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戦闘しましょう

ようやっと戦闘シーン

「え!? ナギさんってまだレベル1なの?」


「ん、そうだよ。一回も戦ってないし……戦闘は全部アオハに任せるつもりだったし」

仮面を買った二人は、レベリングの為に町の外に出ていた。

と言っても今回は互いに何が出来るか確認するのが目的で、効率は二の次。付近で一番弱い白ウサギを探しているところだ。


「まあナギさんバリバリの初心者だもんねー。でも攻撃しないと経験値入らないから援護中心でいこっか」


「……援護?」


「私の攻撃の合間に魔法でチクチク……魔法使える? てかナギさんの武器ってどんなの?」


「んしょ……これ」


「え? 包丁? え何で? てっきり短剣とかナイフとかだと思ってたのに」


「使いやすい」


「Ohジーザス!!」

その一言でナギサが包丁へたどり着いた過程を全て理解したアオハ。

勉強より熱心に取り組んだ情報収集で、包丁使いの険しさを知ってる故の叫びだった。


その声に刺激されたのか近くの草むらからガサガサと音がする。

臨戦態勢を取った二人の前にオオカミが飛び出してきた。

レベルは6。二人にとって強敵だ。

オオカミはナギサに飛び掛かって来た。


「私!?」

咄嗟に後ろへ倒れ込んだナギサ。

その上を飛び越える形となったオオカミ。

両者の視線が交錯する。


「っ!【ファイアボール】!」

何とも言えない一瞬を狙って、アオハは左手を前に出して火球を生み出す。


しかし純魔法職ではない自分が【ファイアボール】だけではオオカミを倒すには不十分かもしれない。

そう判断したアオハは右手に火球を()()()オオカミを殴り飛ばした。


ボンッ!


物理と魔法。痛烈な二段構えのカウンターにオオカミのHPバーが吹っ飛んだ。

ここに観戦者がいたなら目を剥く光景である。


「痛ててて……よし、うまくいった。少しダメージが大きいのが予想外だったかな」


「だ、大丈夫!?」

ナギサが心配するのも無理はない。右手が爆発したように見えたし、実際アオハのHPは半分まで減っているのだ。


「魔法って痛いの!?」


「いやいや、違う違う。えーと、ほい」

アオハは自分のステータス画面を表示した。


アオハ LV3

HP39/100

MP289/310


【STR 20】

【VIT 5】

【DEX 0】

【AGI 10】

【INT 25〈+5〉】

【MND 45〈+15〉】


装備

頭部【空欄】

上半身【空欄】

右手 【制魔之手】

左手 【制魔之手】

下半身【空欄】

足 【空欄】


アクセサリー1【空欄】

アクセサリー2【空欄】

アクセサリー3【空欄】


スキル

【初級火属性魔法】


称号

なし


ステータスポイント 10


「この【制魔之手】の効果だよ。武器の種類は【魔手】。まあ、魔法を触れるようになるだけなんだけどね」

そう言って差し出したアオハの手の甲には複雑な魔方陣が描かれていた。


CSOの魔法は触れれば即発動する。それは魔法の種類に拘らない。

例えば矢の形をした魔法を掴み取っても、システム的には当たった判定になるのだ。

【魔手】はMPを消費して魔法を発動させずに触れる事ができる。これだけ聞けば強く聞こえるが、この武器を選択したプレイヤーの数は包丁と並ぶ。

数々の不人気武器に漏れず、この武器にも落とし穴的な要素が含まれていたからである。


「【ファイアボール】の消費MPが五、残り全部【制魔之手】。効率が悪すぎるし、触れても発動しないだけで少しダメージが通るんだよねー。今みたいな使い方すると強いけどほぼ自爆だし」


「あー……」

更に、【制魔之手】以外の部分は普通に魔法が当たる。

更に更に、魔法の形が崩れる程の衝撃はNG、先程の例なら飛んできた魔法の矢を叩き折るとアウト。

正面から殴ってもダメ。

受け流すような技術が求められる上、後ろに味方がいたら流れ弾に当たることに……

結果、避けろよ。となるわけである。

虐めのようにデメリットが多い。


「ま、私的には良いんだけどさ。相手の魔法を『効かぬわ』って弾いたりするの楽しそうだったし。あーでも、MNDもう少し上げないとキツいかな」


「色々考えてるんだね……」

満面の笑みで魔法を弾きながら近づいてくるアオハが想像できた。


「ナギさんみたいにエンジョイ勢なら直感で選ぶのも悪くないよ。包丁はちょっと…結構難しいと思うけど」

ポーションで回復しながらアオハはステータスポイントを振り分ける。


アオハ LV3

HP39/100

MP339/360


【STR 20】

【VIT 5】

【DEX 0】

【AGI 10】

【INT 25〈+5〉】

【MND 55〈+15〉】


「よしっと。さ、次はナギさんの番ね」


「え、私?」


「正直私の出来ることはこれくらいだし、後はナギさんがこの二日間でどんなに強く……レベル1だっけ、あー……どんな戦い方をするのか見てみたいし。ほら、あそこ」

アオハの指差す先には、二日前の大暴走の発端となった白角ウサギがいた。

此方にはまだ気付いていない。


「負ける事は無いと思うけど、危なくなったら助けるから。ね?」


「うー……分かったよ」

ログイン三日目にしてやっとの初戦闘。

万全を期すため【正念場】を使うことにしたナギサは、ステータス画面を開いてHPの減り具合を見ながら自分の太もも辺りをサクサク刺す。

しかし、何も知らないアオハからは親友が太ももに包丁を突き立てているように見えるわけで……


「ちょっ!! ナギサ!? え、黒!? 違うダメ!!」


「何するの? もう少しなのに」


「ぜんっぜんもう少しじゃない! 分かった! 戦闘は私がやるからナギサは見てるだけでいいから!! そんな抗議しなくていいから!!」


「違うこれ準備運動みたいなもので……」


「自傷が準備運動な訳あるか!!」

ナギサのHPでは当たりどころが悪ければどんな攻撃でも一撃。

HP満タンも一割もリスクは変わらないので【正念場】は最初から使わないともったいない。

HP最低値だからできる荒業だった。




「はぁー、理由があるなら先に言ってよ。本当にビックリしたんだから」


「あはは……ごめん」


「【正念場】だっけ? そんな化け物みたいなスキル聞いたこと無い」


「化け物って……」


「ダメージエフェクトも黒かったし……他に何か隠してることない?」

聞かれなくても最初からアオハに相談するつもりだったのでナギサはこの二日間の成果を話した。








「親友が人外に近づいてる件について」


「ほら! すぐバカにする」


「他に例えようが無いでしょ……称号七って……しかもナギさんが[最速者]って……」


「私頑張ったんだからね!?」

頑張っただけでナギサのようなプレイヤーが出てきたら、CSOは既に人外魔境になっていたであろう。


「やる気どうこうじゃないと思うけど……私もイロモノだけどナギさんは別格だね」

スキル一つ一つは強力なのだが、このまま行けば人間に扱える範囲を軽々越えていきそうである。

極端過ぎて最早強いのかどうかも分からない。


「む……なんか褒められてる気がしない」


「まあまあ、取り敢えず戦ってみれば分かるんじゃないかな?」


「スー…ふぅ……分かった」

律儀に待っていた白角ウサギと向き合ったナギサ。

既にHPは一割未満。【正念場】は発動済みだ。

深呼吸をして戦闘を開始した。




先手を取ったのはウサギだった。一本角に全てを掛けて突っ込んでくる。

現実と遜色無いその突進は渚なら避けることは出来ないだろう。

しかしここはゲーム内、渚はナギサだ。

多少面食らったものの難なく躱す。


「あれ…遅い?」

現在ナギサのAGIは170。

対して白角ウサギのAGIは30あるか無いか。

しかもナギサはこの二倍以上の世界を昨日ずっと見ていた為、動体視力が鍛えられ、ウサギの突進が酷くゆっくりに見えたのだ。


「よっと」

再度ウサギの突進を躱したナギサが包丁を振る。

見事にウサギの背を捉えたものの、悲しみの攻撃力でHPを一割も削れなかった。

しかし、ナギサに悲壮感は無い。質が駄目なら量で、手数で押せば良いのだ。


「うりゃぁぁ!」

四回。

突進を避け、空中にいるウサギを一度に切りつけた回数である。

目にも止まらない素人の四連擊。

反動で空を飛ぶウサギに追い討ちをかける。

数回クリティカルヒットしたのか、ウサギは空中で砕け散った。




「やった! 初勝利!」

レベルアップのファンファーレを聞きながらガッポーズをするナギサにアオハが一言。


「えげつな」


「なんで!?」


一方的な戦いは同情を呼ぶのだ。

因みにVIT×10+50がHP

MND×5+10がMPです。

防具のVITとMNDはこれらを上げる効果はありません。

HPMPに関係するのは主にアクセサリーとしています。

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