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最終話 恋する乙女なロリ魔王は勇者の頬にキスがしたい☆


 「畑好きです!!」

 「私だいこんだぁいすき!」

 「雑草むしりなら任せてくれ!」

 「たくあんの製法を研究しなければ!」


 闘技場にはベヒモス顔負けの畑ブームが到来しているようだった。


 いや、この場で殺されるか地を耕すか。

 それはもう聞くまでもなく答えは出ているのでしょう。


 この中には一人も命を賭しても尚、己が貫く信念とやらを持ち合わせている者は居ないと。そういうことですかね。


 まあ、確かに協定を破ってこれだけの大部隊で待ち構えるくらいです。もとよりそういう気概はないのでしょう。


 勇者は魔王様を守るため、牢獄にまで入ったというのに──。


 さてここからがプランCの本題です。上手くいくでしょうか。魔王様に次の言葉をごにょごにょと伝えると、ハッとした表情を見せてきた。


「(ルー君これって……?)」

「(一語一句違わずにお伝えください)」

「(うむ!!)」



「静まれよ人間! これは支配などでは断じてない。人間と魔族。決して相容れぬ種族だ。しかし妾が貴様らを支配するのは勇者レオンとの決着の後──。未だ奴との決闘は引き分けのまま。妾は決闘の続行を所望する。貴様らと違って勇者レオンは強い。このまま引き分けたとなれば魔王の名が廃る!」



 人間たちはポンコツだと卑下していた勇者が目の前の脅威、魔王様と互角の力を持っていたことを知ると、唖然とした様子になり場は一斉に静まり返った──。



「良いか? 明日も妾は此処に参る。その時、万が一にも勇者の姿が見られぬときは、単身王都に乗り込み、玉座はいただくこととしよう」


 これくらいの脅しは必要ですかね。

 もうひと押ししておきますか。


「畑を耕し種を植え、作物の成長に喜びを感じながら勇者の勝利を応援するのだ。それが貴様らの天命だ!」


  「「「はい! 魔王様!!」」」


「さあ、お行きなさい! 扇子をバサッと広げて決めポーズ! ……あ!」


 あっ。魔王様……それは復唱しちゃだめなやつ!

 と、思ったのですが……。


 「おい! 扇子なんてないぞ?」

 「とりあえず決めポーズだけするんだ」

 「魔王様からの命令だぞ」


 人間たちは一斉に各々が思う決めポーズをしてみせた。


 なんてことだ。いや、こればかりは仕方のないこと。もはや魔王様呼びまでするとは……。



「(なんだこれ? 馬鹿なのか?)」

「(いえ、それだけ魔王様が偉大ということです)」

「(ええっ? ……わはは! 困っちゃうな)」


 魔王様はいまいち自覚がないみたいですね。

 それもそのはず、勇者も魔王様と同等かそれ以上に強いのですから、実感など湧きますまい。


 ずっと、二人でキンキンしてきたのですから。


 そしてこれからも、キンキンするのですから──。


 ずっと、ずっと、永久に──。

 

 ◇ ◇


 そうして翌日。

 いつもと変わらぬ朝がやってきた。


「ほら魔王様早く起きて! 決闘に遅刻してしまいますよ」

「うむ。あと五分……」


 まったく。昨日あれだけのことがあったというのに、こうも変わらぬ朝が訪れるとは。


 微笑ましいですね。


「では五分後にまた来ます」


 そう言って魔王様の寝室から出ようと扉を開けると……、


「……はっ! そんな馬鹿な! ルー君がプラス五分の睡眠を許すなんて! 驚き過ぎで目がシャキーンってしちゃったぞ!」


 これはいけない。

 私が普段通りを演じずにしてどうする。


「思惑通りです。こうすれば魔王様は驚いて起きるかと思いまして」

「な、なにぃ~! 朝からちょこざいな! 魔王に向かってなんたる無礼!」

「はいはい。起きたのなら早く朝シャンに向かう!」


「ぐ、ぐぬぬ!」



 いつも通りのありふれた朝のひととき──。


 なんとも微笑ましい限りです。


 ◇ ◇


 そして魔王様のお見送り。



「さあ魔王様、今日こそ勇者の頬にキスをしてきなさい!」


 メガネをクイッとさせ、魔王様に圧をかける。


「が、がんばる! 今日こそは必ず!!」


 

 行ってらっしゃいませ。魔王様。

 



 これからは魔界の平和のためではなく、ご自身のために──。



拙作に最後までお付き合いくださりありがとうございましたm(_ _)m


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