第1章 第17話 昇格試験(前編)らしいです…
作者の体調不良や、予定の関係で更新ができずに申し訳ないです。
Twitterの方で体調不良を心配する声いくつも頂けて、すごい幸せな気持ちになりました。
今後の更新頻度は週に3話〜4話ほど出せればいいかなと思っております。
更新が遅れたこと本当に申し訳ないです。今後はなるべく、遅れないように務めますのでよろしくお願いします!
「魔装!」
もう慣れたもので、魔装した状態でならサンと本格的にやり合えるようになった。
魔法と剣技を同時に扱う俺の戦い方は、対人戦においてはほぼ負けないだろう。
だが、あくまで対人戦。
これが対神戦となれば勝敗は分からない。多分いい線はいけると思う。
「剣筋がまだ容易に分かる! それでは先を読まれるぞ!」
「それなら! 加速! 炎弾!」
加速は純粋に強化魔法だ。魔素を体の部位に大量に集めることで、爆発的に身体能力を上げる。
ただし、加減を間違えると体がもたないという諸刃の剣でもある。
俺は魔法で牽制しながら、加速させた剣で攻撃していく。
サンは魔法は魔法障壁で防ぎ、剣は時には受け止め、時には受け流しながらやり過ごす。
おそらく俺の加速した剣を止められるのはサンクラスの相手だけだ。
そんな傲慢な考えも納得させてしまうほどに、魔装と加速の重ね掛けは凄まじい強さを発揮してしまうのだ。
お互いに一歩も引かない戦いを、ただひたすら繰り返すだけである。
「俺相手にここまでやり合えるようになるとはな。そろそろ冒険者のランクを上げに行くのはどうだ? お前まだDランクのままだぞ?」
「え? Aランクの間違いではなくて?」
「あぁ。おそらくドランとの修行でクエスト受けていたのだろうが、それ受注者ドランだぞ」
「え、てことは……」
「ドランのランクが上がってるな」
「な、な、なんだってぇぇぇぇええ!」
という訳でランク上がっていませんでした。
ランクを上げる方法は主に二つだ。
一つはただひたすらにクエストをこなすこと。主にこの方法が一般的だ。
もう一つは昇格試験を受けることだ。これは騎士を引退して冒険者に! なんて人はこっちを受けるらしい。エルンもこの昇格試験でBランクまで上げたらしい。
「昇格試験を受けますかね……」
「それがいいだろう。すぐにSランクくらいまでは上がるだろう」
「それじゃ受けてきますよ」
俺はそのままギルドに向かう。
どのような試験だろうか。なるだけ簡単なのがいいな……。
ギルドに着いた俺は受付に居るお姉さんに話しかける。
昇格試験を受けたい事を伝えると、奥に引っ込んでいった。
それと入れ替わりで奥からおっさんが出てきた。
「お前か、昇格試験を受けたいと言っている奴は」
「そうです。一気にSランクまで上げたいんですけど」
「ほう、相当な命知らずのようだな。Sランクの試験は現役Sランクとの模擬戦だ。準備が整うまで待っててくれ」
「分かった」
俺はおとなしくギルドの中で待つことにした。
受付を済ませてから三十分経った頃にまたおっさんが出てきた。
「準備が完了した。案内するから付いてこい」
「分かりました」
俺はおっさんに付いて少し歩いたところに、まるで地球にある闘技場のような、コロッセオのような建物が見えた。
中からは歓声や悲鳴、罵声など様々な声が聞こえる。
おっさんは闘技場の前で足を止めた。
「お前にはここで雇われている剣闘士三人と飼われている魔物二体と戦ってもらう。全ての試合で勝ちぬいたならば、Sランク昇格を認めよう」
「それが試験ですか?」
「そうだ。ここは腕に自信を持つものが集う闘技場『デッドアリーナ』だ」
「デッドアリーナ……」
直訳で死の闘技場か……。魔装して勝てればいいが。
「受け付けは済ませてある。あそこにいる女性に試験だと言えばすぐに始まるはずだ」
そう言っておっさんは闘技場の入り口で受付をしている女性の方を向いた。
俺はおっさんにお礼を述べてから、受付へと足を運ぶ。
受付の女性は俺に気付くとニコッと笑って仕事を始める。
「デッドアリーナへようこそ! 観戦ですか? それとも戦いに来た方ですか? その場合命の保証はできませんので、自己責任でお願いします」
「ギルドの試験で来たんだが……」
「あー! ハルト様でしたか。話は伺っております。準備をしますので、控室でお待ちください」
俺は闘技場の控室に案内された。
そこには見るからに剣闘士! って人達が沢山いたが、その中でも一人だけとてつもない存在感を放つ奴がいた。
仮面を被って顔を隠し、鎧などは装備せずに剣一本しか持っていない。
だが、他にどれだけ強そうな装備をつけている奴が現れても、そいつには敵わないだろう。
例えるなら、サンやドランと同格、いやそれ以上の存在感だった。
「ハルト様準備ができました。こちらへどうぞ」
さっきの受付の女性が俺を呼びに来た。
俺は通路を抜けて、闘技場の舞台へと進む。
「レディース&ジェントルマン! 本日のビックイベントだ! 今舞台へと上がった人物はDランク冒険者ハルト! Sランクへの昇格試験を受けに来たようだ!」
「Dランクだぁぁ? 舐めてると死ぬぞ小僧!」
「こんなの見世物にもならないわ!」
「いきなりSランクは無理だろ! ギャハハハ!」
俺の紹介がアナウンスされた瞬間野次が飛び交うようになる。
Dランクで闘技場に来るのはバカな行為らしい。
野次は止まることを知らず、観客全員が騒ぎ出す始末。
少し黙らせるか。なんかムカつくし。
「早く始めてくれ。最初はどいつだ?」
「おおっとー! ハルトはやる気に満ちているぞ! それでは登場してもらおう! 最初はこいつだ!」
実況の叫びと同時に俺と逆の通路から、ライオンのような見た目の魔物が現れる。
牙と爪の主張が凄い。体の部分で牙と爪だけ異常に進化している。
俺の知るライオンと比べると、全長はおそらく二倍、牙と爪に関しては五倍はあるだろう。
「我らがデッドアリーナで剣闘士共を何人もその強靭な牙と爪で屠ってきた魔物、『レオトークス』だぁあ!」
「グガァァルオォォォ!!」
「さっさと決めさせてもらうぞ。我流剣術 虎振!」
俺は一瞬でレオトークスの首を落とした。僅か二秒での出来事だ。
サンとの魔装の実験のついでに剣術の修行もしていたのだが、俺は格段に強くなっている。
「……お、おぉぉぉ! 気が付いたらレオトークスの首が落ちているぞぉぉ!」
「何をしたんだあいつ……」
「Dランクなんて嘘なんじゃないの?」
「お前見えたか? 今目で追えなかったぞ」
「あぁ俺もだ」
実況も野次も困惑の声を上げている。
自惚れじゃないが、今のを目で追えた奴は相当できる奴だろう。
レオトークスに関しては、攻撃する前に首刎ねたしな。あの魔物が俺を見失ったのなら、ここの観客のほとんどは見えてすらないだろう。
「さぁ次を頼む。こいつより強いのがいい」
「そ、それでは次にいってみよう! 次の相手はデッドアリーナではNo2の実力を誇る剣闘士『ファーティス』だぁ!!」
「俺がファーティスだぁぁ!」
そう言って出てきた男はまるで世紀末の下っ端のような恰好をしていた。
見た感じ弱そうだけど、一応上から二番目だし油断せずにいこ。
「はっはっはっ! Dランクの雑魚が俺の相手にもならねえぜ! さっきはどんなトリックを使ったが知らないが、俺には通用しないぜ!」
そう言ってファーティスは槍を構える。
こいつは槍使いか。俺の間合いに入れば余裕だな。
同じ槍使いのウラエラスと比べたら雲泥の差だ。
「俺もさっさと終わらせたいんでな。少し本気でいくぞ」
「少し本気だぁ? 舐めやがって……。これでもくらえ!」
ファーティスが突きを繰り返す。確かに腕はいい。俺が避けにくい場所を的確に突いてくる。
サンの元で修行する前の俺なら負けてかもなこれは。
だが、毎日光速の剣士の攻撃を受けてるんだ。このくらいの速度の突きなら簡単に避けられる。
「はぁ……はぁ……何故当たらねぇ……。俺の突きを避ける奴がDランクに居るわけが……」
「まぁ実力だけならAランク判定貰ってるしな。それじゃ終わらすかな」
「なっ!」
俺は天日の剣の腹でファーティスをぶっ飛ばした。
舞台から落ち、そのまま壁にぶつかって気を失った。
「余裕でファーティスを倒したぁぁあ! 一体何者なんだこの男はぁ!!」
「いいからさっさと次出せよ」
「さ、三番目の相手は魔物! デッドアリーナの所有する魔物の中で一番の勝数を誇るこいつだぁぁ!」
その声と共に通路の奥から、バカでかい火を纏った蜥蜴が出てきた。




