第1章 第12話 新天地で殺し合いらしいです…
一瞬だ。一瞬だったけど、何か別の力が俺に流れた。この悪魔の首を簡単に斬ってしまうくらいの、とてつもない力だ。あれが――神の力。
俺は固唾を呑みながら、自分の両手を見つめる。まだ悪魔の首を斬り落とした感触が両手に残っていた。
そんなことを考えていたら、ユミリナとエルンが走って来た。ユミリナが俺を見て、不思議そうな顔をする。
「は、ハルト君ですか? 何やら容姿が変わられて……」
「え? 容姿?」
「はい。髪の毛が少し伸びてます」
俺は自分の髪の毛を触る。元々そんなに伸びてなかった髪が、今は肩の辺りまで伸びていた。神の力の代償だろうか。神の力で髪が伸びるとか、オヤジギャグかよ!!
「とりあえず、髪はそのうち切るとして、あの悪魔は倒したぞ」
「いや、それは見れば分かるけど、どうやって? あれは魔人だよ? Sランク冒険者でも、パーティー組まなきゃ苦戦するのに……」
「そんなものなのか? 案外あっさり倒せたけど……」
「それが異常なの! なんでわからないかなぁ」
エルンは呆れたような顔をする。ユミリナは苦笑いだ。
でも、今回は神の力が使えたわけだし、所謂チートってやつだ。普通の人とは違う力。それで褒められたり、呆れられたりしても、それは俺の力じゃない。俺は俺自身の力で強くなりたい。
「まずはここを抜けよう。魔人は倒したし、もう危険はほとんどないだろう」
「まぁ、ここの魔物は私達なら、充分相手できるはずだし、あの魔人が予想外だっただけよ」
「魔人は基本山奥に生息してますし、予想するほうが無理ですよ。それより早くガルガンチュアに行きましょう。ドランさんのお知り合いの方を待たせるわけにはいきません」
「そうだな。よし! 行くか!」
その後も何体かの魔物と遭遇したが、特に問題もなく洞窟を抜けた。本当に脅威はあの魔人だけだったのね……。俺達わりと強いかも?
洞窟を抜けてから、何日か歩いた所で、やっと大きな都市が見えてきた。やっと着いたみたいだ
「着いた! 遂に新天地ガルガンチュア!」
「剣の国かぁ。お金はまだ余裕あるし、新しい武器とか買えるかもね」
「じゃあ先に武器から見ていくか。俺もそろそろ買い替えたかったし」
それから大体5分くらい歩いたところに武器屋はあった。大体剣一本の値段が平均金貨5枚か。そこそこするなぁ。普通の冒険者じゃなかなか買えなくないか? Cランクくらいまでは報酬金平均銀貨1枚だし。
「うーん。どれがいいか分からないな」
「今の武器に似たのでもいいし、剣の類で使いやすそうなのでもいいと思うけど……」
「うーん……どれがいいかなぁ」
種類多すぎるよなぁ。でもこうして見ると、色々な種類があるなぁ。日本刀っぽいのもあれば、あれはブロードソードかな? あ、あれはソードブレイカーだ。この世界にもあるんだなあれ。
「ん? この剣なんだか懐かしいような」
俺は前に置かれた剣を手に持つ。何か特別な装飾がされている訳でもなく、値段が高いわけでもない。なんならこの店で一番安いくらいだ。――でも何か引き寄せられる自分がいる。
「なぁ店主、この剣はどうしてこんなに安いんだい?」
「あぁそれか。それはある遺跡で発掘されたんだが、誰が振っても何も斬れやしない。使い物にならんナマクラさ」
「ハルト君……使えない剣を買うのはあまりお勧めはしませんよ?」
「ハルトには私が剣を選んであげるって!」
「いや、俺はこれが欲しい」
俺は目の前の剣を手に取る。何故だか分からないが、俺にはこの剣が俺に会えて、嬉しがっているように感じた。
「店主、この剣を買うよ」
「まさかそれが売れる日が来るとはな。その剣は天日って名前だ。金はいらねぇ、大事にしてやってくれ」
「いいのか?」
「俺にはそいつが喜んでいるように見える。やっと自分の主人に会えたようなそんな輝きだ」
「そうか……分かった。一生大事にするよ」
「おう」
そう言って店主は満面の笑みで送り出してくれた。俺は天日を腰に下げながら店を出る。
「ほんとにそれにしたんだね……」
「戦場で斬れませんでした……! とかはやめて下さいね」
「その時は魔法で戦うさ」
俺は少し笑いながら答える。すると二人は何やら嫌そうな顔をした。なんだよぅ…………。
「ハルト君? 忘れたんですか? 初めて魔法を使って戦われた時のことを……」
「い、いや別に忘れたわけじゃないさ……! ――で、でもさ? 剣が使えないってなったら魔法しかないじゃん?」
「それはそうですけど……」
そう! 何を隠そう俺は初めての魔法戦闘で大いにやらかしたのだ。
――――いやね? 魔法自体の威力は申し分ないんですよ? 逆にありすぎて困ったというか、なんというか……。軽く撃ったつもりなのに、地形が変わったんだもん。しょうがないじゃん!
「あの時は驚いたなぁ。目の前で地形が変わったのなんて生まれて初めて見たよ」
「あれは俺も予想外だったの! 軽くのつもりだったのにさぁ」
「あれで軽くですと、全世界の魔法使いが泣きますよ?」
ユミリナが何言ってるんですか? みたいな顔をしている。なんで俺は責められなならんのだ……。
「魔人もソロで倒すし、魔法は異常に強いし、ほんと規格外ねハルトは……」
エルンは溜め息を吐きながらそんなことを言っている。
「君がハルト君だね?」
「…………!!!」
俺は背後に殺気を感じ、咄嗟に距離をとる。さっき俺が居たところの地面は割れていた。
「誰だ!?」
殺気の持ち主はフードを深くまで被っている為、顔はよく見えないが、おそらく男だろう。この世界にフードがあることに感動したいが今はそれどころじゃない。
「何、少し殺し合いをしよう。大丈夫だ、俺は本気ではやらない」
「舐めやがって……!! 怪我しても知らないからな!」
俺は天日を抜く。構えはない。俺の剣術は自由だ。
「エルン! ユミリナ! 逃げてろ! こいつは俺がやる!」
二人は静かに頷いてこの場を離れる。
「ほう……。悪くない殺気だ」
「そりゃどーも」
男は剣を構えた。俺の目でも分かる。男の構えはとても綺麗だ。どこから攻めていいものか分からない。隙が何一つ無いのだ。
「ん? どうした、来ないのか? ならば俺からいこう」
男は一歩で俺の懐に入る。
「ちょ!! 速……!」
俺は後ろに全力で飛び距離をとる。やばい……。目で追えなかった。今までのどんな奴よりこいつはやばい!!
「逃げてばかりでは勝てないよ? ほら、攻撃しなきゃ?」
男は手をプラプラしながら挑発してくる。完璧に舐められているな……。
「今から本気出すんだよ!」
「それは楽しみだ」
俺は剣を構え直す。正面は間違いなく止められる。目くらましに魔法を使う手もあるが、ここは町の真ん中だ。辺りには何事かと見に来たギャラリーもいる。またこの前のようになると死人が出るのは確実だ。
――――ならあの技しかないだろう。ドランさんの意表をつけたあの技を……!
「行くぞ! うおおぉぉぉおお」
「真正面から突っ込んでくるか。悪くない度胸だ。だが、今回はそれは悪手だ」
「それはどうかな?」
俺は両手で剣を構え直す。そしてその構えから繰り出す技はただ一つ。
「我流剣術 虎振」
俺は右足をおもっいきり踏み切り、全力で剣を振る。助走の勢いも乗り、とてつもない威力を発揮しているその剣は男の頭へと振り下ろされる。ドランさんに褒められた技だ。これならやれる!!
――――俺の剣は無残にも弾かれ、カランと音を立てながら地面を転がる。俺の首筋には男の剣が添えられていた。剣の冷たい感触が気持ち悪かった。
「お前の負けだ。ドランに鍛えられたというから期待していたが、やはりこの程度か」
「へ?」
「あぁ名乗ってなかったな。俺がサンだ。お前の師匠になるようにドランに言われていたが……」
「え、え、え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
男は何とサンさんでした。そりゃ強いわけだ。あぁ本気で死ぬかと思った…………。
緊張の糸が切れた俺は、そこで意識を手放した。
ハルト「皆様!新年明けまして!」
一同「「「おめでとうございます!!!」」」
ユミリナ「2018年のクリスマスから投稿を開始した『異世界で生きていくのはそんなに簡単じゃないらしいです…』を!」
エルン「どうか!今年もよろしくお願いします!」
作者「皆様からの感想やブクマ等も私の励みになっております!執筆とても頑張れます!」
ハルト「とか言いながら、年末はだらけてただろ?」
作者「う、うるさいな!」
ユミリナ「まぁまぁ、そんなわけで!今年も頑張っていくので!」
エルン「私達の冒険譚を!」
一同「どうぞ楽しんでいってください!」




