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第1章 第6話 脱出そして再会らしいです…


 いつのまにか神石の光は消えていた。あいつ、言いたい事だけ言って……聞きたい事沢山あるのになぁ。


「レトローネも忙しいのでしょう。彼女は今の神界最高神でしょう? 私達の世界にいつまでも構ってはられないはずです。おそらく多分彼女なりに貴方を信用しているのよ」


「そんなもんか? まぁとりあえずここから出ないと話にならないよな」


「そうね。でもここは地下なのでしょう? 出口なんてあるのでしょうか?」


 そういえばここ地下だったわ…。無駄に進んで魔物と遭遇したらユミリナを守りきる自信はないな…。


「なぁ? ユミリナは戦えるのか?」


「えぇ。これでも一応300年前はSランク冒険者をやっていましたので」


「Sランク!? え、もしかして現状は俺より強い?」


「ハルト君が今どのくらいの強さかは知らないけど……多分私1人で大体の魔物は倒せます」


「嘘ん……」


 まぁ俺が守る必要性が無かったわけだ。一応緊急事態にだけ備えればいいか……あのエルンですら穴に落ちかけたんだし。


「それより早くこんな所おさらばしましょう。私の転移魔法を使います」


「転移魔法?」


「空間魔法の一種、瞬間移動(テレポート)よ。でも私は今のこの世界の座標を知らないから何処に飛ぶかは分からないわ」


「それってだいぶ危ない橋なんじゃ……」


「つべこべ言わない! ほら早く手を繋いで!」


 そう言ってユミリナは俺の手を握る。うわぁ……柔らかい。しかもなんかいい匂いがするな。


「何気持ち悪い顔してるのよ……行くわよ!瞬間移動(テレポート)!」


「え、ちょ、うわぁ!」






「お、オェェェェ。ぎもぢわるい」


「ごめんなさい。久しぶりだったものだから。転移酔いにまで配慮できなかったわ」


 転移魔法を使った瞬間ジェットコースターに乗ってるかのように景色は変わるし、グワングワンするし、もう最悪だった。


「まぁそのうち慣れると思います。少し休憩してから行くことにいたしましょう」


 俺らは近くの酒場に入る。あれ?ここの酒場見覚えがあるような…


「やっぱりここか!」


 俺は酔っていたのを忘れるくらい興奮してしまった。そこは俺が最初に訪れたあの酒場だった。見覚えのあるマスターに、相変わらず店の中は色んな人たちで溢れている。


「ユミリナ! 転移は成功だ!」


「え? どういう事?」


「ここはトレファス。今の世界で一番大きい街で、俺の始まりの地だ。向こうに俺が泊まってる宿があるんだ」


 俺はユミリナの手を引いて、金鷲へ向かう。あいつは、エルンは無事に帰れているだろうか…。元気だろうか。


「た、ただいま……」


「あ、あんた! あの時のにいちゃんかい!?」


 宿屋のオーナーが俺を見た瞬間転がるように俺の方へと向かってきた。


「は、はい。どうしたんですか?」


「嬢ちゃんが泣きながら帰ってきて、ハルトが! ハルトが! って泣き続けて大変だったのさ。事情を聞いたら厄介な事になってたみたいだし。それにしてもよく帰って来れたね。あんたの部屋で嬢ちゃんが待ってるよ」


「エルン……!」


 俺は自分の部屋に急いで行く。そして自分の部屋の前で足を止めた。部屋の前で深呼吸してドアを開ける。


「ただいま」


「へ? え、あ、は、ハルト? ハルト!」


「何みっともない顔してんだよ。ちゃんと約束守ったぞ?」


「だ、だってぇ……3日も帰って来ないんだもん! 死んだかと思って、私、すごい心配したん……だからぁ……。うわぁぁぁぁん!!」


 エルンは俺に抱きついてそのまま大泣きした。俺はエルンが落ち着くまでずっとされるがままにしていた。まぁ心配かけただろうしな。サービスだサービス。


「ぐすっ。も、もう大丈夫。そ、それでその女の子は誰?」


 エルンはユミリナを指差して首を傾げた。


「あぁ。遺跡の中で会ったんだ。彼女はユミリナ。今日から俺と一緒に戦う事になったんだ」


「はじめまして。私はユミリナ・アテネ・ファルナウスですわ。短くユミリナとお呼びください」


「あ、はい。私はエルン。それで一緒に戦うって……? 何かあったの?」


「あぁ。それについても話そうと思ってたんだ。いいよな? ユミリナ」


「えぇ。隠す事でもございませんし、協力者が増えるのはこちらとしても嬉しいですわ」


 その返事を聞いて俺はエルンに遺跡で何があったか。そしてこの世界に起こっている事、そして俺自身について話した。


「そんな事が……その邪神?は私達で相手にできるものなの?」


「おそらく俺じゃないと勝てる相手ではないらしい。でもユミリナが戦うって決めたんだ。俺はユミリナを放っておけない。エルンも俺達と一緒に戦ってくれないか?」


「私は……まだやりたい事が沢山あるの。命懸けの戦いに参加できるほど覚悟もない……」


 エルンは悔しそうに、悲しそうに話す。


「あぁ。俺も無理にとは言わない。でも、「でも!!」」


 俺の言葉を遮ってエルンが俺の方を見つめる。その瞳は、顔は、態度はさっきまでとは全然違った。


「私はハルトに救われた。私があの時落ちてたら、って考えたら夜も眠れなかった。貴方が居ない3日間は本当に不安だった」


 エルンは拳を握って震えている。そんなに心配してもらえてたのか……。不謹慎だけど少し嬉しいな。


「だから、だから私は貴方と一緒に戦いたい。貴方がもしその戦いでピンチになれば次は私が助ける。私は貴方と共に戦うわ。二度とあんな思いはしたくないもの。覚悟なんてそれで充分よ」


 エルンは笑顔でそう答えてくれた。俺はこの子を死なせてはいけない、そう思った。この戦いで何があろうとも彼女達を俺は守るべきだろう。


「そう言ってくれると思ったよ。改めてよろしくエルン」


「よろしくお願いいたしますわ。エルンさん」


「うん!」


「それでですねエルンさん。ちょっと向こうで2人で話しませんか?」


「え? あ、うん」


 エルンとユミリナは何やら向こうで話し合っている。エルンの表情がコロコロ変わってるんだけど、いったい何を話してるんですかね……。すっげぇ疎外感を感じるなぁ。


「やっぱり…エルンさんは……君の事が……なんですね?」


「う……。いや……まだそうと……わけでは……。」


「それでも……ハ……君に……もらった時から……なんですよね?」


「……。」


 断片的に聞こえてくるけど、何話してるかさっぱりだなこれ。ユミリナがエルンに何か問い詰めてるのか? 雰囲気的にそんな感じだろなあれは……。


「なら、私が……してあげます。エルンさんと……が……なるように……!」


「ほ、ほんと?あ、ありがと」


 ユミリナがこっちを向いてにやけている。何してんだ全く……。あ、こっち来た。


「ハルト君。私達は今日からパーティーを組む事になります。ですが! まず先に決める事があります!」


「? 何をだ?」


「私達の部屋割りです。私達は現状お金がほとんど無いです。現にエルンさんはハルト君がいない3日間はオーナーが可哀想だと無料で泊めてくれています」


 ありゃ。それは悪いことをしたなぁ……。あとでお金払いに行くか。ギルドにクエスト達成の報告も終わらせてないし、その報酬金で多分払えるだろう。


「そして、今借りている部屋とは別に一部屋借りるのは無駄です。なのでこのまま二部屋でいきます」


「それで? 部屋割りなんて男女で分ければいいだろ?」


「いえ。それでは一部屋独占するハルト君はずるいです。なのでここはくじ引きで決めましょう」


「は、はぁ……。」


「……ユ、ユミリナ、それじゃユミリナとハルトが同じ部屋になる事も……。」


「大丈夫ですよ。こっそりくじに細工をしておけば……!」


「そ、その手があった!」


 こいつらはこいつらで何かコソコソ話している。これでこっそり話しているつもりなら、何も言わない方がいいのかな……。全部筒抜けなんだけど……。けどまぁ、流石にな。ここは止めておくべきだろう。


「なぁ。お前らが何を考えてるか知らないけど、部屋割りは男女で分けよう。」


「そ、そんな!」


「は、ハルト?」


「それが嫌で、お前らがそれぞれ一部屋欲しいって言うなら、その分俺が稼いでくるよ。最悪俺は野宿でもいいしな」


 うんうん。これで平和的解決だろ。部屋の事で揉めるのは嫌だしな。


「それはダメだ! ハルトが野宿したり、無理したりして稼いだお金で私達は部屋に泊まれても嬉しくない!」


「そ、そうですよ! ハルト君がそんな無理する必要は!」


 お、予想外の反応。これは後一押しだな。


「じゃあ、部屋は男女で分けても文句はないな?」


「「……はい」」


 意外とあっさり二人は折れた。


 結局、ユミリナはエルンの部屋に一緒に泊まる事になった。

 ちょっと惜しい気もするけど、まぁ流石に俺の部屋に泊めるわけにもいかないしね。べ、別に何か期待してたわけじゃないんだからね!


「また新しい作戦を考えましょう」


「う、うん!」


 ユミリナとエルンは二人で何か企んでるけど、まぁ楽しそうでなによりだ。これからこのパーティーでやるんだし、仲良くなるのはいい事だしな!




 俺を混ぜてくれよ……。さみし………。






 三人がそんなやりとりをしていた頃、神界ではレトローネが行方不明となり騒然としていた事を、まだ3人は知らない。






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