118・山エリアに行ってみた②
真下に近付いた冒険者を狙いココアを除く僕たちは一斉に飛び降りる。
標的はユウさんが杖持ち、なまけものが小盾持ち、僕が【金棒】だ。ココアは上から同時に『アクアエッジ』で弓持ちを狙う。
ココアだけ奇襲が魔法なのは体重が軽すぎる所為で落下速度が遅いため、落下速度を利用した攻撃より魔法の方が効くだろうと判断したからだ。
標的に関してはあの後公平にジャンケンで決め直した。その結果、負けた僕が【金棒】を攻撃する羽目になったわけだ。
正直嫌だが、ジャンケンで負けた以上仕方ない。
因みに【金棒】には『エクスキューション』でよくね?って話になったのだが、二つ名付きの冒険者には効かない設定になっているようで、時間が∞表示されるらしい。
「使えねぇ!!」と試したなまけものが嘆いていた。
「『猛毒牙』!」
『!? ぐぉぉお!!』
奇襲が決まった。
【金棒】のスキンヘッドに頭突きをして、体勢が崩れた隙を狙って首元に『猛毒牙』で思いっきり噛みつく。クリーンヒットしたのか予想以上のダメージを負って【金棒】は地面に倒れこむ。無事毒も入ったので解毒を阻止すれば、放置しても勝てそう。
「おっ! いいダメージだな。畳みかければ勝てるか?」
「あれ? そっちは?」
追い打ちをかけようとした所で、なまけものがこっちに参戦する。聞きながら小盾持ちの冒険者を探すと、既に光となって消え始めていた。どうやら奇襲で即死したらしい。
「俺が重すぎたのか、踏んだら死んだ」
「・・・じゃあ僕じゃなくなまけが【金棒】やりゃよかったじゃん」
「それは嫌。ほら、ユウが弓持ってる奴倒す前にさっさと倒すぞ」
見るとユウさんは既に奇襲で杖持ちを一撃で倒し終えており、ココアのフォローに入っている。矢を剣で落としつつ攻めているので、あの調子だと直ぐに終わりそうだ。
「分かった、なまけは魔法でHP削ってくれ。僕は『溶解液』で動けなくするから」
「りょーかい。『サンダー』」
「『溶解液』」
『ぐっ、あああぁぁ・・・』
「あ、終わった」
『溶解液』で足を使えなくしつつ、なまけものの『サンダー』で【金棒】のHPが削られる。数発撃つと悲鳴が止んだ。同時に大量の経験値が入ったのか、レベルアップの通知が来る。
HPが無くなりその体が消え始める。それを見てなまけものがふぃーっと息を吐いた。
「落下攻撃の奇襲は楽だからいいな」
「そうだな。うまくいけば二つ名付きでも一気に半分以上HP削れるし、追い打ちもしやすい」
難点は毎度高所に行かないといけないのと、待ち伏せの奇襲になるため冒険者が来てくれないとできないところかな。
「これならプレイヤー相手でも行けるんじゃないか?」
「そうか? 奇襲前にバレるだろ」
実際に一度丘エリアで落下攻撃の奇襲を受けたことがあるが、あの時も上に居たプレイヤーにすぐ気付けたので回避できた。そのためバレてしまったら簡単に回避される。
「あの時は相手が下手だっただけだ、あんな見える場所で待つ方が悪い。この辺りだと木や茂みなどで隠れられるしあそこよりは気付かれにくいはずだ」
「いや・・・それでもなぁ」
なまけものは大丈夫だと思っているようで、目が「やろうぜ!」と言ってきている。どうやって断ろうかと考えていると、ユウさん達が寄ってきてしまった。
PvPをやりたそうにしているユウさんは絶対YESというに決まってる。
「何が気付かれにくいの?」
「いやなんーー」
「奇襲を他のプレイヤーにやろうぜって話してたんだ。けどポンタがやる前にバレるとか言っててな・・・、木や茂みに隠れれば気付かれないよな?」
「・・・そう・・ね。まぁ、さっきの場所だとココアのような色合いだとすぐバレるからダメだけど、あの辺とかならいけるんじゃないかしら」
ユウさんはキョロキョロと周りを見渡し、一つの方向を指差す。その方向にはさっきよりも高い位置に茂みがあり、今回よりも隠れられそうな場所がある。
確かにあそこならバレる確率は減るが・・・
「それでも気付く人はいるだろ?」
「そりゃな」
「PvPするの~?」
「そうしようかって言ってるんだがポンタが渋っててさ」
「いや渋ってるわけじゃ・・・」
やりたくないのは確かだけどさ。
プレイヤー相手だとあまり勝てる気しないんだよな。
「まぁ一回やってみてもいいんじゃない?」
「だよな」
「勝てばいいのだ~」
「よし、じゃああそこで待機しようぜ!」
「どうやってあそこまで登る?」
「ココアに持ち上げて貰ったらいいんじゃね?」
「なまけは重いから嫌」
だがみんなはそう思っていない様で、勝手に話がやる方向で進んでいった。
大丈夫だろうか・・・
次回更新は明後日の予定です。(少し遅れるかもしれません)




