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第1章 閑話 バレンタインの日らしいです…

バレンタイン1日遅れて申し訳ないです。

諸々の事情で書く時間がありませんでした。

1日遅れではありますが、バレンタインの1日です。

この話は時期的には、第1章23話付近です。決戦になる前です。

多少の時系列が噛み合わないのは許してください。ほぼノリで作ってます!

ストーリーとは一切の関連性はございません!予め御了承の上でお読みください!


「ハルト! これ……受け取ってくれるよね……?」

「ハルト君! 私のは……ダメですか……?」


 右を見れば、頬を赤らめて俺を見つめる美人、エルン。

 左を見れば、不安そうな顔で俺の表情を伺う可憐な娘、ユミリナ。


 わぁお! 傍から見れば両手に花だね!


「貰ってやりなよ、ハルト。沢山の女を侍らすのも男の甲斐性だよ」

「マルガレータはそんな事言ってないで、ジャックに渡しに行けよ」

「私はいいの! どうせ、彼は私の想いになんて……」


 一人でぶつぶつ言いだしたマルガレータはほっといて……。

 両手にチョコを持った女性二人は俺を見つめる。

 なんでこうなったかの経緯を聞いてもらいたい。切実に願う……。

 それは遡ること三日前。


「今って何月だっけ?」

「何言ってるんですかハルト君。今は二月ですよ」

「二月……。バレンタインデーか……」


 俺は思い出したくもない記憶を思い出す。

 俺には妹がいる。毎年バレンタインデーになると、妹の指示で大量にチョコを作らされるのだ。

 しかも大体毎年徹夜で作らされる。

 給料請求してもいいですかね……? 


「ハルト、そのばれん……たいん?って何?」

「あぁ、俺の故郷で毎年行われるイベントみたいなものなんだ。友達や愛する者にチョコをあげるんだ」

  

 エルンの問いに答える。意味としては間違ってないはずだ。多分!


「なるほど……。そのチョコというものは作れるの?」

「材料さえあれば作れるとは思うけど……」


 俺はまだこの世界でカカオを見ていない。

 カカオの使い道なんてチョコ位しか思いつかないし、見つけるのは骨が折れそうだ。


「チョコを作るにはカカオっていう豆が必要なんだ。まずはそれを見つけなければならない」

「それが材料になるのですね!」

「そうだ。カカオが見つからなければ、チョコは作れない」

「分かりました。では私達も探して参ります」


 そう言ってユミリナはエルンを引っ張って何処かに行ってしまった。

 そんなにチョコが食べたいのだろうか? 

 女の子はよくわからないなぁ……。


「ハルト、次は何をやらかすつもりなんだ?」

「あ、なんだ、ジャックか」

「なんだとはなんだ!」


 ジャックは俺の態度が気に食わなかったのか、ずっとぶつぶつ言ってた。

 いい歳した大人が何やってんだか……。


「今からチョコを作るんだよ。その材料調達しに行くだけだ」

「何だチョコか。材料と言えばカカオだろ? それなら調味料として市場に売ってあるぞ」

「調味料として売ってあるのかよ。てか、なんでジャックはチョコの事知ってるのさ」

「い、いや昔ちょっとな」

「ふ~ん」


 この世界で俺以外にチョコを知っている人がいるのか。

 まさか、その人もこの世界に転生してきてたりして……。ないか。


「じゃ、とりあえず、カカオとユミリナ達を回収してくるわ」

「何もやらかすなよ」

「やらかさないよ!!」


 俺はジャックに大声で返事を返してから、市場に向かう。

 市場には、必死な形相で商人に詰め寄る二人の美女が居た。


「カカオは! カカオは置いてないんですか!?」

「だから、私の所では取り扱ってないと言ってるんだ!」


 商人は、怒ったような、それでいて困ったような顔で応えていた。

 ユミリナが信じられないといった様子で嘆いていた。

 エルンはユミリナを宥めながら、頻りに商人に謝っていた。


「おい、その辺にしておけ。カカオは市場の何処かにあるだろ」


 俺はユミリナにそう声をかけながら、商人から引き剥がす。


「そうなんですか?」

「ジャックが市場にあるって言ってたから間違いないと思うぞ」

「本当ですか! 良かったです!」

「だから言ったじゃない、絶対他の所にあるって。もう……恥ずかしかったぁ……」


 エルンは顔を手で覆いながらそう言っていた。

 かなり長い時間、あの商人相手に言い合いをしてたらしい。


「なんで、ユミリナはそんなに必死なの?」

「っへ!? べ、別に深い意味はないで……あ! そうです! チョコを食べてみたいのです!」


 ユミリナは目を輝かせながらそう言う。言いかけた内容は気にしないでおく。

 それが優しさだ。だろう? 諸君よ。


「とりあえずカカオ探そっか。調味料として使われているらしいから、それっぽい所にあるんじゃないかな?」

「それならこっちだよ、早く行こ!」


 俺達は市場の中でも比較的小さい店に入る。

 店には棚がいくつもあり、それぞれに大きさの違う瓶が置いてあった。

 瓶の中には粉?が入っていた。


「これ、全部調味料か?」

「そうじゃよ」

「うおっ!」


 俺の後ろに急にお婆さんが現れた。

 俺の腰くらいしかない低い身長を伸ばし、黒い粉が入った瓶と、黒い豆の入った瓶を取った。


「お主達が探しているものはこの辺りじゃろう」

「あ、ありがとうございます。あれ? 俺達カカオ探してるって言いましたっけ?」

「変に勘ぐりを入れる子供(ガキ)は嫌いだよ」

「へ?」


 そう言ってお婆さんは店の奥に消えていった。

 俺の頭の中には疑問符が飛び交ったが、後ろに構えた二人がカカオを見て目を輝かせて見つめてきたので、疑問はゴミ箱にぶん投げて家に帰った。


 そして、二人の目の前でチョコを作り、振舞ったところ、おいしいと評判になり、皆に作り方を教える羽目になった。


 そして、それから三日後の今に至るわけだ。


「ハルトのに比べたら美味しくないかもしれないけど」

「私達的には上手にできたんですよ?」


 二人に迫られて断ろうにも断れない雰囲気になってきた。

 言えない……。この雰囲気では言えない……。

 俺が……チョコが苦手で食べられないなんて。


「さぁ!」

「ハルト君!」


 俺は目の前に迫る二つのチョコと、輝く瞳に受け取りそうになる。

 どうせ食べられないのだから、二人にこのチョコは食べてもらいたい。

 

 そうだ! 


「二人共! バレンタインデーには義理チョコっていって、友達同士で交換するチョコもあるんだ! ユミリナとエルンで交換し合ったらどうかな?」

「そんなのもあるんだ。でもいいよ、私のはハルトにあげる」

「そうですね、私のはエルンさんに差し上げてもよろしいんですが、今回のはハルト君に召しあがって頂きたいので、義理チョコとして受け取っては貰えませんか?」

「はい……」

 

 俺は諦めて二人のチョコを受け取った。

 受け取ったら二人が跳ねながら喜んでいたから、まぁ良かったかな。

 部屋でゆっくりと覚悟を決めて食べよ……。


「じゃあハルト、私達は修行に行くね」

「チョコの感想待ってますね」

「あぁ、ありがとう。チョコありがたく貰うよ」


 俺の言葉を聞いた二人は手を振って走り出す。

 ……と思ったらエルンが立ち止まって俺の方に振り返って叫ぶ。


「また! 来年も作るね!」


 そう言うと、恥ずかしそうにしながら全速力で走っていった。

 ユミリナは数秒固まった後、何か決心した顔をして俺の方に歩いてくる。

 そして……


「そのチョコ、義理チョコではないです……」


 そう耳元で呟いたユミリナは顔を赤くしながら、エルンの後を追っていった。

 俺はその場で白い灰になって、空を飛んで行った……。



「ハルト、そこで何をしている」

「あ、ドランさん、お疲れ様です」


 ドランさんが片手をあげながら俺の方に歩いてくる。

 彼の右手には何やら箱が握られていた。

 

「ドランさん? その箱は?」

「あぁ、今日はお前がバレンタインデーと言っていただろう。だから、チョコを作って来たんだ」

「ちょ……チョコですか?」


 そう聞き返すとドランさんはモジモジしだした。

 待って……キャラに合ってない! キモイぞ! このドランさん!


「お前の作ったものに敵うか分からないが、受け取っては貰えないか?」

「い、いやえーと……」

「受け取っては貰えないか?」

「は、はい!」


 ドランさんの迫力に負け、思わず受け取ってしまった……。

 

「さぁ、今食べてみてくれ」

「い、今ですか?」


 ドランさんは頷く。

 その無言の圧力に押され、箱を開け、チョコを一つ手に取る。

 それは俺が作ったものよりも明らかに旨そうなそのチョコは、俺でも涎が出そうになる。


「いただきます」

 

 俺は恐る恐る口にチョコを放り込む。

 それは甘すぎず、苦すぎず、日本のプロ顔負けレベルの出来だった。

 そして何より、食べる事が出来たのだ。


「う、うまい……」

「当たり前だ。お前の事を考え、この俺が作ったのだからな」


 ドランさんは胸を張ってそう答えた。

 たわわな果実はその胸には無く、在ったのは鍛え上げられた素晴らしい胸筋だった。


「ハルト! 俺のチョコを受け取ってくれ!」


 そう言いながら、ドアを勢いよく開いてサンが俺の部屋に入ってくる。


「なんだドラン。お前も居たのか」

「居たら悪いのか」

「そんな事は言ってないだろう!?」


 何やら二人で言い合っている。

 俺はそれを呆れながら見ていると、またドアが勢いよく開けられる。


「ハルト! 俺がチョコを持ってきてやったぞ!」


 次はジャックだった。その手には少し大きめの箱が……。


「何故皆が居る?」


 その後ろからフレデリクが顔を覗かせていた。

 

「何故お前らが来るんだ」

「お前こそだドラン。今は俺の弟子だ。手を出すなよ」

「言っている事の意味が理解できない」

「サンもドランも弟子と師匠って関係なんだから今は遠慮してよ」

「ジャックとフレデリクは何故来たんだ!」

「俺は魔法をこいつに教えたいだけ」

「俺は闘技場でやり合った仲だからな! 気に入ってんだこいつ」

「俺が最初だったんだ。帰れお前ら」

「ケチだねードランは。そんなに久しぶりの愛弟子に会えたのが嬉しいのかい? おいおい?」

「黙れ」

 

 そう言ってドランの拳がジャックの顔にめり込む。

 ジャックは小さい悲鳴をあげるが、すぐに調子を取り戻した。

 そして、また四人で不毛な争いを続けていた。

 俺は呆れて見ているしかできなかった。

 

「ならば、ハルトに決めてもらおう」

「それいいな!」

「おいハルト」

「俺達四人のチョコのどれを受け取る?」


 とか言って四人並んでチョコを差し出す。

 わーーいモテモテだー。嬉しーー。これなんてギャルゲ?


「…………ってやかましいわ! 男にモテても嬉しくねーわ! 全員帰れ!」


 俺がそう怒鳴ると、全員トボトボ歩いて、俺の部屋を出て行った。

 

 静かになった部屋に少しの寂しさを覚えつつ、俺のバレンタインは終わりを告げた。



 ……ユミリナとエルンのチョコは、凄い旨かったです。


次回の更新は3月になると思います。

長い時間待たせてしまうのは、申し訳ないですが、許してください、なんでしま(ry


レビューや感想、ブクマありがとうございます!

先日1日で1000pvを超えた日があって、とても嬉しく思いました。この調子でもっと、この作品を読んで頂けたら嬉しい限りです。

今後もよろしくお願いします!

by作者 星空天

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