第1章 第23話 開戦らしいです…
タイトルを変更しました。
変えたからといって、特にこれといって何も無いですが……。
微妙な変更です。ストーリーの進み自体は変わりませんし、当初考えていた構成との変更点もありません。
今後はあーこのタイトルなのかーくらいの認識で大丈夫です!
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今後とも私のくだらない夢物語にお付き合い下さい。
「貴方達は? この店の店主ですか?」
男と女は組んでいた腕をほどいて、男は頷いた。
「如何にも。俺はここの店主、フレデリクだ。横に居るのは俺の妻のロアナだ」
「フレデリクとロアナって……まさか!?」
「え? どうしたエルン?」
エルンが驚いた顔をしている。可愛い顔が台無しだ。
フレデリクとロアナは、クスクスと笑っていた。
ユミリナも俺も状況に付いて行けず、困惑していた。
「ハルトは知らないの? サンさんと一緒に居て知らないの!? この二人はSSランク冒険者の『賢者』フレデリクと『鬼拳』ロアナだよ!」
「てことは……あんた達がアステリズムの行方不明の二人か!」
「せいか~い! あんたがサンの弟子だね? 話は聞いている、武器防具の新調だね。ちょっと待ってな」
そう言ってロアナさんは奥に行ってしまった。
フレデリクは何も喋らず、ただそこに鎮座していた。
「待たせたね! あんた達用に既に準備していたんだよ! これを使いな!」
そう言いながら出てきたロアナは、俺らの前に置かれた机の上に武器や防具を広げだした。
これはハルト、これはエルンとか独り言を言いながら、黙々と並べる。手際は非常にいい。
全て並べ終えたロアナは「ふぅ……」と息を吐きながら、俺らに顔を向けた。
「これがあんた達の新装備だよ! 金はサンに貰っているだろう? それだけで結構だよ」
俺達はロアナにサンから預かったお金を渡し、早速自分の装備に手を伸ばした。
俺の新装備は一見皮装備に見えなくもないその見た目は、とても安そうに見える。
だが、皮はあくまで外側のみ。内側には、攻撃を通す気は全くないことが、痛いほど伝わるほど加工されていた。
軽量化を極限までしつつ、それなのに、防御力は結構あった。
加工に使われていた金属は聞いたこともない金属だった。
アドミット鉱石。この世界で二番目に硬く、そして一番重い鉱石らしい。それを人が着用して動けるようにするには、かなりの職人じゃなければできないらしい。
それを聞いただけで、普通の装備じゃない事は分かった。
エルンの装備は細身の長剣と、赤いスケイルアーマーだった。
細身の長剣を構えたエルンは綺麗だった。
この剣もアドミット鉱石らしい。武器屋の照明の光を反射して光るその剣は、エルンによく似合う。
エルン曰く、「動きやすい! 凄いよこの剣!」とか言って振り回していた。危ないね、うん。
スケイルアーマーは、Sランク討伐対象の竜、赤竜の鱗で作られた物のようだ。
赤に彩られたその鎧は、エルンの髪の色と合いとても映える。
赤竜の鱗は、かなり硬いらしく防御力はずば抜けて高いらしい。
本人の実力と相まって、ダメージを受ける事はほぼないだろう。
ユミリナの装備はその百五十センチしかない身の丈にばっちり合った小さな杖と、白いローブだった。
杖の方は体の魔素の流れを早くする効果付きだとか。
なんでこの杖にはこの効果を付与できるのに、普通に魔法で開発しないのか……。
案外この世界の人間は、応用の利かない人間ばかりなのか……。
ローブはかなりの高性能だった。
自分の魔素を自動で吸い、攻撃された場所に魔法障壁を展開する。
強度こそあまりないが、それでも不意打ちには確実に対処できる。俺が欲しいくらいだ。
「これは凄いな。どれも非の打ち所がない装備ばかりだ」
「えぇ。これなら負ける気がしません」
「私もさらに強くなった気がするよ」
俺達は自分の装備の感覚を確かめながら感想を漏らす。
「さぁその辺にして、そろそろサンの所に戻るよ。明日に備えて、休まなきゃね」
「「「はい!」」」
俺達はサンの家に帰った。何故かフレデリクとロアナも付いて来たけど。
家の中で、サンとジャック、マルガレータ、そして懐かしの人物がいた。
「久しぶりだな、ハルト。どうだ? あれから強くなったか?」
「ドランさん……! 来てたんですか?」
「あぁ。アステリズム総出で戦うからな。引退はしたが、まだ腕は鈍ってない」
「俺もあれからもっと強くなりました。この戦いでの俺の活躍に期待しててください」
「あぁ、そうしよう」
俺とドランさんが再会を済ませたのを見計らって、サンが口を開く。
「もう明日には魔物の軍勢は到着するだろう。集まった冒険者の数は約千人。対して相手の戦力は、万単位だと聞く」
「うぇ!? つまり十倍以上の戦力差があるのか……」
俺は驚いて変な声を上げてしまった。
アステリズムのメンバーや、何故かエルンやユミリナまで平然としている。
なんか恥ずかしい……。
「まぁハルトは置いといて」
「置いとかれた!?」
「……。とりあえず、敵との戦力差は俺達アステリズムのメンバーで埋める。ジャック、フレデリク、俺は神を一人で抑える。残りのメンバーは魔人と高ランク帯の魔物を頼む。ハルト達は他の冒険者よりかなり強い。冒険者で対処できない魔物はお前らが殺れ」
各々で自分の役割を把握し、了解する。
俺はやはり神とは戦えないらしい。
「明日に備えて、各々体を休めておけ。今日はこれで解散だ」
その言葉を最後に、俺達はそれぞれの宿や、家に帰った。
俺はサン宅の自分のベッドに入ると、すぐに眠りについた。
「見えたな」
「あぁ。すげぇな、辺り一面魔物だらけじゃねえか」
俺らは遂に魔物の軍勢と相まみえた。
俺らの後ろには、他の冒険者が構えてはいるが、敵の数を改めて自分の目で確認して、逃げるものが大勢いた。
俺らはそれを咎めない。冒険者だって人間だ。
残ったのは八百人程度か。
「よく残ってくれた。お前達はガルガンチュアに生きている全ての人間の希望だ」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
サンの演説と共に、大きな歓声が上がる。
それに対抗するかのように、魔物の咆哮が響く。
「俺から言う事は二つ。目の前にいる魔物は殺せ。そして死ぬな」
それは、サンの心からの願いだった。
こんな馬鹿げた戦いで死んでいい人間がいるわけがない。
俺らの意思が固まったところで、声が響いた。
「これはこれは、雑魚が集まって何用だ? もしや、止めに来たなどと馬鹿な事をしに来たわけじゃあるまい?」
「馬鹿が。そのまさかだよ」
その声にサンが答える。
声の主は見えない。魔法で声を飛ばしているのだろうか?
「かっかっかっ、威勢のいい人間だ。お前らは皆殺しだ。我に逆らおうとした事を後悔させてやろう!」
その声と共に、空に三体の白い羽根の生えた生物が姿を現した。
間違いなく神だろう。
小柄の奴と、好青年っぽい奴が真ん中の神を挟むように飛んでいる。
真ん中で偉そうな感じで飛んでいるのが、おそらく声の主だろう。
見た目は好々爺のような風貌だが、纏っている雰囲気は邪悪そのものだ。
「ふむ、あまりに戦力差があるようだな。ハンデだ、こちらの魔物の数を減らそう」
そう言って、声の主は自分の軍の向けて雷を落とした。
魔物の断末魔が辺りに響く。
思わず耳を塞いでしまうほどだ。
雷が落ちた後は軽いクレーターを作り、落ち着いた。
「魔物共を半分ほど減らしておいた。ハンデはこのくらいでいいか?」
そう余裕そうな声で喋る奴に向けて、一つの魔法が飛ぶ。
それは左右の神の魔法障壁に阻まれ、散った。
魔法を放ったのであろうジャックが怒りを震わせる。
「雑魚? 皆殺し? ハンデ? 舐められたものだな人類は」
「そうだな」
「サン。もういいか? そろそろ我慢の限界だ」
そう言ったジャックは、自分の魔素を爆発させた。
その余波で、近くに居た冒険者や魔物は吹き飛ぶ。
地面なんてさっきの雷よりドでかいクレーターを作っていた。
「はぁ……。まぁあそこまで言われちゃ我慢はできない」
「その通り」
「それじゃ、サクッと殺りますか」
そう言ったサンとジャックは空を飛ぶ。
二人は俺より先に空を飛ぶ魔法を習得していた。
アステリズムのメンバーは皆使えるんだとか。流石だね。
「覚悟しろ、雑魚。俺の名はジャック! SSランク冒険者で人類の希望『アステリズム』のリーダーだ!」
「同じく、『アステリズム』の団員、SSランク冒険者サンだ」
「ほう、お前達が人類の希望か。そんなものは簡単に崩れ去る」
「それはどうかな?」
そう言ったジャックの姿は消えた。
次の瞬間、余裕そうな顔をしていた神共の顔が、苦悶の表情へと変わる。
「いつに間に我らを……」
「俺に一秒時間を与えれば、お前らなど百回は斬れる」
「舐めたことを! 人間風情が!」
そう言ってジャックと神は姿を消した。それと同時に、サンとフレデリクの姿も消えた。
場所を変えたのだろう。ここは完全に俺達に任せたようだ。
「それじゃ俺らもいくか」
「そうですね。見たところ脅威そうな魔物は数体ですし」
「早く新装備も試したいしね!」
俺達は俺達の戦いを始めた。
この時俺は大きな勘違いをしていた。
俺には心強い仲間もアステリズムも居る。
確実に勝てる。
それが全ての間違いだった。
そのことには、俺は、俺達は気づかない。




