第1章 第5話 事の経緯らしいです…
今回は説明回になります。読み飛ばしても問題ありませんが、読むとより一層物語を楽しむ事ができると思います!
『まずどこから話しましょうか……。そうですね。まずは我々について少し。我々神はこの世にある全ての世界を監視、そして保護しています。我々は新たにできた世界を発見した場合、その世界を我々の監視下に置くように義務付けています。探せばおそらく見つかってない世界はあると思いますが、我々が監視している世界はほぼ滅びません。よく英雄譚や冒険記、ハルト様なら魔王を倒す物語、なんてものを読んだことがあるでしょう。あれらの話の中で聖剣や神剣などの武器が出てきますが、あれは作り話ではなく我々が授けているのです。それによって世界を平和に保つようにしています。この世界もそんな数ある世界の中の一種だったのです』
この世界もあくまで数ある世界の1つってだけだったのか……。
あれ? じゃあなんでこの世界に神様達が干渉してんだ?
『ですが、350年前最悪の事態が起こります。神々の一部が暴走し、いくつもの世界をその強大な力を用いて破壊の限りを尽くすようになったのです。その時の神界最高神は3代目のアポロニウスでした。彼は正義感に溢れ、その正義感故に暴走した神々を制しては、世界を修復することに追われていました。そして300年前、ある1人の神が邪神の生み出し方を見つけてしまった…。暴走した神々はこれに食らいついた。邪神は単体で神界最高神に匹敵するパワーを持っています。しかし、邪神一体を作るには、最低でも上級神の魂が100体は必要です。そして彼らは禁忌に触れた。上級神を強制的にねじ伏せ、生贄としたのです。』
「なるほど……。邪神を従えれば彼らでもアポロニウスに勝てるわけか」
「で、でもそこまでするって事は彼らにも理由があったのでしょう?」
『はい。その通りです。彼らは自分達の世界が欲しかったのです。それぞれの世界を監視できるのは上級神からです。あくまで下級神や中級神は監視できません。補助に回るようにしていました。しかし、彼らはそれが気に食わなかったのでしょう。故に邪神を生み出して、あらゆる世界をその手に収めようとした。そして彼らはこの世界に足を踏み入れました。その手で生み出した邪神を引き連れて…。邪神を止められるのは神界最高神だけ。アポロニウスは次期神界最高神だと噂されていた私を連れてこの世界に降り立ちました。その時に彼女、ユミリナ様と出会ったのです。』
その時って事は、ユミリナは300年前の人間って事か!? え、てことはこいつすげぇおば……。
「あいてててて!!」
思いっきり頬をつねられた。
「何か今失礼なこと考えたでしょ?」
「そんな! 滅相もございません!」
レトローネが「話をして大丈夫ですか?」と聞いてきたので、俺らは真剣モードに戻る。
『えー話を戻しますね。そしてユミリナ様とアポロニウスはそこで恋に落ちました。確か下級神に襲われているところをアポロニウスが助けたのがきっかけでしたね。そしてアポロニウスはまたいつでも連絡が取れるようにと神界からハルト様に私が預けたその石、神石を持ち出し彼女に預けました。これで遠く離れていてもいつでも話すことができるようになりました。アポロニウスはユミリナ様と会う時だけは、神々の事など全て忘れて本当に楽しまれていました』
なるほど……。神様達がこの世界に干渉する理由はこれか。
『ですが、平和で楽しい時間は突如終わりを告げました。邪神が暴走した神々を全て喰らったのです。邪神は誰にも制御できない神々の歴史史上最凶の力を手に入れました。そして邪神はこの世界で破壊の限りを尽くしました。もちろん我々も対抗しましたが、神々を喰らった邪神には勝てませんでした。そしておそらくここからはユミリナ様も知らない話です。アポロニウスはある日夢を見ます。それは何年後か何十年後か分からない。でも1人の男が邪神を打ち倒し、この世界に真の平和をもたらすただの人間がいると。それが貴方です。ハルト様。貴方を違う世界で見つけた私は、貴方があちらの世界で死亡した時にこちらの世界へ転生できるように準備していました』
「え、お、俺!?」
「ハルト君が邪神を倒す切り札だって事? でもアポロニウスはあの日邪神と……!」
『はい。その通りです。アポロニウスはその夢に賭けました。いつか邪神を倒すその人間に全てを託すため、彼は私にお願いをしました。憎まれ役を買ってくれと。ユミリナをお前の力で氷漬けにし、歳をとらないようにして真の平和が訪れたこの世界で幸せを見つけられるようにしてくれと。おそらく彼はユミリナ様が自分と一緒に戦う事を望むことを予想していたのでしょう。事実貴女は戦う事を選んだ。私はアポロニウスが全力を出せるように貴女は氷に閉じ込めたわけです。私の氷は彼でも砕けませんからね』
それでユミリナはこんな所で凍ってたのか。何となく謎が解けていく。
『そしてアポロニウスは自分の命と引き換えに邪神をこの世界の地下深くに封印しました。だがその代償は大きかった。世界の破滅とまではならなかったものの、16あった国はその半分の8国まで減らされました。ユミリナ様の国は、戦争地の中心だったので、その、滅んでしまいました。人1人残らないほどの壊滅的状況でした。私達は一刻も早くユミリナ様を守る必要があった。ユミリナ様の目には現実から逃げるために貴女を凍らせ、アポロニウスに全てを投げ逃げたように見えたでしょう。私と貴女は友と呼べるであろう間柄でしたので、尚更ですね。ですが、これがあの日の事実です。』
「そんな事を彼が……。なんでよ……。ずっと……ずっと一緒だって約束したのに……。それにお父様お母様まで死んでいるなんて……。300年経ったんじゃ幸せなんて無いようなもんじゃない。少しは考えなさいよ馬鹿アポロ……」
ユミリナはずっと我慢していたのだろう。話を聞いている最中ずっと震えていた。そして何かのピースがパチリとハマった。全ての事実を知った時、涙が止まらなかった。いや止める事なんてできるわけがないんだ。
「だが、俺に全てを託したって言ったって俺には何の力もないぞ? ただの人間だ」
『いえ、ハルト様の体の中にはアポロニウスの意思が、力が宿っています。ユミリナ様の封印を解いた時に貴方の体に宿るように細工をしていました。今貴方の体には神の力が宿っています。ですがまだ使えません。今使うと貴方の体は吹き飛びます。この世界で様々な経験を積み重ね、様々な出会いを重ね、心身共に成長しきった時に貴方は真の力を手に入れる事ができるのです』
「真の……力……か。その力を得た時、俺は邪神を倒せるのか?」
『はい。貴方なら倒せます。必ず。ですが時間がありません。邪神の封印が徐々に弱ってきています。成長しきってない状態で邪神と戦うのは自殺行為ですし、貴方が死ねばこの世界は必ず滅びます』
「その封印が解かれるのはいつなんだ?」
『我々神の予想では5年後と言われています』
5年……か。その5年の間に神の力とやらを使えるようにならなくちゃいけないのか。
「ぐすっ。うっ。うん。決めたわ。私もハルト君と一緒に戦う。私には神の力なんてないけど、アポロニウスの為にも! 彼が命を懸けて守ってくれたこの世界を壊すなんて絶対させない」
ユミリナが涙を拭いながら決意を固めていた。アポロニウスの為……か。アポロニウスの事本当に好きだったんだな。神と人間の恋か。どれだけ高い壁があっても2人なら超えていけたんだろう。それだけは痛いほど分かる。
『ハルト様はどうしますか? 貴方をこの戦いに巻き込んでしまったのは我々の落ち度です。怒るなり罵るなりされても構いません。ですが、どうか力を貸してくださると、アポロニウスも報われると思うんです』
「正直な話をするなら、なんで俺が? って思うよ。あくまで俺は人間だ。痛みだって感じるし、死ぬ事だってある。それに俺はこの世界に特に思い入れもない」
俺は地球の人間だ。この世界を助ける義理はない。でも……。
「でも、俺は、1人の女の子が戦うのを黙って見ているような人間じゃ……ないんだ。それを分かって聞いてるだろ? タチ悪いよなぁ」
ユミリナがこっちを見ている。まだ少し涙が残ってるぞ。俺はユミリナの涙を拭いながら、ユミリナと向き合う。
「王女様、いやユミリナ。俺は君が守ろうとしているこの世界を一緒に守る。アポロニウスが俺に賭けてくれたこの世界を全力で守る。だから、俺と一緒に戦ってくれないか?」
ユミリナは緊張しきった顔を少しずつ綻ばせながら、一拍おいて答えをくれた。
「はい。よろしくお願いします。ハルト君」
ユミリナはその可愛らしい顔を微笑まして、そう答えてくれた。