最終確認しましょう
勝鬨を上げるナギサの耳にレベルアップのファンファーレが連続する。普通なら六人で構成された高レベルパーティーでようやく倒せる相手なので中々止まらない。
そこに重ねるようにいつものナギサ命名『天の声』が聞こえた。
『No,19 個人特化物理強襲攻撃型【ゴシックドール】が討伐されました。フィールドボス初撃破に伴い、全プレイヤーへギルドシステムが開放されます』
『戦闘参加プレイヤーへ固有称号[ギルド創始者]を授与します』
『貢献度を計測中――――〚ナギサ〛《100%》。貢献度最大のプレイヤーへ【ギルド創設券】を贈与します』
『単独討伐であることが確認されました』
「まって待って! 多いよ!!」
戦闘後の頭でこの情報量は処理出来ず、ナギサは悲鳴をあげた。
『かしこまりました。システムログを一時停止します』
「……え?」
聞き分けのいい『天の声』にナギサはキョトンとする。
普通に考えれば、システムログなのだからプレイヤーが聞きたい時に流れるのが当たり前である。設定で声の質も変更できるし、戦闘の邪魔になると思ったのなら戦闘後にまとめて流れるようにもできる。
何も触らなかったからこそ【空蝉】の取得に気付けたものの、情報弱者に違いない。
「まぁ……天の声さんが待ってくれるならそれでいっか」
後で確かめようと考えてナギサは貰ったものを調べた。
[ギルド創始者]
この称号を持つ者が所属するギルドは『ギルド会議』において3ポイントの決定権を得る。
獲得条件
ギルドシステムの開放に関わる
「ギルドってあれだよね……パーティーよりパーティーする……」
【ギルド創設券】はその名の通り、ギルドを創るアイテムだ。
ギルドはそれを目的にゲームをするプレイヤーがいるほどMMOにおける重要な役割を担っていて、創れるとなるとこのアイテムの価値は計り知れない。
しかも現状持っているのはナギサただ一人。
この事を知られればPKに付け狙われるだろう。
「……アオハ案件だね」
何か分からないけど重要そうだなーとほんわかした感想を抱いたナギサは、アオハに丸投げすることにした。
「天の声さん、続けて良いですよ!」
『かしこまりました』
まとめると、ナギサが貰えたのは[ギルド創始者][下剋上][単独撃破者]の称号三つ。
[下剋上]
【暗殺】を取得。自らのレベルより高い相手から得る取得経験値5%増加。
獲得条件
基礎ステータス値が5倍以上の敵を単独で討伐する。
[単独撃破者]
【孤高】を取得。単独行動時探知系スキルに反応しない。
獲得条件
フィールドボスを単独で討伐する。
称号に紐付けされたスキル二つだった。
「むー……両方とも使いにくいな」
貰ったスキルは使い勝手が良いのか悪いのか分からなかったが、今はいいかとナギサは視線を前に向けた。
スキルよりもっと大事なことがある。
そこには人がスッポリ入るくらいの宝箱が出現していた。
念願の装備がこの中に入っているのだ。
ドキドキしながらナギサは蓋に手をかけ、持ち上げる。
「いい装備出てこい!!」
パカッと宝箱が開く。
そこには……
「……えっ、これ……えっ? え? え!?」
ドロップアイテムは倒したモンスターに関係あるものが大半だ。
ゴブリンだとボロ布だし、動物系だと毛皮やキバなど特徴的なものが落ちる。
【ゴシックドール】の特徴とは何かと言うと。
「ゴシックドレスだよね……これ」
困惑しながらナギサが持ち上げたのは、右半身と左半身で白と黒の比率が異なるフリルとリボンが可愛らしいさを強調しつつ、神秘的な雰囲気を保っているドレス。
更に、宝箱の中には銀線を編み込んでいるのか角度によって花のレリーフが見えるニーハイ。右脚が黒、左脚が白という余り見ない配色をしていた。
甲の部分に小さな黒薔薇をあしらったハイヒールは、足首用のブレスレットと鎖で繋がっている。
その横にはクオーツが嵌め込まれたチョーカーと銀鎖で首周りを覆うネックレスがあり、それらにそっと添えるように刀身、柄まで漆黒の包丁が置かれていた。
〘人形のドレス〙上半身装備
付与効果
AGI+40 MND+130 VIT+30
付与スキル
【精霊召喚】【ゴシックドール】
〘執着の靴下〙下半身装備
付与効果
STR+20 AGI+60 MND+50 VIT+20
付与スキル
【スティグマ】
〘叛逆のハイヒール〙足装備
付与効果
AGI+80 MND+20 VIT+10
付与スキル
【反逆】
〘陽光之包丁〙片手装備
付与効果
STR+30 AGI+50 DEX+10
付与スキル
【変形】【ソレイユ】充魔率50%
〘月光の首飾り〙アクセサリー
付与効果
AGI+10 INT+50
付与スキル
【浮遊】【タマカツラ】充魔率50%
強化ステータス値合計六〇〇オーバー。
【忌み物】の強化値よりも高く、何よりナギサが欲しいステータスを重点的に補強している。
しかも新しいスキルが八つも。
フィールドボス単独討伐という偉業に見合った現状最強と言っても差し支えない装備だ。
「つ、強い……でも……」
ナギサはこれを自分が着ている姿を想像する。
長身でない自分が着ればそれはそれは酷いことになると。
実際は人形のようなという比喩が似合う可愛らしい姿になる筈だが、ナギサは自分の容姿について余り自信を持っていなかった。
「むぅ……むー……」
しかしもう時間が無いのも事実。
これを着ないとイベントには初期装備で出場することになる。
どうせ注目される事になるならとゴシックドレスでイベントに出ることを決めた。
ナギサは【ゴシックドールシリーズ】を全て装備してステータスを確認する。
ナギサ LV41
HP50/50
MP10/10
【STR 0〈+50〉】
【VIT 0〈+60〉】
【DEX 30〈+10〉】
【AGI 70〈+240〉】
【INT 0〈+50〉】
【MND 0〈200〉】
装備
頭部【空欄】
上半身【人形のドレス】
右手 【陽光之包丁】
左手 【空欄】
下半身【執着の靴下】
足 【叛逆のハイヒール】
アクセサリー1【月光の首飾り】
アクセサリー2【空欄】
アクセサリー3【空欄】
スキル
【逃走】【遁走】【正念場】【集合】【厄災】
【即死無効】【死なば諸共】【麻痺無効】【火傷無効】
【硬化無効】【撹乱無効】【錯乱無効】【遮音無効】
【浄化無効】【蟲毒】【威圧・弱】【空蝉】【暗殺】
【孤高】
称号
[心優しき逃亡者][死地][怪物と友愛][災厄][最速者]
[死兵][ギロチン][毒姫][ギルド創始者][下剋上][単独撃破者]
ステータスポイント 200
「よしっ、頑張ろ」
気持ちを切り替え、見た目を忘れる事にしたナギサはそのままログアウトした。
明日からイベントだ。
装備考えるのに四時間掛かりました。




