122・洞窟に入ってみた②
ボリボリッ・・・
「・・・意外といける」
魔晶石を食べながら探索を続ける。
この魔晶石は何故か甘い。恐らく光っている原因(多分)の魔力が甘いのだろう。光が消えると途端に無味の飴みたいになるので、舐めるのではなく甘みがあるうちに噛んで食べる。
「あ、こっちは通ったか・・・」
また道が分かれている分岐位置に辿り着く。2手のうち片方は奥が暗くて何も見えないのでもう片方の道を選んで進む。同時に分岐付近の魔晶石を根元から折って食べる。
食べているのはその道を通ったかどうかを判断するために行なっている。食べることにより光が消えるので、こうすることにより僕の通ったところは暗くなる。つまり明るい場所はまだ通っていないということだ。このやり方では帰り道が真っ暗になってしまうが、もうどれが帰り道か分からない現状なので気にしない。
迷った時点でタイムアップまでに戻ることは諦めている。
因みに光を消すのに魔晶石を食べる必要はないのだが、折角なので頂いている。名前が魔石の上位互換っぽいし、【金棒】についていた冒険者も興奮気味に『魔晶石が~』とか言ってたので多分希少なものなのだろう。
そもそもこんな時限エリアにある時点でレアな気がする。
「ボリボリッ・・・っと、次はこっちか・・・」
次の分岐は4又だったが、2つの通路は既に光が消えている。逆走はしていないのでぐるっと回ってさっき通った場所に戻ってきたのだろう。
『・・・・・』
「ん?」
何処からか声のような音が聞こえた。
気のせいかと思ったが、次はハッキリと聞こえた。
『思ったよりも深そうだ。お前ら気ぃつけろよ』
誰かの声だ。声質からして冒険者。
そう気付いた僕は4又それぞれの先を覗く。しかしどの道にも人影は見えないし、声は洞窟内で反響している為、何処から来るかが分からない。
「まいったな・・・ここ冒険者出るのか・・・」
1時間近くウロチョロしてたけど誰にも出会わなかったので、冒険者は居ないと思っていた。正直ここで戦闘になると時間が減るので避けたい。勝てるとも限らないし。
『こっちですね。魔力が濃くなってます』
『了解だ。しかし暗いな。火がないと足元すら見えん』
『これだけの魔力が空中に漂ってるとなると魔晶石が出来ていてもおかしくないのですが・・・』
『・・・・ここにあるぞ。だが折れている。誰か通ったか?』
『恐らく魔物かと・・・。ここに足跡があります』
『そうか・・・。なら調査の邪魔になりそうだから倒しておくべきだろうな』
冒険者の声が聞こえる。えっ、冒険者って足跡とか見てるの?
どうも泥濘んでいた地面についた足跡で僕が居ることがバレたようだ。他のエリアよりAIの知能が高い。
同時に視界の右に見えていた真っ暗な通路の奥が明るくなる。明かりの色からして火か何かだろう。いいな、僕も明かり欲しい。
「ってそういう場合じゃないな」
近付いて来ているのは確かなので。すぐさままだ通って無い通路へと進む。魔晶石を齧るのも忘れない。
少し先の曲がり角を曲がり、冒険者の様子を見る。冒険者達は数十秒後にさっきまで僕がいた4又に現れる。
念のためマーキングしてみた。レベル次第では勝てるかも知れない。
名前:ヴォイド
職種:調査隊リーダー
レベル:48
ランク:A
無理だった。
遠すぎたのか1番近い1人しかマーキング出来なかったが、その1人が明らかに無理。しかもランクA!
他も同等に近いレベルに違いない。
「逃げよう」
僕は冒険者・・じゃなかった、調査隊は無視して先に進むことにした。
次回更新は明後日の予定です