イベントを楽しみましょう 2日目 1
すごく久し振りです
色んな小説読み過ぎて書体が変わってるかもです
『イベントマップ《廃都》参加プレイヤー146名。3秒後に開始します』
ゴングが鳴り、ナギサの視界いっぱいに見上げるような建物が映った。
「お、おー……お城…だよね?」
人が使わなくなって久しい、もっと言うなら今にも崩れそうなお城だ。
いかにも何かありそうなその見た目に圧倒されつつもナギサは周りに意識を向けた。
どうやら城前の広場にいるようである。方々に見える道や建築物は城に負けず劣らずボロボロで、名前の通り廃墟化した都市なのだろう。
そしてキョロキョロ辺りを見渡して他に誰もいないことを確認し、城に向き直った。
「近くのものを壊すんだよね?」
そう、ちゃんとナギサはアオハのオーダーを実行しようとしているのだ。
最初に壊れた建物へ集合する。無闇に探すより合流できる可能性は上がるし、他のプレイヤーの反応も最小限に抑えられる。何より予測不可能なナギサが動かなくて安心。
土壇場で捻り出したにしてはいい考えると言えるだろう。
最も壊す対象がこのマップで一番大くて目立つ建造物に向かうなんて予想外もいいところ。
大体、普通のプレイヤーなら考えもしないし、壊す手段が無い。
だがここにいるのは予想外の塊である。
そしてこの重なった予想外が後に〖灰都イベント〗と呼ばれる事件の引き金になった。
「えぇっと確か……」
それっぽいスキルを探してナギサはおもむろに包丁の先を城へ向ける。
「【ソレイユ】」
状況変わらず。何処からか風が吹き込んだ。
「んん? 何で……あっ、間違えてた」
スキル説明をちゃんと見て、ナギサは今度こそと口を開く。
「【変形】」
ナギサのキーワードにより漆黒の包丁が膨張、色が空中へ滲み出る。刃が50センチ程伸び、途中で枝分かれを繰り返した。
次いで宙に漂った色が収束。骨組みに形を与える。
いつの間にか柄は見慣れたU字型に。闇を全て吸い込んだ刃はフワフワのフリルを纏い、最早包丁の名残は無い。
「あっ……どうしよこれ…あれだよね?でも……失敗したらダメだから……最大出力!」
遠距離攻撃の正体がある程度掴めたナギサは柄にあるボタンを押す。
漆黒の包丁もといフリルを揺らす黒日傘は、勢いよくパッと開き赤の魔法陣を展開させた。
それは時間と共に輝きを増していく。
数秒の後。
「【ソレイユ】!!」
いつしかのように広場が白に包まれた。
「は?」
「こ、これは……」
その時、高台に登っていたアオハ。スキルを駆使してナギサを捜していたジェントル。
二人の視線の先である程度予想がついてしまう謎の閃光が走る。
城が吹き飛んだ。
「よし、これで二人とも分かるよね?」
黒日傘より放たれたるはゴシックドールの地形破壊型広範囲魔法の強化版。
遺憾なくその効果は発揮され城の大半が蒸発。残りは瓦礫となって進行方向に降り注ぎ、運の無いプレイヤー数人がペチャンコになっていた。
明らかにやり過ぎである。二人には気付いてもらったが、この先無事合流出来るかは一気に怪しくなったろう。
そしてナギサが何かすると基本セットで付いてくる声がある。
《シークレットエネミー【封印の守人】が死亡しました》
《貢献度を計測中――――〚ナギサ〛《100%》。貢献度最大のプレイヤーへ【ギルド創設券】を贈与します》
「あっ、また同じアイテムだ……」
なんと二枚目となる【ギルド創設券】をゲットである。
これでアオハと一枚ずつだ!なんて考えているナギサ。しかしアオハにそれを言えば頭痛をもたらすことは確実だ。
そして最後にダメ押しのアナウンスが続いた。
《イベントクエスト〚楔巨人〛が発令されました。》
《条件を満たしたことによりマップシステム解放。アイテム【ギルド創設券】をトラッキングします》
【ギルド創設券】を持つプレイヤー。今はナギサだけなのでナギサが全プレイヤーのマップに表示されることになったのだ。
そしてその効果はすぐに表れた。
通りの一つからすごい勢いで飛んできた物体。横滑りして停止したそれはナギサを見て歓喜の声を挙げた。
「よっしゃぁ!! 一番乗りぃ!!」
男は一瞬で距離を詰め、曲剣を振りかぶる。
流石先日のバトルロワイヤルを勝ち残ったプレイヤーと言うべきか。淀みなく何らかのスキルアシストを受けながらナギサへ迫った。
咄嗟にナギサが受けの姿勢を取った瞬間。
「へぶっ!?」
横合いから出てきた鞭に男が張り飛ばされた。
更に鞭は追撃。男のHPを削り取り、ポリゴンの欠片へと変えた。
男を砕いた鞭は生きているかのように動き、強者の風格を漂わせる女性の手に収まる。ニッコリと人の良さそうな笑みを浮かべながらナギサへ近寄る女性は、そのまま飛来した無数の炎弾で焼失。
「ええぇ……」
バトルロワイヤルの本質を垣間見たナギサはそこかしこで戦闘が始まっているのに気付いた。
誘蛾灯を前にした羽虫の如くプレイヤーが集合しているのである。一人一人の能力が高いだけに広場は段々と異能力バトル漫画のような様相示し始めていた。
勿論その真ん中にいるナギサにバトル参加の拒否権は無い。
「いたぁ!! 何してるのナギさん!?」
混乱に乗じて広場を突き進んでいたアオハは中心で大立ち回りを演じるナギサを見つけた。
「アオハっ! やっと、会え! たっ!」
武器を弾き、魔法を避け、隙あらば包丁や手足で反撃する。
近接戦でキルスコアを四人に伸ばし、残りの一人を蹴飛ばし遠ざけるとナギサはアオハと合流する。
「逃げれない!! 助けて!」
その単語二つでアオハは状況を理解してしまった。
【遁走】【逃走】の効果で逃げるときナギサのAGIは三倍になる。今の速さだけでも人間には厳しそうに見えるのに、それが三倍になれば壁のシミになりそうだ、と。
「いやいやいやいや!! だからってどうしろと!?」
この戦場はマップに映ったナギサを中心に広がっているのだ。
下手に動いても場所が変わるだけで現状打破には繋がらない。
かといってこのまま向かってくるプレイヤー全員を相手にするのはかなり危険である。
周囲には流れ弾が飛び交い、広場に面した建物や道から続々とプレイヤーが飛び出し、またそれが戦場を広げていた。
ほぼ詰みとも言えるこの状況。
そんな中、瞬間移動の如き挙動を見せるナギサを気にしつつ、時折飛んでくる魔法逸らしていたアオハに【気配察知】【危険察知】から最大限の警鐘が鳴らされた。
一欠片の迷いなく【魔手】を起動させたアオハは【魔力感応】の情報を頼りに飛来物へ手を伸ばす。
触れた途端ガリガリ削れるMPに顔をしかめて、その切っ先を横へ。瞬間、石畳に半ば埋まったそれはただの鉄の矢だった。
アオハは戦慄する。普通の矢がMPの一割を持って行ったことにでは無い。
イベントのルール上、矢を放つ。つまり弓を装備したプレイヤーは一人しかいないからであり、その人物に戦慄したのだ。
「マジか……結構本気で狙ったのに外されるとか自信無くすわ……」
矢を射る範囲としては近すぎる間合いで男は肩を落とす。
その男は細見の青年だった。
その男は軽薄そうな気配を纏っていた。
その男は湾曲した槍のような武器を持っていた。
金髪を靡かせる男の目はその軽い口調と雰囲気に逆らって鋭い。
「イージス…」
「いや、アイギスね? 何でそっちが定着したかな……」
賭けの順位。つまりプレイヤー間勝利予想ランキング一位。
人呼んで『チーター』『AI』『凸砂』。
プレイヤー名『アイギス』。
公式ホームページで記念すべき最初の二つ名『イージス』を与えられた怪物である。
「ま、次は外さないからな」
「ナギさん逃げて!!」
即座に自分では勝ちの目が無いに等しいと断定。
アオハは【ギルド創設券】を持つナギサの為、時間稼ぎに徹する戦術へ切り替えた。
しかし空気を読まない人というのはどこにでもいるのである。
この場合は二人いて……
「あっ! システム教えてくれたオジサンだ!」
「オジ……まさかあの時の嬢ちゃんか?」
無警戒でアイギスに近づいたナギサであり。
《クエストボス【番の楔巨人】が討伐されました》
《貢献度を計測中――――〚ジェントル・メン〛《100%》。貢献度最大のプレイヤーへ【ギルド創設券】を贈与します》
「へ? ……ジェントルさんも貰えたんだ。ナイス!」
「は?」
「あんの変態仮面、今度は何しやがった!」
絶賛消息不明のジェントルだった。
《クエスト最終フェイズ突入。残存戦力評価――――【称号プレイヤー】23。【通常プレイヤー】81。――――プレイヤー戦力が規定値を突破しました》
《イベントボス。【騎士団長ウェーハ】。投入します》
記録用に考えた称号を一個ずつ書き留めていきます
[暴食]
【悪食】【健啖家】を取得。味覚を遮断できる。
獲得条件
食材かどうかに関わらず、口にした物体の種類、量共にプレイヤー間で最多最大を記録する。他のプレイヤーが記録を更新した場合、称号は剥奪される。
取得者
モグモッチー




