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第1章 第18話 昇格試験(中編)らしいです…

 

 通路の奥から火を纏った蜥蜴(トカゲ)が出てくる。

 大きさもやばい。さっきのレオトークスよりもデカい。

 普通の冒険者なら負けるのではないのだろうか。おそらくランクで見たらA相当はあるだろう。 

 

「次の相手はAランク級討伐対象のサラマンダーだぁあ! 流石のハルトもこいつには苦戦するかー? いや、してほしいぃぃ!」


 おい実況。私情挟むなよ。苦戦してほしいってなんだよ!

 

「さぁ! あいつの余裕顔を止めてくれ! サラマンダーぁぁあ!!」


「やっと本番って感じだな。加速(ブースト)!」


 俺は加速(ブースト)をかけてから、サラマンダーに斬りかかる。

 俺の天日の刃はサラマンダーの硬い鱗に弾かれた。


「くそ! なんて硬さだ。加速(ブースト)しても斬れないのか」


「GRAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 サラマンダーが口から火の塊を吐く。

 俺は魔法障壁で防ぎながら距離を取った。

 俺の世界のサラマンダーは確か、火を司る精霊だったか。火の魔法なら俺はアンチ魔法が使えるから何とかなるか。

 魔法障壁だけじゃ防げないのか、部分的にヒビができている。アンチ魔法は魔素の制御が難しいから、失敗する可能性がある。

 早く終わらせたいが、次はあの硬い鱗が邪魔をする。


「おおっとぉ! ハルトが動かないぞぉ!!」


 実況の通りだった。俺はひたすら動けずにいた。

 近づいて斬りつけても硬い鱗に阻まれ、距離を取れば魔法で攻められる。

 

「GRAAAAAAA!!」


 サラマンダーは勝ちを確信していた。

 目の前にいる人間は自分の脅威にならない、そう感じていた。

 その驕りが自らの身を滅ぼすことを知らない。


「魔装」


 イメージを込めた魔素が魔力に変わり、そして俺の体を守る鎧に変わる。

 それと同時に俺の体の魔素の流れが速くなる。魔法障壁の強度も今までの二倍はあるだろう。

 言わずもがな身体能力は爆発的に上がる。

  

「さぁここからが本番だ」


 俺は天日で斬りかかる。サラマンダーは避ける素振りも見せない。

 馬鹿な奴だ。

 俺はいとも簡単に鱗の上からサラマンダーの尻尾を切断する。今まで弾かれていたのが嘘のようだ。


「GGRAAA!?」


 サラマンダーは自分の尻尾が切断されたことが信じれないのだろう。驚きの声を上げている。

 俺はそんなことは気にもせずに斬りつけていく。俺が剣を振る度にサラマンダーの鱗が剥げ、傷が増えていく。

 身の危険を感じたサラマンダーが俺に噛みついてくるが、俺は剣で弾きながらカウンターを決める。


「GRAAA……」


「可哀そうだが、そろそろ決めさせてもらうぞ」


「GRAAAA!!!!」


 サラマンダーが最後の一撃を振り絞り、俺に特大の火の玉をを吐く。

 俺は少し魔力を込めた魔法障壁で防ぐ。少しヒビが入った。

 ――凄いな。魔装状態で俺の魔法障壁にヒビを入れる事は並大抵の威力では無理だ。

 サラマンダーは持てる力の全てを使い切ったのだろう。自分の四本の足で立つことすら難しいようだ。


「我流剣術 断頭(だんとう)


 俺はサラマンダーの首を刎ねた。

 奴の体はその瞬間力を失い、その場に崩れ落ちる。

 俺は天日に付いた血を落として、鞘に納めた。


「激闘を制したのはハルトだぁぁぁぁ!! この男止まるところを知らないぞぉ!!」


「サラマンダーを……」

「あんな簡単に倒すのか……」

「それよりあいつのあの鎧は何だ? 何も無いところから急に現れたぞ!」


 観客は次々に自分の感想を言いながら困惑の声を上げ続けている。

 そんなことよりも次をだなぁ……。


「俺はこの男がどこまでやれるのか気になってきたぞ! 早速次にいこう! 次の相手はこの闘技場No1のあいつだ!!!」


 その声と共に奥から男が歩いてくる。

 

「――っつ!?」 

 

 俺は奥から漂う殺気に体が硬直した。

 この殺気の持ち主がNo1の人物なのだろう。殺気だけでNo1の実力が本物だと分かる。

 だが、ここでNo1を出すのか? 確か、剣闘士三人と魔物二匹のはず。あと一人いるはずだぞ?

 そんな事を考えていたら、男が舞台に上がる音が聞こえ、それと同時に闘技場全体が歓声に包まれた。

 

「この男こそ最強の剣闘士の名を何年も我が物とし続ける男、『リュシドール』だぁぁ!!」


 男の名はリュシドールというらしい。

 リュシドールは歓声に応えるかのように、自分の剣を空に掲げた。


「お前がハルトか。怪我する前に降参することを勧めるぞ」


「あいにくお前を倒した後にもう一人待ってるらしいのでね。こんな所では終われないかな」


「舐めた口を。お前は俺を倒せない」


「やってみるか?」


「かかってこい」


 俺は最初から加速(ブースト)を発動させて斬りかかる。

 この時点で観客は俺を目で追うことはできないほどの速度だった。

 それをこの男は簡単に受け止めた。

 しかも普通に止めたわけではない。的確に力を流し、カウンターまで決めようとしてきた。

 俺はカウンターをさせないように体を捻って蹴りを入れ、すぐに距離を取った。


「少しはやれるようだな」


「あんただって。でも俺はここで負けるわけにはいかない」


 俺は左手で魔法を形成しながら剣で斬りつける。

 リュシドールはそれを左に飛ぶことで避ける。――逃がすかよ。


炎弾(フレイムボール)!」


 俺の魔法が空中にいるリュシドールに襲い掛かる。


「なっ!!」


 剣で防ごうとしたが間に合わず、そのまま胴体に直撃した。

 服の裾をチリチリと燃やしながら、地面に転がる。


「やったか?」


 動かないでいるリュシドールを見つめながら、俺は待った。


「少し油断したようだ」


「起き上がるのかよ」


 リュシドールは何もなかったかのように起き上がる。

 俺は持っていた剣に力を入れなおして構える。


「今の魔法それなりに魔素使うのに、何もなかったように立たれると腹立つね」


「それはすまない。それより、俺は手を抜かれるのが嫌いだ。さっきの鎧をどうして纏わない。あれを纏ったお前を俺は倒したい」


「あれは俺の奥の手だ。やばい時しか使わねーよ」


「そうか。じゃあお前を本気で殺すとしよう」


 そう言って俺の後ろにリュシドールがいた。

 俺の後ろから振り下ろされる剣をギリギリのところで受け止める。

 あとコンマ数秒遅れていたら、俺は首を刎ねられていた。冷汗が背中を流れる。


「よく止めたな。誉めてやろう」


「何がよく止めたなだよ。本気で殺しに来てんじゃねーか」


「だからそう言っただろう? ここは死んでも文句の言えない場所『闘技場デッドアリーナ』だぞ?」


「なるほどね。油断したらそれはイコール死を意味するわけね」


「そういう訳だ。さぁ早く鎧を纏え」


「手加減はできないぞ? 死ぬなよ。魔装!」


 俺の体の魔素が魔力に変わり、鎧に変わる。

 体に力がみなぎるのが分かる。


「ふっ。それを待っていた」


「いくぞ?」


 俺は光速の剣士の二つ名を持つサンと同程度の速度で、リュシドールの懐に突っ込む。

 リュシドールは反応が遅れるものの、剣を構えて俺の剣を受け止める。

 だが魔装した俺の剣技だ。純粋な速度、パワーも俺の方が上だった。リュシドールを吹っ飛ばし、膝をつかせることに成功する。


「なんて力だ。これがDランクだと? 馬鹿げている!」


「だから、俺は実力だけならAランク認定は貰ったの! もう、さっさと終わらせるよ?」


「こんな楽しい戦いをすぐに終わらせてたまるか! 俺もここからは本気だぁ!」


 俺とリュシドールの激しい打ち合いが始まる。

 驚くことにリュシドールは打ち合いを繰り返すうちに俺の速度に追いつくようになった。まぁパワーはまだまだだけど。

 俺の一撃一撃がリュシドールを追い詰めていく。

 満身創痍の状態のリュシドールだったが、No1のプライドが負ける事を許さないのか、全く倒れる素振りを見せない。

 

「いつまで粘るつもりだ?」


「俺は負けない……。負けた剣闘士は勝ちが無くなる」


「満身創痍だろうが。これ以上はお前を殺してしまう」


「それでもだ!」


「お前は凄いよ。魔装の速度に追いつくなんてよ。これSSランクのサンと作ったんだぜ? あの光速の剣士と」


「はは。どうりで速いし強いわけだ。だがその魔装がなかったら、勝つのは俺だぜ?」


「あぁ。そうだな」


「今回は負けといてやる。次は勝つぞ」


「あぁまたやろう」


 そう言ってリュシドールは気絶した。


「――しょ、勝者はハ、ハルトだぁぁぁ!! まさかの大番狂わせ、リュシドールが負けたぞぉぉ!」


 静まり返った闘技場内に実況の声が木霊する。

 これで残すは後一人となった。

 


 

 




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