第1章 第9話 夢で会えたらしいです…
俺がドランさんの元で修行を受け始めてから一ヶ月が経った。一ヶ月前に比べたらかなり強くなったと思う。新技も何個かできた。これなら二人を守れるだろう。
「よく頑張ったな。思ったより強くなったようだ。Aランク程度はあるだろう」
「ありがとうございます。でもこのままドランさんの元で修行を続けてもいい気がするんですが……」
「ダメだ。俺ではもうお前を強くはできない」
「そうですか……」
やっぱり戦い方が違うと修行にも限界があるんだな。でもAランク程度の強さまで上げてもらったのに、すぐに違う人の所にって気持ちにはならないよな。逆に心残りができたよなぁ……。
「そう暗い顔をするな。いずれ俺も合流する予定だ」
「本当ですか!? それなら安心です」
「ガルガンチュアへの旅の準備はできてるはずだ。お前はいい仲間を持ったな」
「へ?」
「宿に戻ってみろ。お前の護るべき者が待っている。大事な仲間だ。絶対に護れよ」
「はい!」
俺はドランさんにもう一度お礼を言ってから酒場を後にした。本当にお世話になったな。急に押し掛けたにも関わらず、一ヶ月間毎日修行をつけてくれた。感謝しても足りないくらいだ。
俺は今後のことを考えながら宿に向かう。やっぱりお金の問題は残る。ドランさんに相談したときは、修行の一環でクエストをこなして、その報酬金を貯金することである程度は溜まっていた。――でも心もとない。足りるか本当に心配だ。それ以外にもまだまだ問題は山積みだ。
――あ、宿着いた。
「ただいま。今日で修行終わりだから、明日からガルガンチュアに向けて出発するぞ」
「あ、お帰りなさい。やっと出発ですね」
笑顔でユミリナが迎えてくれた。エルンは姿が見えない。――何処かに行っているようだ。
「待たせて悪かったね。それで相談なんだけど、お金がおそらく足りなくなると思うから、途中でクエストを攻略しながらになると思うんだ」
「あ、お金のことでしたら問題ないですよ。ちょっとこれを見てください」
そう言って、ユミリナは何もない空間から袋を取り出した。――え?
「待って。その袋は何処から出した? しかもその袋はなんだ?」
「え? あ、そうでした。ハルト君に見せるのは初めてでしたね。これただの収納魔法ですよ。習得に少し時間がかかりましたけど慣れれば簡単ですよ!」
とか言いながらユミリナは空間に穴を開けたり閉めたりしている。
――最近剣術鍛えすぎて、魔法の存在忘れてた……。そうだよ、魔法があるんだよこの世界。すっかり忘れてた。魔法、俺も使えるんだろうか。この世界の原理未だに分からん。
「とりあえず、魔法は分かった。で、その袋は?」
「これはお金です。私の収納魔法の中にまだ何袋かありますが、おそらく全部で白金貨10枚分はあると思います」
「白金貨10枚!? なんでそんな大金持ってんだよ、金貨にして100枚分だぞ?」
「えーと、最初はハルト君の為に少し貯めるだけの予定だったんです。そのつもりでハルト君とエルンさんが見つけたダンジョンに入ったら、沢山お宝を見つけてしまいまして……」
「なるほど。それを売ったら大金に化けたと」
ユミリナは頷いた。にしても白金貨10枚か。こんだけあればおそらくお金が足りなくなることはないだろう。俺としては内心万々歳だ。
「まぁ悪いことしたわけじゃないし、このお金は今回の旅の資金にしよう。これでお金の心配はなくなったかな、ありがとうユミリナ」
「ううん。ハルト君の為に二人で貯めたからお礼なんていいよ。エルンさんには言ってあげてください」
「うん、分かった。そうさせてもらうよ」
「はい!」
「あ! ハルト! おかえり!」
「ただいま。修行は終わったから明日からガルガンチュアに向けて出発するよ。それで、今後のことなんだけど――」
エルンが帰ってきたので、三人で会議だ。まぁ話すことほとんどないけどね。
お金の件だけはしっかりとお礼した。エルンにもユミリナと同じようなことを言われた。――謙虚すぎない? うちの女性陣。
「てかドランさんも二人が俺の為にお金稼いでいたこと知ってたのか。だから旅の準備はできてるとかいってたのか」
「ドランさんにはあらかじめ言ってたんです。そっちのほうが修行に力を入れられると思って」
「はぁ。後半やたら酒場での模擬戦ばっかだと思ったら、そのせいか……」
「あはは、ごめんね」
「まぁおかげでだいぶ強くなったししょうがないよ。とりあえず、明日も早いしもう寝よう」
「そうですね。おやすみなさいハルト君、エルンさん」
「うん、おやすみ!」
「おやすみ、二人とも」
俺はそのまま深い眠りについた。
『おい、聞こえるか?』
んーー……。誰の声だ?
『声は聞こえてるぽいな。俺はアポロ二ウス。神様だ』
アポロ二ウス……。――――――アポロ二ウス!?なんであんたの声がするんだよ。
『まぁ俺神だしな。その辺気にすると禿げるぞ』
地味で変な脅しはやめろよ……。てかここは夢の中か? 辺り一面、白いだけで何もないけど。
『まぁそんなところだな。厳密に言うと少し違うが、概ね間違いではない』
へぇ。まぁいいや、それで? 神様が何の用?
『俺の力が今お前の中にあるのは聞いてると思うんだが、お前に死なれると行き場のない俺の力は消えてしまう。だからお前に死なれるわけにはいかないんだ。てことで忠告だ』
忠告か。それはありがたい。
『まぁそんないいものじゃないけどな。一つ、邪神側の神が数体地上に降りてやがる。おそらく俺の力を感じてだ。お前は狙われる可能性が高い。気をつけろ』
マジか。そいつらは強いのか?
『俺基準なら弱いが、お前基準だとかなり強い。神と名乗られたら全力で斬れ』
わ、わかった。それだけか?
『いや、あともう一つだ。魔法を覚えろ。そうすればお前はさらに強くなれる』
了解。肝に銘じておくよ、死にたくないし。
『ふ、頼んだぞ。我が転生者よ』
そこで俺の意識は途絶えた。
Twitterの方でも報告しましたが、いつのまにかpv数が500超えてました!ありがとうございます!
Twitterの方でも宣言させてもらいましたが、ブクマ100件とpt500突破を目標にしています。無事達成できれば、1時間につき1話投稿を丸一日行いたいと思います。簡単に言えば1日に24話分あげるぜ!って事です。
是非よろしくお願いします!