0・始める前
プロローグになります
「よぉ、ここいいか? 何処も空いてなくてさ」
「ん? うん。別に良いよ」
新人研修もほぼ終わりに近付いた頃、昼食を食べてるとテーブルに誰かが座る。
確か研修中、後ろの席の榊だっけ?
研修は数日あったが、あんまり話してなかったしどのような奴かは知らない。
見た感じはスポーツ青年って感じかな。
「もうすぐ研修も終わりだな? アレどうする?」
「アレ?」
どれ?
「ほら新人同士で何かしろって言われたろ? ソレだよ」
「ソレか」
コミュニケーション実習だっけ?
4人組で何か一つのことをしろとか何とか。面倒だから忘れてた。
「何にも決めてない。榊は何か決めたのか?」
「やりたいことだけな。ただメンバーはまだだ」
「やる内容って、集めてから決めるんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどさ。適当に集まってから決めても決まらなくね? だったらやりたいこと決めてやりたい奴らで集まった方が楽だろ?」
「確かに・・・」
揉めることは少ないな。
榊の言う通り、やりたいこと提示してメンバー募集の方が楽な気がする。
問題は、何をするかだけど。
「で、何するの?」
「ゲームだよゲーム。ほら最近出たやつ。あの魔物になって遊ぶやつだよ」
「ああ、アレか。確か「モンスターワールドレヴォリューション(MWR)」だっけ?」
「そう、それ!」
確かに面白そうだとは思っていた。ただオンラインだしVR用のヘッドギアが必要だから諦めたやつだ。
「えっと・・・つまり。それを集まってやるってことか?」
「そうだよ! オンラインゲームだってコミュニケーション必要だろ?」
そりゃ、パーティ組んだらな。
オフラインばっかりやってたからよく知らないけど。
「ゲームだぞ? 駄目なんじゃないのか?」
「向こうが何でも良いって言ったんだからいいだろ。大体実習って言っときながら業務時間外でやれとかふざけてるとしか思えん」
確かに。
「仕事終わった後に実習なんてやってられるか! 要はコミュニケーションをとって横の繋がりを良くしろってんだろ? なら遊びでもいいだろ」
確かに!!
「どうだ? 竹はやるか?」
「やる!!」
グッと二人で握手する。
「よし、残りは2人だな。誰かゲーム好きそうな心当たりは居ないか?」
「知らない。知り合い居ないしな。榊は?」
「俺もだ。仕方ないとりあえず片っ端から当たってみるか・・・」
「面白そう!! 私も混ぜて!」
「「ん?」」
振り向くと女性の二人組が横に居た。
1人は研修中隣だった柳さんだな。もう一人は・・・。
「柊でーす。榊君の隣に居たんだけど覚えてない?」
前ならともかく後ろだから気付かなかった。
しかし真面目系知的眼鏡の柳さんとノリの良さそうなゆるふわ女子の柊さんのペアに違和感が・・・。
「寮が隣だからねー。席も前後だし」
「ああ、そういう」
「それで、その実習って私たちも混ぜてもらっていいの?」
「私も!?」
「いいじゃん、いいじゃん。一緒にやろうよ!」
「ええ~・・・」
「まだ俺と竹だけだから2人なら大丈夫だけど・・・。2人はゲームするのか?」
「スマホゲー歴半年!!」
「私はしないわ」
確かに柳さんってそんな感じだ。ゲームより本読んでるイメージがある。
「竹、どうする?」
「僕はいいよ。ただ柳さんはそれでいいの?」
「うーん・・・まぁ、いいわよ。やること決まってたわけでもないし、ちょうど新しいことをしてみようと思ってたから」
「よし! ならこれでメンバーは揃ったな! じゃあ早速・・・」
「待って、僕まだそのゲーム持ってないんだ。買いに行かないと」
「私も!」
「私もそうね」
「安心しろ。俺もだ!」
お前もか!
もう持ってるのかと思った。
「でも何のゲームするの?」
「そこ聞かずに参加したのかよ・・・。アレだ、最近話題になっている魔物になるやつ。えーっと・・・」
さっき僕タイトル言ったよな。もう忘れたのか?
「もしかして「モンスターワールドレヴォリューション」?」
「そうそれ!!」
ゲームしない柳さんでも知ってるぞ。
「るせぇ。英語苦手なんだよ」
「タイトル読めないのかよ・・・」
「最近よく聞くから名前は知っているけど・・・どんなゲームかは知らないわ」
「私も!」
「わかった。じゃあ今から説明するぞ。ちょっと待ってな・・このPCでググれば・・・」
「おい、会社PCはまずくないか?」
「みんな昼休みはネットサーフィンしてるんだし平気だろ。よし出た。この公式サイトで・・」
《このサイトはアクセスを許可されていません》
・・・・・
会社のセキュリティで閲覧できないようだ。
「明日ゲーム雑誌持ってくるよ。確か特集してたから」
「すまん・・・」
次の日、全員で確認してこのゲームをやることが決定した。