ポーションを作りましょう (収集)
日曜日、ナギサは宿題などを終わらせて最早日課となったCSOにログインしていた。なんだかんだゲームを満喫しているのである。
昨日は結局アオハに適正レベルが一つ上の狩場に連れられログアウトするまでレベリングを続けていた。
お陰でレベルが12まで上がったが、避けまくって切りまくる単純作業に飽き、今日は息抜きの日と決めているのだ。
ナギサに追い付こうとスキルや素材を集めているアオハとは別行動である。
「なにしよっかなー」
息抜きの日と決めているだけで特に何をするのかは決めていないので初日のようにブラブラと町を散歩しつつあーだこーだ考えを巡らせる。
「戦いは無し。走るのは……保留にしとこ…何か面白い事起きないかな?」
ファンタジーな街並みと行き交うプレイヤーをを眺めるだけでも楽しいのだが、それはいつでも出来る。
初日の大暴走とまでは言わないが何か刺激を求めていた。
「んー……これだ!」
暫くメニュー画面を操作していたナギサは、あるアイテムの説明を見て、今日やることを決めた。
【ルーレットオレンジ】
六房全てに高い回復作用があるが、内二つは即死効果も併せ持つ危険な果実。
ポーションの材料として使用可能。
「ポーション作ろう!」
HPポーションがあれば体力が減ってもすぐに回復できる。
MPポーションなら魔法をどんどん使える。
問題はナギサの低HP、低MPでは両方とも使わないことだが、ナギサだって別にずっとこのままでプレイするつもりはない。
必要になったときに無いのは困るし、なんなら他の人にあげればいいのだ。
善は急げとばかりになけなしのお金でそれっぽい道具を揃え街を出る。
目指すはオレンジがあった森だ。
「んふふ、大量大量!」
あっという間に東の森へ着いたナギサは、既にいくつかのアイテムを手に入れていた。
オレンジも含め、白角ウサギの頭に生えていた青と黄色の斑点が目に宜しくないキノコや、見た目根菜の癖に木に実っていた青のニンジンぽいもの、ムンクの叫びを彷彿とさせる人の顔を持ったリンゴなど。
ナギサは見た目に頓着しない人間なので、目についた物全てをインベントリに入れた。その結果ゲテモノと呼ぶことすら生温い異物が少し混ざってしまったのだ。
実は東の森はNPCの間で『魔女の森』と呼ばれており、まともなアイテムの方が少数派という何とも言えないエリア。
効能が高い変わりに癖の強いアイテムだらけなことが売りである。
「確か……【鑑定】を使うか一回食べないと説明が見れないんだよね」
【鑑定】はNPCの店でスキルクリスタルとして売られている。
そこそこの値が張り、現在無一文のナギサには手が出せない。
となると当然食べる流れになる訳で、ナギサは人面リンゴを取り出した。
掲示板には勇者兼人柱の貴重なレポートが載っているのだが、自分で確かめることにしたようだ。
「いただきまーす」
躊躇なく顔の部分を齧る辺り、ナギサのゲテモノに対する耐性は相当だ。
「あ……水が結構……萎びてるのに何でだろ?」
味は可もなく不可もない。見た目のハードルが下だっただけに美味しく感じる程である。
とまあ、こんなものを食べて無事でいられる筈もなく、ナギサの身を異変が襲った。
自分の声を含め、周りの音が何一つ聞こえなくなったのだ。
「――!? ――――――!!」
ステータスを確認すると【遮音2】と付いている。
五感を潰す強力なのに比較的高確率で受けやすい為、対抗策が必須とまで言われている状態異常である。
何も聞こえない不思議な感覚が楽しくなって、ナギサは普段出さない大声をあげたりしていた。
聞こえないだけで声は出ているので森の中にいるプレイヤーにはしっかり届いている。しかし、森から謎の雄叫びが挙がるのはよくあることなので気に止める者はいかった。
暫くするとスイッチを入れたように音が戻った。
「はっ!? ビックリした…急に戻るんだ……あ、リンゴ」
晴れて人面リンゴの詳細を見る権利を手にしたナギサ。インベントリからもう一つ取り出した。
【孤独の実】
人嫌いの魔法使いが雑音を消すために作ったリンゴ。
副作用として魔法攻撃力を上げる効果を持つ。
ポーションの材料として使用可能。
「副作用をメインにして欲しかったよ……お爺ちゃん」
別にこのリンゴを作った魔法使いが老人なのか分からないが、ナギサの中では鉤鼻に三角帽子のお爺ちゃんが大きな鍋をかき混ぜていた。
この調子で残りの二つも食べる。
【青大根】
森の氷柱と呼ばれ、触れた部分に根を張り固めてしまう。
その性質上食用には適さないが、磨り潰して皮膚に塗れば防御力が上がる。
ポーションの材料として使用可能。
【麻痺カルキノコ】
宿主の魔力を溜め込む性質を持ったキノコ。
魔力を溜めきると胞子を放出し、周りの生物を麻痺させ増える。
食べれば魔力が回復できるが、強力な麻痺毒も付いてくる。
ポーションの材料として使用可能。
「うぅ…ひどい目にあった……」
青大根は口が閉じなくなって呑み込めず、麻痺カルキノコは匂いを嗅いだ瞬間倒れてしまった。それぞれ【硬化】と【麻痺】の状態異常を持つかなりの曲者。
解毒が成功した例がまだ無く、ナギサがどうこうするにはかなり荷が重いアイテムである。
「ん? リンゴがINTで……青大根がVIT。オレンジとキノコがHPとMPだから……AGI担当のアイテムがあるんじゃ……」
それが本当ならもっともっと足が速くなる。
これ以上速くなると本格的に支障が出てきそうだが、ナギサにとって足は速ければ速いほど良いので問題ない。
最悪、本当に走らなければいいのだ。
「あ……多分…これかな?」
しばらくしてナギサの手には根っこをウネウネしている気持ち悪い植物があった。
流石のナギサもこれは食べ物なのか悩むところである。
「女は度胸! あむ………うにっ!?」
ウネウネのがシャキシャキした食感にナギサは顔を歪める。口の端からウネウネがウネウネしてるが頑張って食べていった。
幸いなの味が慣れ親しんだ大根だったことだろう。
例に漏れず、完食したナギサに状態異常が襲いかかった。
「おー、なんかがグネグネする……【錯乱】…状態異常ってこんなにいっぱいあるんだ……」
立ってるのがちょっと辛い程度のグネグネなので、ナギサは座って待つことにした。
【大暴草】
動物に憧れた薬草が突然変異したモンスター。
常に走り回っており、レベルが上がるほど、速く、薬効も高くなり、食べれば足が速くなる。
生きたままでしかアイテムとして使用できない。
ポーションの材料として使用可能。
「ビンゴ!!」
パチンッと指を鳴らしたナギサはこのアイテムをメインに乱獲を始めた。
アイテムの説明が楽しくてしょうがない、
何故だ……




