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第1章 第11話 予想外らしいです…

 

「ハルト! ユミリナが魔法打つよ! 避けて」


「了解!」


 でかいアリにユミリナの魔法が飛んでいく。俺はエルンの指示に従って魔法を避ける。少し大きい火の玉がアリに命中し、アリはパチパチと音を立てながら絶命した。


「連携はそこそこいい感じね」


「エルンの指示のおかげだな」


「はい! エルンさんが状況判断してくれるので、とても戦いやすいです」


 俺らはガルガンチュアに向かって進む。馬車で行こうとしたが、距離が距離で料金が馬鹿にならないのでやめた。まさか三人で白金貨6枚とか、ぼったくりもいいとこだ。


「にしても、魔物が多いな。ここら一帯が砂漠地域のせいか、ほとんど虫みたいなやつばっかだし」


「虫系の魔物はあまりおいしくないですし、早く砂漠から出ましょう」


「この辺は確か、どの国も関わってない無法地帯だよ。騎士団が統括すれば、定期的に魔物狩りするんだけどね」


「なるほど。魔物がやたら多いのはそのせいか」


「でも倒せないわけではないですし、大丈夫ですよ!」


「それもそうだな」


 そんなことを話しながら進んで行くと……洞窟の入り口が見えてきた。なんだかいかにもって感じだなぁこれは。


「この洞窟を抜けて少し行けば、ガルガンチュアだよ」


「え……ここ通るの?」


「一番の近道だし、ここ通らないならあと十日は歩かなきゃだよ?」


「うん。ここ通ろう。そうしよう」


 遠回りはしたくないしな! 正直歩き疲れた。もうかれこれ二週間は歩いてる。なのにあと十日は死ぬ! この世界は交通手段が馬車しかないから不便だよな。将来的には、魔法を駆使して自動車でも造るかな。造れるかな?


「洞窟の中は魔物の住処になってるから、離れないようにね」


「了解」


 俺達は洞窟の中に入る。お、思っていたよりも広いな。はぐれたら迷子確定かなこれは。


「は、ハルト君……よ、横にいてもらえますか?」


「ん?」


 ユミリナが俺の横に来て歩く。


「あ!? ハルト! 私も!」


 おぉ……これが噂に聞く両手に花というやつか。右には赤髪美女、左には金髪美少女。やば、今世界一幸せな男は俺かもしれない。

ゆっくり歩いていたつもりだったけど、ユミリナは俺達の歩く速さについてこられない様子だ。暗いところ苦手なのかな?


「ユミリナ? 暗いところ苦手?」


「いえ、奥からなにやら嫌な気を感じます。何か得体のしれない魔物の気配です」


「魔物? それは避けていけそうか?」


「こっちに近づいてきてます。たぶん私達がここに入ってたことには気づいてるけど、まだ正確な位置が掴めずにいるだけだと思います」


 このまま進んで鉢合わせになるのが一番やばいか? 今の俺で敵わない敵だろうか。普通に勝てると思うんだが。


「エルンどうする? ここで待ち構えるか?」


「今の私達の力量だと負けるほうが難しいと思うけど……でも相手がどんな奴かは知っておきたいわ」


「じゃあ俺が見てくるよ。倒せそうなら倒してくるし。無理そうなら全力で逃げるよ」


「分かった。無理しないでね」


「お願いします、ハルト君」


「おう」




 奥に進むにつれて俺でも感じるくらいに嫌な気が周りに充満しだす。うん、これはやばい。今まで感じたことの無い感覚だ。おそらく俺達全員でかかっても敵わないだろう。俺達との力量差は明確だ。

  




「うわ、マジか。あれはやばいだろ……。あんな魔物見た事ないぞ」


 そこにいたのは俺らの世界でいうところの悪魔だ。山羊のような角に、黒い羽根、先の尖った尻尾。悪魔の周りにはどす黒いオーラが漂っている。


「そこか!」


 悪魔が俺の方を的確に睨み、目が合う。


「お前、人間か? お前が我をここに呼んだのか?」


「何の話をしてるのかは知らないが、お前は何なんだ? そんな禍々しいオーラを放てば、人間は皆警戒するぞ」


「我は誰かに召喚された。ある人間を殺せと命令された」


「ある人間? 誰だそれは……。名前分かるか?」


「ハルトという人間らしい。そいつはかなり強い人間らしいのだ」


 うそーーん。俺じゃん。こいつ俺殺すために召喚されてんじゃん。え、どうする? やり過ごせそうだし、適当に話を合わせて逃げるか。


「ハルト! 離れて!」


 後ろから魔法が飛ぶ。魔法は俺の横をすり抜け、悪魔の顔で破裂する。まぁそこまではいい。問題はそこじゃない。

 今俺の名前を呼んだ事が一番まずい!!


「っぐぅぅ……お、お前がハルトかぁぁあああああ」


 悪魔の周りを黒い渦が漂う。角も伸び、尻尾と羽根もでかくなった。本格的にやばい、完全にキレてる。


「な、なんでこいつハルトの名前を知ってるの? しかもなんか怒ってる!!」


「説明は後だ! 今はこいつの討伐が最優先だ」


 俺は剣を構えて、悪魔に突っ込む。剣はいとも簡単にはじかれる……が俺は再度切り込む。

 この攻め方を俺に教えたのは、紛れもなくドランさんだ。相手に休む隙を与えない。どんな人間も疲れはくる。ただし、相手が人間ならば……の話だ。


「……はぁ……はぁ。なんだよこいつ。ずっと斬ってんのに、隙の一つもない……!」


「ハルト、一回離れて。ユミリナの魔法が打てない!」


「ハルト君! 焦らないで、三人で倒しましょう!」


 勝てない。三人でかかっても倒せない。こいつと斬りあった俺には分かる。だから――。


「エルン、ユミリナを連れて逃げろ。時間は稼ぐ」


「ハルト!? 何言ってんのよ! そんなこと……!」


「大丈夫。俺にはとっておきの技があるから。お前らを巻き込むかもしれないから、今は逃げてくれ」


「分かりました。ハルト君……信じてますから」


「おう」


 ユミリナがエルンを連れてこの場を離れる。ユミリナには感謝しなきゃだな。エルンはまだ騒いでいたが、こいつと戦わせるより、幾分か気持ちは軽い。


「さぁ、第二ラウンドといこうか、悪魔さんよぉ」


「お前はまだやる気か? いい加減諦めろ。お前じゃ勝てない」


「それはどうかな?」


「何?」


 俺は剣を首より後ろに構える。剣を振り回すような、その構えは剣術としては成り立たないだろう。ドランさんと一緒に考えた俺の剣術。それは常識では測れない技だ。普通の人間ならば初見ならばまず防げない。だがこいつには効くかは分からない。ここまでの道中ではそもそも成功していない。成功するかさえ、一か八かだ。


「行くぞ。構えろ、くそ悪魔」


「生意気ぬかすなよ若造が。貴様の剣では我は斬れん!」


「うるせぇ。我流剣術 断頭(だんとう)!!」



 悪魔の首は綺麗に飛んだ。勝負は一瞬だった。






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