129・またついて行ってみた
まるで周囲に知らせて回ってるかのような大きな声で話す冒険者のすぐ後ろを茂みに隠れつつ尾行する。話の内容からこの前の時限エリアに向かっているのだと推測し、急遽奇襲を止めて後をつけた。
なまけもの :それマジか?
ポンタ :多分。話の内容がこの前と同じだし
なまけもの :けどこの前お前が教えてくれた場所と違うぞ、あれもっと先だったよな?
ポンタ :うん、そう
少し離れたなまけものと会話する。声を出すとバレるので、全部チャットだ。
ここでバレると時限エリアの入口に辿り着けないので結構気を使う。前回はそんな所に行くとは思ってなかった上、1人だったので気楽についていけたのだが、今回は皆いるのでやらかさないように注意を払う。
「・・・なぁ、あんたら何してんだ?」
「!?」
が、そんな僕に皆のいない方から誰かが声を掛けてきた。急に声を掛けられたので大声を上げそうになったが、何とかこらえる。振り向くと見知らぬ2人パーティがそこに居た。
どうやら冒険者の声を聞いて倒すために寄ってきたらしいが、僕らが尾行しているのを見かけて声をかけたようだ。
話しかけてきた鎧を着た骸骨のプレイヤーは、驚いた僕に手を合わせて「すまん・・」と謝る。
ぶっちゃけその姿で、余計に声出そうになったぞ・・・
「あいつら時限エリアに向かってるっぽいからついて行ってるんだ」
「・・・時限エリア?」
「あれだよ、不定期に出現する場所の事だろ。あれついてったらそこ行けんの?」
「あれか!」
聞いてきた人は時限エリアに首を傾げたが、すぐ後ろに居たもう1人の骸骨が教える。同時にこっちにも聞いてきたので「恐らく」と言って頷いておいた。
それを聞いた2人は顔を見合わせ頷くと、
「俺らもついてっていい?」
「お好きにどうぞ。ただバレたら辿り着けないし、バレないようにだけ頼む」
「よっしゃ」
小さくガッツポーズする2人はそのまま僕らの少し後ろにくっついてきた。正直知らぬパーティが後ろを歩かれると奇襲されると思い落ち着かないが仕方ない。
ただでさえ気を使ってる最中なのに・・・
彼らが少し離れたことを確認し、至近距離に居たユウさんが小さい声で聞いてくる。
「いいの?」
「来るなとは言えないし、そう言って攻撃されても困る。別に時限エリアの人数制限は無いからいいんじゃないかな」
「ポンタがそういうならいいけど、後ろに居られると気になってしょうがないんだけど・・・」
「ごめん。それは僕も」
2人してソワソワしながら冒険者について行く。
前回同様10分程で冒険者たちは目的の所に着いたようだ。やっぱり前回の時とは場所が違う、毎度同じ場所に出るわけではなさそうだ。恐らく出待ち対策なのだろうと思う。
「あいつらどうする?」
「ここまで来たら倒してもいいと思う」
前回同様、冒険者が穴の前で入る、入らないの問答を繰り返している間になまけものが聞いてくる。前回は1人だったから彼らが何処か行くまで待ってたけど、今回は皆いるし。
「僕らあの冒険者達倒すけど、そっちはどうする?」
「え? あれ倒すの? 二つ名付きだから俺らには無理だし、倒すまで待ってる」
途中で攻撃されるのも覚悟していたが、彼らはずっと一定間隔をあけて最後までついてきた。【金棒】を見て戦闘を避けるところを見ると、そこまでレベルが高くないのかもしれない。
もしかして山エリア初めてか?
2人は見学するようだ。
待たせるのは悪いのでさっさと倒そう。
「じゃあなまけ、奇襲頼んだ」
「うーい、了解」
なまけものの『ダークランス』が冒険者3人を襲った。
次回更新は明後日の予定です