134・負けたので先に進んでみた
「あ、ポンタ!」
「え? ユウさん?」
ロード画面後、オアシスに戻ってきた僕にユウさんが声をかけてくる。ユウさんがオアシスにいることに驚き、一瞬思考が止まる。
「どうしたの?」
「・・あ、いや・・・。ユウさんなんでここに居るのさ?」
「何故って・・・負けたからでしょ。全く歯が立たなかったわ」
「ユウさんが!?」
ユウさんによると相手のヴァルドロイドは、イベントに出てきた破盾のジャンと同様の戦闘スタイルだったそうで、彼より速く攻撃力も高いらしい。こっちの攻撃は当たらない上、相手の攻撃を2度受けただけでHPが無くなるほどの威力なのだそうだ。
「粘れば援軍来るかなって思って、何とか凌いでたんだけどね・・・。流石に無理だったわ」
「ごめん。こっちは何とか勝てそうだったんだけど・・・」
まさか短剣まで持ってるとは・・・、って普通に腰につけてたな。
完全に頭から抜けていた。
「ポンタも死んだってことは・・・」
「うん。そろそろ2人も来るんじゃないかな」
チラ見したときに既に押されてた。そこにヴァルドロイドとオドリスも加われば恐らく・・・
「はいはい、負けましたよ!」
「あんなの無理ー!」
暫くして2人が同時に復活した。
「どうだった?」
「馬鹿野郎! 4対2とか無理だって! お前ら早く死にすぎだろ」
「あとちょっとだったんだけど・・・」
オドリスには勝てそうだったけど・・・。ユウさんに勝ったヴァルドロイドやリーダーは無理そう。
「もう一回行く? 時間はまだある筈だし、場所も分かるし」
「どうする?」
「行くだろ。まだレベル上げ足りない」
「だよねー」
という訳でもう一回穴の場所へ移動したんだけど・・・
「俺らが先!」
「俺らだ! 先に来たの俺らだぞ!」
「どっちでもいいけど早よ行けよ!」
何か入口にわらわらとプレイヤーが集まっていた。どうやら誰が先入るかで揉めてるようだ。
「何だこれ!?」
「人いっぱい!」
「情報が漏れたのかな?」
「かもね」
プレイヤーが集まり入口の穴は見えない。ただ前の方がどんどん落ちていっているのであそこが穴なのだろう。
「あれだけ入ったら、中はプレイヤーだらけで広場までは無理だな」
「だろうね。魔晶石もーー」
「あ、皆さん!」
「ん?」
後ろから声をかけられて振り向くと、骸骨の2人組がそこに居た。そういえば調査隊か何かにやられたんだっけ。ここに戻って来てるってことはもう一度入りに来たのかな?
2人は僕らが気付くと直ぐ様頭を下げた。
「「すみません!」」
「? 何が?」
謝られるようなことはされてないんだけど・・・
「実は目の前のあれは俺の所為なんです。やられた後、他の友達と一緒に入ろうかとチャットを送ったつもりが、間違ってオープンチャットで送ってしまい・・・」
「ははぁ、それでサーバー内のプレイヤーに場所がバレた訳だ」
「それでこうなるの? すごい人気ね」
「俺もミスったとは思ったんだけど、誰もチャットに反応しなかったし大丈夫かなって・・・」
「で、来てみればこうなってたと」
「はい・・・」
パーティ募集やワールドアナウンスで常に流れているオープンチャットを読んでる人がこんなに居るとは。みんなちゃんと読んでるんだな、あれ。
「あの・・・すみまーー」
「いいって、いいって。もうやる事やったし。調査隊にはボロ負けしたし」
「そうよね。今入ってもすぐやられるだけだから」
「じゃあ当初の予定通り第3オアシスにでも行くか?」
「そうだな」
ずっと申し訳なさそうにしている2人に「気にしないで」と散々言い聞かせこの場を後にする。2人は他の友人ともう一度入るそうなので穴の方へと歩いていった。
「はぁ・・・、せっかくのチャンスだったのに・・・。やらかしてくれたぜ」
「まぁまぁ・・・、また見つければいいだろ?」
「そりゃそうだが、お前・・・簡単に言うけどアレって中々見つからないんだぞ」
「そうかもしれないけど、誰だって間違いぐらいあるしさ」
「分かってるよ、誰もあいつらが悪いって言ってないだろ~!」
なまけものは空に向かって「あー!!」と叫ぶ。その後もぶつぶつと文句を言っていたが、内容から察するに調査隊に勝てなかったことにイライラしてるらしい。
だが山頂に着く頃には、疲れが出て来たのか落ち着いたのか文句は消えていた。
「あと半分ね・・・」
「ちょっと休憩しようぜ?」
「そうするか・・・」
少し長めの休憩を入れてから、僕達は下山を開始した。
次回更新は明後日になります