111・実家帰り②
暴露されてテンションが若干下がり気味の兄さんだが、車の運転は特に危なげなく行う。高速に乗ったあたりで助手席の明石さんが後ろを向いて聞いてくる。
「さっき思ったけど、やなっちゃん結構な大荷物だよね。アレ、何が入ってるの?」
「アレ」の所で明石さんが荷室に目を向ける。恐らく言っているのは私が持ってきたゲーム機本体だろう。今日は実家で1泊する予定なので夜にやろうと持ってきた。レベル上げしたいし。
「ちょっと実家に置いておこうと思った荷物を少し・・・。電車ではしんどいので」
バラしてもいいのだが、兄さんにはまだMWRについて何も言っていない。もしかすると明石さん経由でバレてるかもしれないが、その場合質問責めにあってるはずだしまだ知らないはず。
「そお? 私てっきりゲームだと思ったけど・・・違うの?」
バレてるー!
「ち、違います・・・」
「それは無いよのどかちゃん。優美はゲームしないんだ」
「え?、知らないの? 優美ちゃんMWRやってるよ。よくお昼ご飯の間とかMWRの話で盛り上がってるわよ」
「ちょっとぉ!?」
「何だとー!!?」
そしてここでバラすー!! 兄さんの動揺により車が一瞬フラつく。
しかも気付いたら私の呼び方が変わってた。
「ちょっと高速道路なんだから気を付けてよ!!」
「優美、何で俺に言わないんだ!! 言ってくれたらパーティ組めたのに!」
「だから言わなかったの! 兄さんとのパーティとか嫌よ、鬱陶しい」
それに既にパーティは組んでいるので兄さんのパーティには入る気はない。あと兄さんをパーティに入れる気もない。
というか関わりたくない。
「そこまで言うことないだろ・・・」
「翔くん嫌われすぎでしょ・・・。まぁ理由は分かるけどね」
明石さんがやれやれと言わんばかりに首を振る。
「大体私はもうパーティいるから」
「何だ、そうなのか。そいつらはリア友か?」
「同期よ」
「ならいい」
兄は安堵した表情を見せる。
安堵した理由は分かるけど、流石に私も何処の誰とも知らない人とパーティ組むのは嫌だししない。
「ところで優美ちゃんのパーティって、柊ちゃん以外で誰が居るの?」
「それは秘密」
「えー何で!?」
驚く明石さんへ、首を動かして「兄さんの所為です」とジェスチャーを送る。「ああ~・・・」と理解した明石さんはそれ以上聞くのを止めた。
良かったと安堵する私に、明石さんは代わりと言わんばかりにまた聞かなくていい質問を投げてくる。
「じゃあ・・・、優美ちゃん気になる人とか居るの?」
「はい?」
「居ない」
「何で翔くんが答えるのよ」
べしっと、兄さんを叩く明石さん。
私は未だに質問の脈絡が分からずに困惑する。クエスチョンマークを出し続けている私に明石さんは聞いた理由を教えてくれた。
「ふふん、翔くんに聞かれたくないってことは男で確定。でしょ? もしかして気になる子なんじゃないかなぁって思ってね。・・・で、どうなの?」
「違います! そんなんじゃないです!!」
反射的に否定する。竹くんも榊くんもただの同期でゲーム仲間なだけだ。そういう風に意識したことはない。
明石さんは何を考えているのか、クスクスと笑いつつ「じゃあ~・・・」と次の質問を考えている。完全に私の反応で遊ばれている。このままだと根掘り葉掘り全部聞かれそう・・・
♪~
と、そこに助けてやるよと言わんばかりにスマホが鳴った。助かったと思い、相手も見ずに電話に出る。
相手は竹くんだった。
『もしもし、今大丈夫?』
「う、うん。どうしたの?」
明石さん達に聞こえないよう、顔を逸らし少しでも離れて話をする。取ったはいいけどまさか竹くんとは・・・。声が聞こえると明石さんと兄さんからの集中砲火は確定なので、スピーカーの音量も下げておく。
ちょっと聞き取りにくいけど大丈夫。
『頼まれてた買い物なんだけど・・・。醤油って何処のがいいのかな? 安売りのがあるんだけど柳さんって何処の使ってる?』
「◯屋を使ってる。あ、砂糖は笹屋で・・・」
あと何お願いしてたっけ・・・ん?
「・・・・・」
『どうしたの?』
考えている間にふと助手席を見ると、ニヤニヤ顔の明石さん。耳に手を当てて聞き耳を立てていた。え、嘘、聞こえてた? いやいや、走行中の車の中では流石に聞こえないでしょ。
「ふふふ、私、地獄耳なのよね~」
大丈夫、聞こえてないはず・・・
『おーい、どうしたー?』
「あ、ごめん、ちょっと切るね」
『? う、うん』
スマホをポケットにしまうと同時に、明石さんがニヤニヤ顔で聞いてきた。
「恋人?」
「同期です!!」
もうしんどい・・・。
私明日までもつかしら・・・
次回更新は明後日の予定です




