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第1章 第13話 vs小竜らしいです…

 

「お前の師匠になる予定のサンだ。よろしくな」


サンさんはベッドに横たわる俺に向かって、再度自己紹介をした。あの斬り合いの後、気を失った俺を担いで、自分の家まで運んでくれたようだ。


「お前の本気の剣を見るために襲ったわけだが……まず一言で言えば弱い。踏み込みの甘さ、速さ、思考判断、まだまだな点を挙げるとキリがない」


 俺は何も言い返せないまま、話を聞いていた。

 負けたのだ。手も足も出ずに完全な敗北を味わった。ドランさんの時はギリギリまで追い込むことに成功したが、今回は何もできなかった……いや、何もさせてもらえなかったの方が正しいだろう。


「師匠になるのに特に問題があるわけではない。だが、お前に試練を与えようと思う。単独でのドラゴン討伐だ。お前には連れが二人いたようだが、彼女達はお前より遥かに弱い。彼女達は今回は留守番だ。異論はあるか?」


「二人は今どこに?」


「今あの二人は俺の仲間に鍛えるように言ってある。身の安全は保障しよう。お前が試練を終えるまでは、会わせるつもりはない。甘えは捨てろ。死ぬ気で試練をこなしてこい」

 

 サンさんは淡々と話す。俺に拒否権は無いみたいだ。断る理由も無いし、別に問題はないのだが、もう少し相談をさせてほしかったな。


「討伐対象のドラゴンの話を伺っても?」


「あぁ問題ない。討伐対象はドラゴンの中でも一番弱い小竜(リトルドラゴン)だ。ギルドのランクで表すならAランク相当ってところだ。場所は竜の谷、ここから南に行った所にある場所だ」


「分かりました。それでは早速行かせてもらいます」


「分かった。準備は怠るなよ」


 俺は頷いて、サンさんの元を去った。

 

 最低限の準備を街で済まし竜の谷へと向かう。


 小竜について調べたが、ドラゴンの中で一番弱いと言われていても、大きさは小さい個体で、10メートルはあるみたいだ。数十年前には、小竜に街が滅ぼされる事件もあったらしい。

 ――――何事もなく終わればいいが……。


 竜の谷へ行くついでに、道中で修行しながら行くか。ドラゴンを相手にするなら、空中戦の技術は必須だろう。

 今回は剣術と魔法を組み合わせたほうがいいのかもしれない。浮遊魔法創るか。


 俺は自分が空を飛ぶイメージをしながら全身に魔素を行き渡らせる。だが空は飛べない。


「なんでだ? イメージのコツは掴んでたはずなんだけどな」


 俺は再度先ほどど同じ動作を繰り返すが、やはり成功はしない。

 この世界の魔法はイメージが大事らしい。結局自分が飛べるイメージが鮮明じゃないといけないのだろう。空を飛んだことの無い俺には無理な相談だな。


「空は諦めるか。もっと簡単に魔法が使えたらいいんだけどな」


魔法は一度発動できれば、後はゲートの時みたいに魔法の名称を言えば、体中の魔素が勝手に発動してくれる。つまり最初が肝心なのだ。

 俺は今の所三つの魔法を使える。一つ目は炎魔法 火弾(ファイアボール)、二つ目は空間魔法 ゲート、三つ目は地形を変えた例の魔法。

 この三つだと戦闘で使えるのは、火弾だけかな。戦闘の度に地形を変えるわけにはいかないし。火弾だけでドラゴン討伐か。剣で戦えれば何とかなりそうだが。

 

 そんなことを考えながら、俺は竜の谷へ急いだ。道中魔物に対して天日で斬りかかったが、問題なく斬れた。斬れない心配をしていたが、そんな心配なんて必要ないと言わんばかりに簡単に斬れた。今までより切れ味は良いようだ。


 結構歩いたところでそこは見えてきた。


「あそこが竜の谷か。広そうだな、迷わないようにしねぇと」


 そこには、日本じゃ間違いなく見れないくらい深い谷と、高い山がそびえ立っていた。

 小竜自体がそんなに珍しい存在な訳ではなく比較的すぐに見つかるし、そこまで戦闘力が高いわけでもないらしいが、このクエストがAランク以上になる理由はこの谷にある。

 この谷は遭難者が非常に多い。そして遭難すればまず死ぬ、ドラゴン族の生息地だしな。ある程度の実力を持つ冒険者が調子にのって、犬死するのを避けるためのランク設定なのだろう。優しいギルドだな。


「お、見つけた。あれが小竜か!」


 そこには体長約8メートル位の竜が居た。俺の存在に気付いてないのだろう。静かに佇んでいる。

 小竜でも貫禄は流石ドラゴンってところだな。存在感が今まで出会ってきた魔物とケタが違う。それでも、魔人やサンさんには敵わないけど……。


「さ、まずは先手必勝だよな! 火弾(ファイアボール)!」


 小竜に向かって巨大な火の玉が飛ぶ。それに伴い、俺の体の魔素がごっそり減る。

 

 火弾が小竜に直撃する、と同時に辺りには爆炎が広がる。

 これで小竜は死んだだろう、あれで生きていたら流石にやばいと思う。


「さ、どうなったかな――――」


 俺は先ほどまで小竜が居たところまで近づき、死体を探した。

 

 ――――ん? 死体が…………無い!? 

 俺はすぐに辺りを警戒する。だがそれらしい気配は地上に無い。――地上に無いのだ。


「くそ、空か!」


 俺は空を見上げる。そこには上からこちらを見下ろし、堂々と空を飛ぶ小竜がそこにいた。


「グギャオオオオォォォォォ」

  

「うっるせ! くそ、空に飛ばれたら下手に攻撃できないじゃないか」


 小竜は拳大の火の玉を俺に向けて放つ。俺はそれを避けながら、あいつを地面に引きずり下ろす方法を考える。

 魔法は効かなかったし、あの威力を耐えられたなら、後は例の魔法を打つしかない。が、あれは使うべきではないだろう。勘だがサンさんは認めてくれなさそう。そんな気がする。

 天日で斬ろうにも、まず届かない。俺が考えている間も小竜の攻撃は止まない。そろそろ避けるのも限界が近づいてきた。体力的にきつい!


「あぁくそ! このままじゃ埒が明かねぇ! まだ開発段階だけど、成功してくれよ……」


 俺は全身に魔素を行き渡らせる。イメージは空を飛ぶ自分だ。よし、イケる!


「フライ!!」


 俺の体は重力に反し、空へと持ち上がる。そのまま、小竜と同じ高度まで上がった。


「よし! 成功だ! これで戦える。覚悟しろよ、トカゲ野郎!」


 小竜は俺の言葉を理解したかのように大声で啼く。火の玉の火力も量も先ほどよりも上がっているようだ。

 俺は火の玉を避けながら、小竜に近づく。


「フライにも段々慣れてきたし、一気に決めるか」

 

 俺は小竜の口に向けて、火弾(ファイアボール)を放つ。奴の火の玉と俺の火弾が奴の口の周りでぶつかり、小爆発を起こす。

  

「グ、グギャアア」


 俺は小竜が動揺している間に一気に距離を詰める。それに気づいた小竜は距離を取ろうとするが、俺はそれを許さない。そこそこの威力の火弾(ファイアボール)を翼に打ち込んだ。


「これで終わりだな」


 バランスを崩した小竜の首を天日で刎ねる。

 先ほどまで小竜だった肉の塊は、血を辺りにまき散らしながら力なく地面に落ちた。


「討伐完了っと」


 小竜の死体から、素材になりそうなところを剥ぎ取る。素材はギルドで高く売れるのだ。


「さ、帰るかな」


 俺が帰ろうと足を踏み出したその瞬間、空から槍が降って来た。


「誰だ!?」


 俺は空を見上げる。そこには白い羽根を背中に生やした生物がいた。見たことの無い見た目だ。間違いなく人間じゃないことは分かる。


「我はウラエラス。お前を殺しに来た」


「ウラエラス? 初対面でいきなり殺されるのはごめんだね。もう少し、語り合ってから殺し合おう」


「お前の素性は知っている。我がお前を殺す理由は邪神復活のため、それだけで十分だ」


「なるほど。お互いに目的の邪魔になる存在なわけね。じゃあ尚更殺されるわけにはいかないな」


 奴が邪神側の神なら負けるわけにはいかない。


 俺は天日を構えた。




 


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