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イベントを楽しみましょう 2日目 4

ウェーハはその創られた経緯からNPCと同等の人格を有するボスモンスターである。だからこそ魔法で無理矢理飛んでいる感が凄い少女を見て言ってしまった。禁句を。


「最近は凄いな。幼子が空を飛ぶのか」

その幼子(ナギサ)が背負う魔法陣が茶色へと変わる。ドンッと重い音が鳴り、ウェーハを岩塊と言う名の死が襲った。


「フンッ、児戯だなグボォォオッ!!」

前半は岩塊を鎧で弾いたセリフ。後半は岩塊ショットガンを後ろに放つ事で瞬間的な加速をしたナギサがウェーハに()()、つまりドロップキックをかました為に起きた交通事故の産物である。


ナギサの中で過失はウェーハが失言で6。自分は蹴っちゃったから4になっている。その考えだとナギサが未だ被害者なのだが異論反論はナギサの中なので発生しない。寧ろ譲歩している気分らしい。


「……オジさんは……私が何歳に見えますか?」

やけに笑顔で凄む少女にウェーハはさっきの一撃(HP一割減)と少女が自分の上に乗っている事を忘れ、急いで問の答えを探し始めた。


NPCを創るにあたって重要キャラクターなら外見はクリエイターが手掛ける。しかし性格の設定はランダムにされていた。完璧な人は存在しないという運営のスタイルによるものだ。

そしてこのウェーハはその際たる者だと言って良いだろう。

なにせ主軸となる要素に『傲慢』『女好き』『自由人』『バカ』が居座っているのだから。

なので思考もそれに誘導される。例え騎士団長という組織の上に立つ人物だとしても。例え大事な初回イベントの最終ボスだったとしても。


彼は考えた。


私がお前の様な若造の年齢を考える時間は無いのだが……(ナギサの目を見る)まあ、考えてやらんでもない。……14と言った所か? いや待て、私。

突然年齢を尋ねたと言う事は年齢を気にする年頃なのだろう。他に手掛かりは……服装は随分大人びている………まさか年増なのか!? 有り得る……のか? 若作りが過ぎて最早少女と変わらんではないか!

ここまで老いを隠すというのは、つまりだ。若ければ若い程嬉しいのだな! そうだな!? そうなのだな!? 

フッフッフ、ならば簡単だ。


色々ツッコミ所のある深謀遠慮の果て、ウェーハは両手をナギサの前に突き出した。


「答えは10歳だっカッ!!」

首にナギサの右足が食い込みウェーハの頭が地面に罅を入れる。己の間違いを悟り、ウェーハは指を一本減らした。


「9か!?グフッ!」

ナギサが真上に岩塊を撃つと同時にストンプした為にウェーハの全身がニセンチは沈んだ。懲りずにまた指が一本曲げられる。


「じゃあ8ッうぉぉぉ!!?」

ヘルムの隙間を侵入しかけた何かをウェーハは反射的に避ける。頭の横で柄まで埋まりかける包丁。

……本気だった。少なくとも体感がイコール死亡に繋がる程度には。


「………く…」


「はぁ?」


「じゅ……く…」


「7か?流石に無理が過ぎるぞ」


「……じゅ、う、ろ、く、で、すぅ!!……私そんなに幼く見えるんですか!!」


「それこそ無理があるではないか。胸は何処へ行った?その顔でも男なら私は食えんぞ?」


「あっ……もういいよ。オジさん」

プチンッと。ナギサの中で何かが切れた。それはそれはもう盛大に切れ散らかった。


「そうだな、冗談は置いといてほら、焦らすな。本当は何歳だ?腹を割って話そうではな…い……か?」

ユラリと自分から見て右の方に行ったナギサをウェーハは目で追った。

漸く退いてくれるのかと。

しかし大きく引かれ、後は引絞った弓を放つが如く静止した右足。そしてその予想進路に自分の頭がある事に気付く。

ウェーハは思った。



アレ?私危ないな。



決断は一瞬。人生で一番速く固まった腹筋が上体を起こしきるコンマ数秒前。

弓は放たれた。


破砕音が二回。

一つはナギサの足が地面をめくり上げる音。

もう一つはウェーハを追ってきた騎士像の一団に石畳が刺さる音だった。


「……何で避けるの?」


「すまない…つい」


「……次は無いよ?」


「ああ……」

ウェーハは少し深くなっている自分を型どった穴に寝た。

再度引絞られる(右足)


「いやいや!死んでしまうわ!!」

破砕音が二回。

また数体の騎士像が粉砕される。

そして遂に自衛の為、ウェーハは剣を抜いた。





「うおっ!何だお前!?」


「いーから協力して、共闘よ共闘!このウザったいの倒すの!」


「お……いやでも信用―――」


「不意打ちするならもうしてる!」


「あっ、はい」

男を説得し、現場へ向かわせる。

その後ろ姿を見送って、アオハは別のプレイヤーの元へ走った。


毎秒一体。【騎士団長ウェーハ】はそんなハイペースで騎士像を生み続けている。時々移動しては生み出し、また移動しては生み出す。

その行動にアオハは違和感を覚えた。無限湧きならば生み出し続ければいい。それで広場が飽和すれば勝ちは揺るがないのだ。それなのにボスは移動する。

そのタイミングを見てアオハは一つの仮設を立てた。

即ち。


「アイツが場に出す騎士像は上限がある!だから無限じゃないし、アイツが生み出すスピードより倒すスピードが上なら騎士像はいなくなる!」


「ホントか!?」


「ホントだからほら行って!」


「オッケー了解!うっしゃあ!」

アオハの計画は戦闘から逃げているプレイヤーを集めて殲滅力を強化し、騎士像を倒し切るというもの。

だが言うは易し行うは難し。バトルロワイヤルでプレイヤーがそんなに集まるとは思っていない。だからナギサにはボスが騎士像を生み出さないように足止めをしてもらっているのだ。

新手が見えず着々と減っていく騎士像を見ればナギサがまだ頑張っているのが予想できた。


「早くしないとナギさんがやられちゃう」

マップを操作。最縮小し、二つの光点を探す。

探しものを特定してアオハは走った。

光点は【ギルド創設券】保持者を表す。片方はボスと戦闘中のナギサ。アオハの探し者はもう片方。拡大を続ける戦場において彼ほど心強い者はいないだろう。


「ジェントル!」


「ああ、御機嫌よう。アオハ様……ナギサ様の姿がありませんが?」


「【天眼】使ってないの!?」


「MPが心許ないので……」


「じゃあ私のあげるからナギさんの援護に!」

アオハの剣幕に押され、ジェントルは出されるままにMPポーションを飲みまくった。


「で、では【天眼】」

超高性能ジェントルレーダー発動。


「…………」


「ね、どう?」


「……あー、どうとは?」


「だから!ナギさんがボスと戦ってるでしょ!」


「たたかっ……ているのでしょうねぇええ。あれは紛れもなく戦闘なのでしょう。はい。ただ…何と言うべきか……趨勢は決している御様子、ゆっくり歩いて行きませんか? 燃えゆく廃都というのも興が乗りますねぇ」

明らかに何かを隠しているジェントルにアオハは不信感を覚える。気付けばあれ程いた騎士像が一体も見えなくなっていた。

まさか全部ナギサに向かって行ったのではないか。そう悪い方に考えてしまい、アオハはナギサがいるだろう場所に走り始める。


「あ、アオハ様!余り刺激なさらない方が……」





「……私は今からが成長期なんです。……人より少し遅いからよく誤解されるんです」


「そ、そうだ!ヌシはこれから大きくなる。私よりもだ!私より大きな者などそうはいないぞ?」


「……うん。ボン、キュッ、ボンなんだから」


「ボ……ああそうだとも!奇遇だな。私もそう思っていた所だ!」 

異様な光景だった。

名付けるなら地面から頭だけ生えたイエスマンと、その頭に包丁を突き付け脅すゴシックドレスの少女。と言うべきか。アオハが集めたプレイヤー達が遠巻きから眺めているのがいいアクセントになっている。


「あーー、ナギさん?」


「……んあ、アオハ!お疲れー」


「あ、うんお疲れ。ところで〜……その人は?」


「お、おヌシその下着……本当に女だったァァァっっ!!?」

イエスマンの頭に全力の踏み付けが敢行され、遂に全身が地面に埋まる。

丁度【騎士団長ウェーハ】という名が付いたHPバーがゼロになり、ナギサの足元からキラキラ欠片が溢れた。


「……大体分かったからいいよ」


「ん、ありがとう。大好きだよアオハ……その胸が無ければ」

暫し沈黙。

何も聞かなかった事にしてアオハは話を続ける。


「取り敢えず、そろそろ襲われそうだからジェントル達と合流しない?」


「ん……行こ」


《クエストボス【騎士団長ウェーハ】が死亡しました》


《貢献度を計測中――――〚ナギサ〛《98%》。〚アオハ〛《1%》。〚その他12名〛《1%未満》。貢献度最大のプレイヤーへ【ギルド創設券】を贈与します》

[冒険者]

ダンジョンモンスターのドロップ率上昇

獲得条件

ダンジョン攻略数最多。記録が更新されればこの称号は剥奪される。


獲得者

九龍

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