162・プライベートビーチを奪ってみた②
なまけもの :すまん、体動かせん
なまけものを見たと同時になまけものからチャットがくる。
チャットを読んでもう一度なまけものを見る。なまけものはいつも通りの動きでこっちに歩いてくるが・・・
「動いてるじゃん」
「『サンダー』」
「うわっと!?」
また『サンダー』が落ちて来た。何度も見ている技だから躱すのは簡単だが、くらうとバカみたいなダメージ受けるのでやめて欲しい。
というか何で攻撃してくんだよ!
「おい何すんだよ!」
なまけもの :知らん、俺じゃねぇ!
「『ブラックエッジ』」
喋らずにチャットで返してくるなまけものだが同時に攻撃もしてくる。チャットの内容を信じるとなまけものではない誰かがなまけものを動かして攻撃してるみたいだが・・・
「操られてるんじゃない?」
「誰に?」
「さぁ?」
ユウさん達が寄ってきた。
3人で考えてる間にもなまけものは攻撃を止めない。2人もなまけものの攻撃はよく見てるので、スキル名を聞いてからでも簡単に回避している。
とはいえ・・・
「いい加減鬱陶しくなってきた」
「私も」
「こっちも攻撃しよ? なまけだし攻撃しても問題ないよ」
ココアの提案に僕らは頷く。
だよな。なまけものだし多少殴っても問題ないだろう。
なまけもの :ある! 問題ある!! 死ぬ!
チャットのなまけものが慌てている。
いや、味方なんだからダメージ無いだろ。
「でもあっちの攻撃はダメージあるのよね? となるとこっちの攻撃もダメージあるかしら?」
「あ、そうか」
「じゃあ弱いこれで、『アクアエッジ』」
「『ダークランス』」
ココアが『アクアエッジ』をなまけものにぶつける。なまけもののスピードでは『アクアエッジ』を避けるのは無理だが、今のなまけものは避ける素振りをせずに『ダークランス』で反撃してきた。
躱した後になまけものを見てダメージはちょこっと入っているのを確認。
同時に変なことも確認した。
「ダメージあるね。というかHPゲージ2個ある」
「何で?」
「さぁ?」
聞かれても困る。
とにかくなまけものが変なのは分かった。恐らく龍馬が何かしたんだろう。本人はもう居ないが何らかのスキルでなまけものがこうなったのと考えるのが普通だ。
なまけものが知らんと言っている以上、何か特別攻撃されたわけでは無さそうだが・・・
・・・そういえばなんかスキル使ったように聞こえたアレか?
どんなスキルかは知らないが、状況から見て龍馬がなまけものを乗っ取った感じか? で、龍馬のHPがなまけもののと重なって見えてると。
じゃあ龍馬のHPを無くせばなまけものが解放されるということかな。
「でもどっちがなまけのHP何だ?」
「ダメージ量から見ると上っぽいけどね。ほら上の方がダメージ少ないわ」
「あ、ホントだー」
上段HPバーはちょっと減ってるのに対し、下段のHPバーは1割程減っている。なまけものは魔法防御力も高いので効いてる方が龍馬かな。
・・・いや単純に龍馬の方がHP低いだけか?
「とりあえず『紋切』で攻撃する? いつものなまけなら1発くらいなら大丈夫だと思うし」
「そうだね。もし足りなかったら『火球』でも当てるよ」
「あたしも攻撃したいー」
「じゃあ微調整の時はお願い」
なまけもの :頼むから殺すのだけは止めてくれよ?
すまん、保証は出来ないな。
じゃあユウさんよろしく。
「OK、分かったわ」
ユウさんはそう言うと走りだしてなまけものへと『紋切』を当てる。
相変わらずなまけものが避ける気配はない。まるで棒立ちしている人形に当てるかの如くまともに攻撃を受け、一瞬にして殆どのHPが吹き飛んだ。
なまけもの :ちょまっ!? やり過ぎ!!
「えー? 普通に当てただけじゃない」
こりゃ僕が攻撃する必要は無さそうだ。
今の一撃で上段が残り1割ほど、下段はもう有るか無いか分からないくらいまで減っている。今『火球』を当てると両方無くなるだろう。
流石ユウさん。ココアの『アクアエッジ』で上段が残り、下段が無くなる丁度いい感じまで減らしたな。
「じゃあココアよろしく」
「任せて! 確実に滅殺するよ!」
滅殺て・・・
削り切るのは下だけだぞ?
さっきのダメージ量から大丈夫だとは思うが、ココアだとクリーンヒットなどで両方0にしてしまいそう。
「『アクアエッジ』!」
が、心配は杞憂に終わった。
『アクアエッジ』を受けたなまけもののHPは下段だけ消え、上段はまだ残っていた。これでなまけものが解放されーー
「あれ?」
そう思ったや矢先、光となってなまけものが消えていく。そして光となったなまけものから抜き出るように現れる龍馬。龍馬のHPはさっきの上段と同じくらい減っている。
あー・・・間違ったわこれ
「下がなまけものだったかー」
「まあしょうがないわ。とにかくアレ片付けて」
「え? 僕が?」
ユウさんはやりたくないと言わんばかりに後ろへと下がる。ココアもいつの間にかユウさんよりもさらに後ろへと下がっていた。
「『身呪怨』」
そして龍馬はまた何かスキルを唱えて近づいてくる。今回は確実に聞いたが・・・しかしスキルが発動した様子はない。
若干不気味だが近付かれるのは勘弁なので『火球』で燃やし、目の前から消滅させる。
そして・・・僕も体が動かせなくなった。
いや体は勝手に動いている。さっきのなまけものと同じで龍馬に乗っ取られたらしい。何とか出来ないものかと抗ってみるがどうしようもなさそうだ。さっきと同様に攻撃してもらうしかない。
すぐさま2人にチャットで状況を報告。
2人は僕を見て理解する。
「・・・確かにHPが2つになってるわね」
「でも上のHPは無くなりそうだよ」
「乗っ取っても自分のHPは回復しないのね。これくらいなら1発攻撃するだけで良さそう」
ポンタ :火舞台でお願いします
ユウさんが金棒を担いだのを見てすぐさまチャットを送る。理由は分かるがアレで殴られるのは嫌だ。痛そうだし。
同じ状況になって分かるが、文句を言わず『紋切』を受け切ったなまけものはすげぇ。
「はぁ・・しょうがないわね。ココアちょっと離れてて」
「はいはーい」
「『火舞台』」
ユウさんは面倒そうにため息をつきつつも『火舞台』を使ってくれる。そして龍馬のHPがなくなるとプライベートビーチを占拠しましたのテロップと共に僕は体を動かせるようになった。
次回更新は明後日の予定です