116・合流してみた
決闘が終了してすぐ、カイザーさんとリコさんはやることがあるようで、軽く挨拶してログアウトしていった。
何だったんだと思って半ば呆然としていた僕にユウさんが頭を下げてくる。
「今日は、ごめん。兄さん妹がらみだと十中八九おかしくなるから・・・」
「こういうと失礼だけど・・・、もしかしてシスコン的なアレ?」
「・・・うん、まぁそれに近いかな」
ユウさんはウンザリ顔で頷いた。ユウさんによると、昔からユウさんともう一人いる妹に対してかなり過保護なのだそうだ。
「心配してくれてるってのは分かるのだけど、度が過ぎる場合が多くてね。家だと、両親がストッパーになってくれるんだけど・・・」
「そうなんだ・・・。ところで、結局あの決闘って何だったの?」
「さぁ? あの兄さんやることよく分からないし、放っといてもいいんじゃない? 気にするだけ無駄よ」
ユウさんを守れるかどうかを見極めるための決闘だとか何とか言ってたのに、終わった後は何も言ってこなかった。ユウさんは「気ににしちゃダメ」とだけ言って話を終わらせた。
僕的にはそう言われても気になるのだが、ユウさんの顔にあまり関わりたくないと書いてあり、これ以上聞くと機嫌が悪くなりそうなので止める。
「で、これからどうしよっか?」
「そうね・・・」
てっきり今日の寝るまではやるもんだと思って来たのだが、決闘一回だけ行って終わってしまったため、無駄に時間が余る。
とりあえずなまけもの達にはチャットで終わったことを伝えておいた。今何しているのか知らないが、数分後に「そっち行く」とだけ返ってきた。
「ポンタは何かしたいことある?」
「やっぱりレベル上げかな。さっきも一方的に攻撃されたし、進化して遠距離攻撃欲しい。それか飛び回りたい」
「確かに『溶解液』じゃあの距離は無理よね。『風切』でギリギリ届くかどうか・・・かな」
「え?、見てたの?」
「うん」
どうやらユウさんとリコさんは観戦者として決闘を見ていたようだ。つまり僕の駄目プレイや負ける瞬間なども全部見られたわけだ。
まだ知り合いだからいいけど、それでも結構恥ずかしい。
「速くて空中自在だし、やっぱり飛んでいる魔物ってずるいわよね。ココアがあんな感じだから大したことないって思っちゃうけど」
「カイザーさんってその上魔法メインなんだよな。プレイヤースキルにもよるけど組合せ的に厄介この上ない」
このゲームでは発動に少し時間がかかる魔法も多いが、使用中に動けなくなることは無い。なので他ゲームでよくある[詠唱中の止まってるときに攻める]が使えない。
なまけものみたいに遅すぎるのならそれでも問題ないが、カイザーさんのように素早く動かれると難しい。
「ふっ・・・そ、そうよね」
「ん? どうかした?」
「ああううん。そのカイザーって名前が・・・ふふっ・・・兄さんに合わなさ過ぎて・・・」
ユウさんは1人ふふふふっと笑い続ける。そこにタイミング良く?来たなまけもの達が一人で笑い続けるユウさんに対して怪訝な顔をする。
「よっす。・・・ユウの奴どうしたんだ?」
「変なキノコ食べたのかな?」
「大したことないよ。それよりも思ってたより早かったな」
「まぁ適当にぶらついてただけだし。あとそれは俺のセリフな」
「?」
首を傾げるとなまけものは「チャット」とだけ言う。ああ、こっちが思った以上に早く解散したことに対してか。
「用事あったみたいで決闘後にすぐ解散したんだ」
「用事あったのにわざわざログインしてきたのか? 何で?」
「まぁ・・・ユウさんが心配だったからだろな。ほらオンラインゲームって危ない場合あるから」
「ああ~・・・なるほどな。何となく分かったわ。・・・それで勝ったのか?」
「いや負けた。鳥系の魔法使いでさ、こっちの攻撃が届かない場所から魔法撃たれて何にも出来なかったわ」
「相性最悪じゃんか。お前魔法に対して弱いだろ?」
僕は『ウィンドエッジ』でHPが吹き飛んだことを思い出し、苦笑いしながら頷いた。
次回更新は明後日の予定です