の間のアップデートにより新しく追加されたスキルブックを開いて『身呪怨』について調べておいた。
この時追加されたのはスキルブックと種族ブックでそれぞれ誰かが獲得したスキル、誰かがなった種族が表示される。これにより新規プレイヤーはどのような進化先があるか分かり、またどのようなスキルがあるかも分かるのでかなりいいアップデートだと思う。
しかし、表示させるには誰かがスキルを手に入れたり、その種族に進化する必要があるので歯抜けも多いし、冒険者が使用したスキルでもプレイヤーが誰一人手に入れていない場合は見れないようになっている。
その為、前に戦った夜叉のスキル『神波動』は表示されていなかった。
アレ全方位攻撃なので、結構使えそうな感じがしたんだが・・・『縮地』が魅力的すぎるから仕方ないな。
因みにこの種族ブックでドラゴン系を調べると、そこそこの量の種族が既に開示されている。見聞きはしないがドラゴンになっている人はそれなりに居るらしい。早く進化したいと思いはしないが羨ましく感じる。
話を戻すが、調べた結果『身呪怨』は発動後最初に自身を攻撃した相手を一定時間乗っ取れるらしい。乗っ取られた相手はステータスが半減(この所為でなまけものが先にやられたようだ)し何も操作できなくなり、一定時間経つか、僕らがやったように乗っ取り中の『身呪怨』を使った相手を攻撃して倒すしかない。
強力なスキルだが、1体1の戦闘ではほぼ使い道が無い(乗っ取って自爆は出来るが、そうなると自分も死ぬ)のと、消費魔力がかなり多いというデメリットもある為、多用は出来ないようだ。
「待て。それだと一定時間待てば俺は死なずに済んだのか?」
「そうなるね」
知らなかったから攻撃したけど、よくよく考えれば制限があるのは普通だ。特殊なボスタイプの冒険者は理不尽なスキル持ってるし永続の可能性もあるが、1種族が持っているスキルなのでそれはあり得ない筈。
さっきの戦闘を思い出す限り、そこそこ長そうではあるが・・・恐らく3分程度だろう。
「うーわっ! 俺死に損じゃん!」
なまけものが天を仰ぐ。
何かすまんな。
「いやいい。無事占拠出来たことだし良しとするわ」
「それならいいけど」
でも占拠してこれからどうするだろう。
既にココアは海で泳いで遊んでいるが僕らはすることが無い。ちょっと入り組んだ所にあるので冒険者や他のプレイヤーも来ないし・・・
「することは無いな。そもそも居座るというかオフライン時の経験値稼ぎ用だからな」
「やっぱり経験値ボーナス以外の特典は無いの?」
「無い。経験値ボーナスも若干やり過ぎだと思うが、持ってると有利になるんだったら野良のソロプレイヤーが不利になる。こういうのは奪って自己満足して終わりでいいんだよ」
「そういうものなのね」
まぁそうだろうな。
変に特典つけると殺伐とするからこれくらいで丁度いいのだろう。
「じゃあこれからどうするかな・・・」
「洞窟内行ってみない? もしかしたら隠しエリアあるかも」
「え、マジか? 中マジで迷路だぞ!」
「そうしよっか」
「じゃあ俺は此処居るわ。ココアも1人だと危ないしさ」
「分かった」
なんかなまけものがココアの保護者化してきてるな。もう乗られることにすら不満言わなくなったし。
まぁココアの行動って子供っぽいから分からなくもないけどさ。
「じゃあちょっと行ってくる」
「おー」
僕とユウさんは2人と別れてさっき通った洞窟へと戻る。
そして帰れなくなった。
次回更新は明後日の予定です