146・隠しエリアに挑戦してみた①
本年最後の更新となります。いつもお読み頂き感謝です。
特に誤字脱字をご指摘して頂いた方、いつもありがとございます。
「ありゃ無理だぜ・・・」
「まだ言ってる」
イベントのハードで速攻やられたことに不満を漏らすなまけもの達と一緒に隠しエリアへと移動する。
ユウさんとなまけものが沼地に足を取られて遅くなるため冠水していない所を探して歩く。若干遠回りだが、個々の冒険者との戦闘も考えるとこの方が無難だ。
「はぁはぁ・・・」
「ユウさん大丈夫?」
「まだ・・・なんとか・・・ね」
しかし遠回りしているせいで、雨に濡れたユウさんがかなり弱体化している。ただ歩いているだけで息切れするくらい体が重いようで、戦闘できる余裕すらない。
乗せてあげたいところだが、ユウさんは重・・・、僕に乗るには体が大きすぎる。
とはいえ、冒険者は何とかなるが他のプレイヤーに襲われるとどうしようもないので、どうにかできないかと悩んでいると、ココアすっとユウさんの上まで移動した。
そして、
「変身!」
「おおっ」
『フォルムチェンジ』を使用して傘になった。そしてユウさんを覆い、柄がユウさんの目の前まで下りてきた。
ユウさんはココアの意図を理解し柄を掴んだ。
「ありがとっ」
雨に濡れなくなったユウさんは徐々に弱体化が弱まってきたのか、体の色が赤く、動きが早くなり始める。
ココアの機転のおかげで、何事もなく隠しエリアの入口まで到着。そして前回入った時の状況を伝える。何も知らないと僕みたいに入った後焦るからね。まぁ沼に潜るという時点で3人とも引いているけど。
「お前・・よく入ったな・・・俺ここ潜るとか無理」
「だって入らないと行けないし」
「そうかもしれないけど・・・。汚くない?」
「泥が顔につくのは流石に嫌」
そして全員拒否しだした。みんな嫌々言ってるが、それ全部僕やったんだけど・・・
「まぁみんな嫌がるなら、僕一人で・・・」
「まぁ待て、どうせこういうのって本当の入口が別に隠されてるんだろ? それ探そうぜ」
1人で潜ろうとした僕を止め、なまけものは周囲を見渡す。
確かにそういうのはある。入口から入るとかなり難しいダンジョンが、別の隠し入口からではかなり簡単に進めるというものだ。大半は攻略が苦手なプレイヤー対策らしいけど、この手のゲームにもあるのだろうか。
「そんなのあるの?」
「さぁな。でも、こういう水草を抜いたりすると入口がーー」
ガコンッ
なまけものが円になっている水草の一つを引き抜くと、沼の中で音がした。そして水が引き始める。現れてきたのは前回僕が入ったであろう穴と、その横の地下へと続く階段。
その様子を呆然と見ていたなまけものは、少ししてドヤる。
が、明らかに偶然なのは分かっているので、僕らになまけすげぇの感情は無い。
「ほ、ほら見ろ! 俺の言った通りだろ!」
「「「あ-・・・はいはい。凄い凄い」」」
「声だけでいいからもうちょっと心から言ってくれよ・・・」
まぁそんなことはどうでもいい。
偶然とはいえ新たな入口が出てきたのだ。行かない理由は無い。水も抜けたので汚れる心配もないから、ユウさん達も行けるだろうし。
とりあえず再挑戦のためになまけものが抜いた水草の位置を写真に撮っておいて、僕らは階段を降り始めた。
何故か僕が先頭で。
「そりゃ2度目だからな。初めての俺らを先導してくれ」
「この道は僕も初めてなんだが?」
まぁ今更行っても無理だが。入口が狭いので前後の交代できないし。
中は洞窟に石の階段が作られておりライトのようなものもある為それなりに明るく、トラップと呼べるものもない。多少狭いが安全に降りていける。
一応トラップに警戒しながら降りるが、前回に比べるとトラップが無さすぎる為、この辺には無いのかもしれない。
「なぁ、まだか?」
「まだまだ」
「じゃあもっと早く進まねぇか?」
「いや、トラップあるかもしれないし」
ずっと無言で降りてると後ろからなまけものが聞いてくる。
先は階段しか見えないので、まだまだ先だろう。そもそも前回落ちた距離と同じだけ下りるならまだまだかかるはず。
「それはないんじゃないか? あの穴の先はもっとあったんだろ?」
「そうだけど・・・。あの場所のトラップを思うと、この辺にあってもふしーー」
「不思議じゃない」言おうとして足裏に地面の感触がなくなっていることに気づく。
足下を見て、それからなまけものの顔を見る。同じ動作をしていたなまけものは「あっ」という顔をしていた。
そこにはちょうど穴が空いていた。話をする為によそ見してたのがいけなかった。
「ミスったぁあああ!」
「ポンタ!」
急に視界が暗くなり、落ちる感覚に襲われる。
落ちてく途中、僕を呼ぶ声が一瞬聞こえた。
次回更新は所用が重なり1月4日になる予定です。