ステータスを確認しましょう
「えーと、『ステータス』」
CSО開始二日目。
調べ物を終えたナギサは確認することが出来たので早速ログインしていた。
キーワードと共に青いパネルが表示される。
ナギサ LV1
HP50/50
MP10/10
【STR 0〈+5〉】
【VIT 0】
【DEX 30】
【AGI 70〈+10〉】
【INT 0】
【MND 0】
装備
頭部【空欄】
上半身【空欄】
右手 【青銅の万能包丁】
左手 【空欄】
下半身【空欄】
足 【空欄】
アクセサリー1【空欄】
アクセサリー2【空欄】
アクセサリー3【空欄】
スキル
【逃走】【遁走】【正念場】【集合】【厄災】
称号
[心優しき逃亡者][死地][怪物と友愛][災厄][最速者]
ステータスポイント 0
「あっ……やっぱり」
ナギサが一番確認したかったのはステータス欄に0があるかどうか。勿論、DEXとAGIにしか振っていない為に0が多い。
「大丈夫…魔法は憧れるけど……うん。使わなくてもいいって言ってたし……STR…攻撃力は5あれば……うん」
ナギサの覗いた掲示板や情報サイトでは各ステータスに最低1ポイントは振っておけと書かれていた。
特にINTとSTR。この二つは魔法攻撃力と物理攻撃力に直結している為、0の場合どんなに派手な攻撃をしようと相手にダメージが通らなくなるのだ。
両方にポイントを振っていないナギサは、武器による補正がなければ戦闘が出来ない可能性があった。
と言うか、大抵のプレイヤーならここでキャラクターリセットを考え始める。
「えーと…スキルは……」
【逃走】
敵対者からの逃走時、AGIを一,五倍にする。
取得条件
[心優しき逃亡者]の所持、若しくはステータス合計値が三倍以上の相手から二時間逃げ切る。
【遁走】
HPを一撃で削り切る可能性のある相手から逃走時、AGIを二倍にする。
取得条件
[心優しき逃亡者]の所持
【正念場】
HPが一割未満の時、HP、MPを除くステータス内で最大のものを二倍にする。
取得条件
[死地]の所持
「あ、これだ……」
昨日の大暴走の原因を見つけ、その有用性にナギサは驚く。
この三つが噛み合うとAGIは六倍の四八〇。今現在、モンスタープレイヤー問わず最速の値である。
惜しむべきはそれが逃げる時にしか発揮されない事だが、戦闘は青葉に任せるつもりなので、それをデメリットだと考えていなかった。
「【集合】と【厄災】はMP使うんだ……でも10じゃ出ない……うーん、ま、いっか」
今はステータス欄を彩る飾りを請け負ってる両者。
他人に知られればちょっとした騒動になる効果を持っているが、ナギサが使えるようにならない限り日の目を見ることはない。
「次は……」
ずっと点滅している称号の欄に触れる。
[心優しき逃亡者]
【逃走】【遁走】を取得。体幹の安定性向上。
獲得条件
ステータス合計値が二倍以上の三〇を越える相手からの逃走時、他人の危機を何度も救う。
[死地]
【正念場】を取得。HP回復を任意で拒否可能。
獲得条件
HP一割未満時、ステータス合計値が二倍以上の相手一〇〇体から攻撃を受けずに一時間逃げ切る。
[怪物と友愛]
【集合】を取得。モンスターから発見された時、低確率で見逃される。
獲得条件
一万を超えるモンスターから敵対行動をとられる。
[災厄]
【厄災】を取得。フィールドでの死亡時アバターが爆散する。
獲得条件
町の存亡を脅かす原因を無意識に作る。
「んー……弱い?よね…[災厄]はデメリット?」
ナギサのこの評価を聞けば多くのプレイヤーが悔し涙を流すであろう。
称号はゲーム内で何かしら偉業を成した者に送られるもので、その数が多ければ多いほど一目置かれる上、効果は何のコストもなくステータス等を上げられる。
その殆どが最初の条件達成者に送られる事を考慮すればその希少性は計り知れない。
更に称号に紐付けされたスキルはどれも強力且つ、唯一無二。
決して弱くなど無い。
のだが……ゲーム開始から二時間経っていない内に幾つも獲得したナギサに有り難みを感じろというのも無理な話かもしれない。
「そして……お待ちかねの最後!」
しかし、そんなナギサも称号の最後の欄を見て頬を弛めた。
[最速者]
[最速者]専用装備を取得する。落下ダメージ無効。
記録が更新されればこの称号は剥奪される。
獲得条件
瞬間速度がプレイヤー内で最速を記録する。
「フフフ……私が一番速いんだ……私が速い…私が速い……えへへ」
人生で一度も言われた事が無い単語にデレデレしつつ、ナギサは周りを見渡す。そして目に付いた強そうなプレイヤーに自分が一点でも勝てる要素があるのだとまたデレデレする。
知らずに比較されているプレイヤーは、ニコニコと笑いかけてくる美少女に何か良いことあったのかなと癒されていた。
因みにメニュー画面は認可しない場合他のプレイヤーからは青いガラス板にしか見えないので、覗き見される心配はない。
最も今のナギサは聞かれさえすれば喜んで教えるだろうが。
「ふぅ……よし! 装備は……うん…これでよし!」
『最速者の髪飾り』
プレイヤー内最速記録を保持する者に送られる証
AGI二〇〇を越えた動きをするとき、装備者に黄色のオーラが付与される。
※この装備は装備欄を消費しません。
金色に光る飾り羽を頭に着け、ニコニコと喜ぶナギサ。
これで注目されるかなと町の中をテクテク歩くが、プレイヤーはちらりとそれを見やっただけで微笑むか、無視するかのどちらかだった。
「あれ……? 何か思っていたのと違う」
実はこの装備、男性用と女性用があるのだが、今まで女性が[最速者]の称号を持った事がないので誰も見たことがないのだ。
流石に羽の中心にあしらわれた風のシンボルマークは共通しているが、初心者装備のプレイヤーの頭にある羽なんて誰も見ない。
見たとしても、ナギサの見た目でそれは無いと断じられるだろう。
「……まあいっか」
しかし、ナギサにとって一番見せたい相手は青葉なので余り落ち込みはしなかった。
他の確認したいことは町の外に出る必要があるため、またテクテク門に向かう。
「んー!っと。ふぅ……あっ、忘れるところだった」
大きく伸びをしたナギサはメニューを操作して視界端にマップを表示させた。
昨日走り回ったお陰で街の東側にある草原は大部分が表示されている。
しかし、今日ナギサが向かおうとしているのは草原を囲む森だ。
昨日の暴走が少しトラウマになっているナギサはモンスターを見付けると過剰と言えるほど遠回りしながら目的地に向かった。