121・洞窟に入ってみた①
数分様子を見ていると、『中は危険だ、調査隊に任せよう』と【金棒】が言って、3人は穴から離れていった。僕は3人の姿が見えなくなったタイミングでその穴へと近付く。穴は深くて暗く先は見えないが、奥で何かが光ってるのか真っ暗ではなく何とか見える。
奥に絶対何かありそうだけど、これはネットに載っているのだろうか? 載っていたらなまけものが知っているし、その場合絶対「行こうぜ」という筈。
「つまり・・・誰も知らない?」
まぁそんな訳はないだろうが、少なくともネットにない場所かも知れない。そう思うとすごく入ってみたくなる。
幸いにも今日は1人なので相談する必要はない。周囲をキョロキョロして誰も居ないことを確認し、飛び降りる形で穴に入る。体感で数m落下した所で地面に着地し、
べちゃっ!!
「うへぇ・・・」
嫌な音と感触と共に、思いっきり地面に足が突き刺さった。どうやら下は泥濘んでいたようだ。
内心ヒャッホウ状態で入ったが、感触で一気にテンションが元に戻る。暗くてよく見えないが周囲の地面は全体的に泥濘んでいるようで、臭いし歩き難い。
とりあえず奥の光のある方向へと歩いてみるが歩き難いせいで思ったよりも時間がかかった。
「うーわっ、汚な・・・」
光源の近くまで寄ると自身の姿がよく見える(といっても前足と尻尾くらいしか見えないが)ようになったが、その姿は泥んこ遊びした子供並に汚れている。だが汚れを落とす術が今は無いため、嫌な感じだがこのまま進むしかない。
「光ってたのこれか・・・」
気を取り直して光源を調べる。光っていたのは壁から突き出すように生えた結晶で、淡い赤色の光を放ち少し怪しさを感じる。もしかしてこれが冒険者の言っていた魔晶石だろう。
軽く小突いてみると脆いのか根元から折れた。
びっくりして慌てて飛び退く。
「うわっ・・・あ~消えた」
落ちた魔晶石は数秒後には光らなくなりただの水晶になる。まだ周りにあるので周囲が見えなくなることは無いが、壊し過ぎるのは良くないな。
「あれ? なにこれ?」
ふと視界の端に時間が表示されているのに気付く。どうやらカウントダウンしてるようで、その上を見ると[崩落まで]と書いてある。
恐らく崩落はこの洞窟だろう。カウントダウンは残り1時間半弱あり、無くなると崩れてこの洞窟が消えるのだと理解した。分からないのは崩れた時に居たら死ぬのか、出口に強制送還されるのかどちらなのだろう。
恐らく前者の気がする。
「時限エリアなのか。てことは急いだほうが良いな」
僕は暗くて先が見えない洞窟の奥へと歩を進めた。あ、一応録画しておこう。
そして暗い中を彷徨う事十数分後・・・
迷った。
この洞窟思った以上に広い。暗い上に入り組んでいて、太陽も見えないので今どっちに進んでいるかも分からない。完全に迷子になってしまった。
「・・・もうどの道から来たのかすら分からん・・・」
まるでアリの巣かと言わんばかりに枝分かれしている道。しかも殆どが行き止まりでイライラしてくる。いい加減入ったことを後悔し始める。
せめて何処から来たか、何処を通ったかさえ分かればいいんだが・・・
そして時間が1時間を切った。
次回更新は明後日の予定です