2日目開始しましょう
改定版なり
アオハの武器種は【制魔之手】から【魔手】になりました。
イベント二日目。
ちゃんと宿屋でログインしたナギサは中央広場にいた。
周りにいる一〇〇人ちょっとのプレイヤー達はそれぞれのバトルロワイヤルで生き残った猛者達だ。
持って行くアイテムの確認もしっかりして、やる気も十分にある。
今はイメージトレーニングしながらアナウンスを待っているところである。
土壇場で手に入れたスキルが多すぎてまだ対人戦でどう使うか固まっていないのだ。昨日のようにあっさり勝てる保証なんてないのだから入念にイメージしていた。
そして全員を【ゴシックドール】基準にしたせいであちこちからレーザーやらが飛んで来るナギサのシミュレーションは、肩を叩かれた事により中断された。
「おーい! ナギさん?聞こえてる?」
叩いた手の主は初期装備から盗賊のような軽装鎧に変わっているアオハだった。
「アオハ!? 何でここにいるの?」
「お、やっと気付いた。そりゃあ、【魔手】の方で勝ったに決まってるでしょ? ナギさんも一回戦突破おめでとー」
「アオハもおめでとう! 良かったー、知り合いがいると心強いよ!」
「……言っておくけど敵同士だからね?容赦しないからね?」
「それでもだよ!」
「ホントかなぁ……」
自分を見付けても不意打ちなんて考えずに駆け寄ってくるナギサをアオハは簡単に想像できた。
「あー、うん。その時はその時に考えよ。あっ、そう言えばナギさん賭けの順位見た? 凄い事になってるよ!」
「……そんなのあったね」
そしてアオハに連れられてモニターの前に来たナギサの目に、予想外の数字が飛び込んできた。
「8位!?」
二桁に届かないと思ってたナギサの予想を大きく上回る順位だったのだ。
オッズも二倍とかなり低めだ。
第一回イベントなので注目されるプレイヤーが少人数だったことと、美少女へ応援の意味を込めてお金を投げる愉快な人達が結構いたのである。
女性が少ないのも相まってアオハの順位も32位と高めだった。
「やっぱりナギさんの可愛さはお金を出してもいいレベルなんだよ。引き立て役の衣装も凄く似合ってるし……イベント終わったら教えてくれるよね?」
合う度に何処かが強化されていくナギサに呆れを覚え始めたアオハである。
「え?元からそのつもりだけど……あっ!ちょっと待って」
ナギサの目には見覚えのあるシルクハットが映っていた。
「おや、御機嫌よう。ナギサ様、アオハ様。二回戦進出おめでとうございます」
「うげ…」
「こんにちはジェントルさんっ!……あれ?ここにいるってことはジェントルさんも出場するんですか?」
「え、ええ…そうですが……」
言葉を切らしジェントルはナギサの顔をジーッと見る。
ナギサは急に始まった睨めっこに戸惑いつつも応じて変顔を返す。
数秒の沈黙。
マスクはずるいよと更なる変顔を見せるナギサ。
「ナギさん何して…ぶっ!ちょっ! げっほゲッホ!」
先に沈んだのは沈黙を疑問に感じてナギサの顔を覗き込んだアオハだった。誰しも友達の顔がヒョットコに似てたら笑うだろう。
しかし両者ともむせるアオハを気にしない。ナギサにとってこれは何故か分からないけど売られたケンカなのだ。本当に何故か分からないけど全力で勝ちに行っているのである。
一方のジェントルは、百面相を見せるナギサに更に困惑しつつもおっかなびっくり口を開いた。
「あの…ナギサ様。お伺いしますがマスクはどちらへ?」
「へ? あっ!!」
「あ、答えたくないのならいいのです!所詮ワタクシの装備ですし、腕に自信はありますが突出したものあったとも思いません。参考までに何処が悪かったのかお聞きしたいだけであって、装備していないことを責めようなどと万に一つも考えておりませんのでご安心下さい。デザインが気に入りませんでしたか?それとも性能が陳腐過ぎましたか?それとも――――」
ナギサの装備を手掛けて一週間も経っていない。他の装備に取って代わられたのなら兎も角、ナギサの頭装備は無いように見え、となると原因は【白陶面】にある。
自分の創った装備にそれなり自信を持っていたジェントルは最初からそれを気にしていたのであって、睨めっこなどほんの少しも考えていなかった。
「まま待って下さい!そんな事じゃ無くて――――」
慌ててナギサは誤解を解きにかかった。
「――なのでとっても助かりました」
「秘密大暴露だよナギさん……」
フィールドボス云々の明言を避けていた代わりに、奥の手になるスキルがだだ洩れていた。
「成る程、強いボスを撃破する時に使ってしまった。と……つまりは頭装備を持ち合わせてないのですね? 了解しました。それでは此方をどうぞ」
そう言ってジェントルは予備の【白陶面】を差し出した。
「んえ?」
「…は?」
「こんな事もあろうかとワタクシ、今まで作ったアイテム全ての予備を持ち歩いてるのです」
アオハがどん引きした。
「そうなんだ……職人さんは大変なんですね」
ナギサはお金を渡しつつズレた感想を言った。
そこで開始時間となりアナウンスが響く。
『野郎共!! 何人か淑女も加えてぇ、イベントの時間だぁ!!』
一日目と同じようにうおおおぉぉぉと主に外野が吠えた。
『今日は異種武器バトルロワイヤルだ! ルール説明するぞ。今から各武器で1番を勝ち取った兵どもをイベントマップに放り込む! 1人倒せば100ポイント貰える。最後にポイント最大の奴が1位! 以上!』
つまり倒した人数が重要視される訳で、最後の一人になるのが目的では無いのだ。と言ってもこの運営の事だから生き残った者には何かしら優遇措置が取られているのは確かだろう。
『更に! マップには良い物が置いてあるぜ!! 具体的には……【ギルド創設券】だな』
男がそう言った直後。割れんばかりの歓声が始まりの街を覆った。
参加プレイヤー達はこれまでの表情が何処かへ行き、ゲームなのに遊びを忘れて真剣な顔を見せている。
皆ギルドを心待ちにしていたのだ。
アオハもそれに漏れない。
「ギルドだってギルド! 私優勝よりそのアイテム探すよ。ナギさんも一緒に探そ?」
「あ、何処だっけ……あった…これ欲しいの? アオハにだったらあげるよ?」
テンション高めのアオハにナギサが【ギルド創設券】を差し出した。
「そんな固いこと言わないで。私達のギルド…………は?」
アオハが固まった。
「おやおや…これは」
成り行きで一緒にアナウンスを聞いていたジェントルはスっと立ち位置を調整し、周りの視線を遮った。
アナウンスは続く。
『【ギルド創設券】は死ねば落ちる! ギルド建てたきゃ死ぬ気で生き残れ!』
つまりアイテムだけ見つけて逃げ回るという行動も出来るのだ。
自分の力量では一位は遠いなと自覚あるプレイヤーの選択肢である。
そこで進行役の男はモニター越しにナギサの姿を見つけ、その手に【ギルド創設券】が握られているのに気付いた。
ニヤリと笑い、ついといった感じで口を滑らせる。
『ちょっと調整間に合わなくてナギサ様の【ギルド創設券】も落ちるから。間違えて死ぬなよナギサ様!!』
バッと。
本当にバッと、全てのプレイヤーの頭が男の目線を追う。
その終点にはそれらしきアイテムを持った美少女の姿が。流石にジェントル一人では遮れる視線の量に限界があったのだ。
囲んでいた何人かと外野の数名も含めナギサへ攻撃を仕掛けようとする。しかしリスポーンエリアの為、スキルは発動しない。
もしここがフィールドなら即座に大規模戦闘が勃発したであろう。
「んにゃ?」
何か不味そうだなと感じたナギサがインベントリにアイテムを戻すも、全て後の祭りである。
どこにあるか分からないアイテムを探すより、持ってる一人から奪った方が確実。
何故持ってるかは置いといて、今この瞬間にほぼ全てのヘイトがナギサへ向かった。
アオハ起動。
小声で器用に叫ぶ。
「何してんの!? 何で持ってるの! それ以前に何で出したの!?」
「アオハが欲しいって……」
「それは、ぐおおぉぉぉぉ……」
イベントの賞品を持っているなんて普通考えないし、アオハに自分を責める理由など何処にも無い。
強いて言うなら進行役が悪いのだが、この世界では文字通り神様なので責めるに責められず。
結果。行き場のない何かがアオハを唸らせ、ナギサの異様さを舐めていたと後悔していた。
「はぁ…………ナギさんとは手を組まなきゃ」
「皆そんなにあれが欲しいの?」
緊張感を見せない友人にプログラムの胃に穴が空いた気がしたアオハであった。
「ふむ……ではチームナギサ様ですね。気分が高揚します」
「いやなんでジェントルがいるのよ!?」
「ジェントル『さん』だよ!アオハ。いいでしょ? チームは多い方が楽しいし」
「あーもう!分かったから……じゃあ合流する方法を考えないと……」
しかし残り少ない時間でそう良い案が出る筈もない。
『ちょっと何してんスか山さん!?』
『悪い…つい』
『絶対にワザとッスよね? イベントの趣旨変わってんじゃないッスか!!』
『まぁまぁまだ繋がってるから。…さて、制限時間は3時間!! 死んだらやっぱりそこで終わり! イベント2日目スタート!!』
プレイヤーが光に包まれ始めた。
「ナギさん近くにあるもの壊して!! ジェントルもそこに――」
大波乱を約束されたイベント二日目が幕を開けた。
情報詰めたら微妙に文字数多くなるんですよね……




