113・ユウさんの兄と会ってみた
~土曜日 夜~
ユウさんに呼ばれてオアシスで待機。個別に呼び出されたので、なまけものとココアは居ない。まぁゲーム内には居るんだが。
次の進化どうしようかなと考えているとユウさんがログインし転移してくる。
「ごめん、おくれちゃった・・・。接続に手間取っちゃって」
「いや、それはいいけど・・・」
というかユウさん実家にゲーム持って帰ってたのか・・・
僕はユウさんの後ろを見る。ユウさんは1人じゃなく、後ろに鷲みたいな鳥とうさ耳が生えたモフモフの子供が居る。全員一緒なので他人って訳じゃ無いらしい。
「えっと・・・」
「ごめん! 実は・・・」
戸惑う僕にユウさんが顔の前で手を合わせて謝った。そして訳を説明する。どうやらこのゲームを始めたのが兄にバレたらしい。ちなみに兄は鷲っぽい鳥を操作しているそうだ。
「で、こっちが兄の婚約者の・・・」
「リコでーす! よろしくねポンタくん」
「カイザーだ」
「はぁ・・・あ、はい。ポンタです」
こっちを睨みつけるような目のお兄さんと違ってお義姉さん(予定)はすごい馴れ馴れしい人だな。しかしこのカイザーさんの声って誰かと似てるような・・・
「それで、僕を呼んだ理由って?」
「えっと・・・」
「俺がユウに頼んだんだ。兄としては妹がオンラインゲームをするのは心配でな」
「まぁオンラインは顔の知らない人と接するのが殆どですし、変な人もいますしね」
ああ、それでパーティメンバーの僕がどうなのか見極めたいってことかな? まぁたまに問題も起きてニュースとかになったりするから、今までゲームしてきたことのない妹がそれに手を出したと知って心配になったってとこかな。
「どちらかと言えば妹に変な虫がつかないかどうかを心配してるんだがな・・・。お前はどっちだ? 企画部のポンタ」
「んん?」
え、企画部? この人何で知ってんの? ユウさんが言った?
「ごめん、言ってなかったけど兄さんも会社一緒なのよ。こっちのあか・・・リコさんもそう」
「えぇ〜・・・」
チラッとカイザーさんを見る。種族はテンペスト・イーグル? 苗字は柳で・・・聞いたような声・・・
!?
「もしかして自称企画部のエース?」
「自称じゃねぇ!!」
「やっぱり柳先輩!!?」
「馬鹿! 名前バレすんじゃねぇ!」
慌てた柳先輩に頭を突かれる。
柳先輩とはMWRの話をするため、互いの種族は言っていた。しかし柳先輩はユウさんの兄だったとは・・・。会社の中は狭いなぁ。
「ごめん。まさか種族と同期でポンタのことバレると思ってなくて・・・」
「いや別にいいけど・・・。というかやな・・っと、カイザーさん結婚するんですか? おめでとうございます」
「おう、ありがとな。で、お前は何でユウと一緒のパーティを組んでるんだ? ん?」
「? いや、研修の題でコレ始めた延長で、ですけど?」
まぁ理由をつけるならこのパーティだと全員顔も知ってるし、みんな同期なので気楽にやれるからかな。
「む・・・ならいいか」
「?」
なんかよくわからないけどOKだそうだ、ユウさんが安堵の表情を見せている。これから何をするのかと聞こうとすると、カイザーさんは何お脈絡もなく言ってきた。
「じゃあ今から決闘するぞ」
「は?」
「お前が弱いとユウを守れないだろ」
「いやこれゲーム・・・」
それにユウさんの方が僕より強いんだけど・・・。
「馬鹿野郎、それでももしもってことがあるだろ。死んだら経験値入らないし、それが嫌になってユウが俺とパーティ組む前にやめたらどうするんだ」
「兄さんと組むくらいならやめた方がマシ」
「ユウ!?」
「だって鬱陶しいし」
露骨に嫌な顔をするユウさんと慌てるカイザーさんを見て何となく状況が分かってきた。カイザー・・柳先輩ってシスコンだったのか。
「と、とにかく! 決闘やるぞポンタ!!」
「えぇ〜・・・」
どうやら拒否権はないようだ。
次回更新は明後日になります