第1章 第10話 魔法らしいです…
100pt突破ありがとうございます!
目標まで一歩前進です!
「ん~。変な夢だったにしてははっきりと覚えているな。わりと重要なこと言い残していきやがったぞあいつ」
確か、神様が降りてきてるって話か。――しかも邪神側の。少し厄介なことになったな。五年あると思って、ゆっくり構えていたが、邪神の前に戦うことになるのだろうか。神相手だ、力量の予測もできないし、そもそも今の俺で勝てるか分からない。接触してきたら、間違いなく――――――――死が待っている。
「状況は最悪か。後手後手だなこれは」
とりあえず魔法だな。アポロ二ウスも魔法をなんたら~って言ってたし……。てかなんであいつの声が俺の夢で聞こえてきたんだ? 神だからとか以前に死んでるんだろ。何か特別な方法があるのだろうか? わからないことだらけだ。まずは魔法だ! わからないことは徐々に解決すればいいし。
「おはようございますハルト君。お早いですね」
ユミリナは少しまだ眠たそうにしながら起きてきた。女の子の寝起き姿をゆっくり見れるのもいいもんだな。早起きはなんとやらだ。
「ちょっと変な夢を見てね。エルンは?」
「まだ寝てます。起こしてきましょうか?」
「いや、まだいいよ。それよりユミリナは魔法を使えたよな?」
「あ、はい。基本的な魔法は大体使えますよ。昔、宮廷魔術士に教えてもらいましたし」
「なるほど」
「あ、瞬間移動は魔法ですけど、あれはレトローネ仕込みですので、多分教えても使えないと思います」
まぁ基本的な魔法が分かれば、あとは自力で開発できるか。
「じゃあユミリナ。俺に魔法を教えてくれないか? 今よりもっと強くなりたいんだ」
「教えるのはいいですけど、使えるかは別問題ですよ。数十年修行しても使えない人は、とことん使えませんし」
「あぁそれでも構わない。練習場所は……」
「それならいい場所を知ってますよ。なんとこの宿所有で演習場があるんです」
「マジか、それは助かる」
「オーナーに使用許可取ってきますね。エルンさんは……寝かしておきますか」
「そうだな。よろしく頼む」
よしまずは魔法だ。すぐに習得してやろうではないか!
――――――――――――できない……。あんだけ意気込んどいて、全くできない。魔法の原理は分かったのだ。人間の体には魔法の元となる魔素が全身に満ちている。魔法を使うときはこれらを手の中心に集約、そして頭の中に思い描いたイメージを具現化する。
のだがこの具現化がうまくいかない。魔素の流れが掴めても、具現化の工程でミスすれば、魔法は発動しない。これがまた難しいのだ。
「そ、そんな落ち込むことはないですよ! まだ始めて一時間も経ってないですし」
「でもここまで難しいとは……」
「いや普通は魔素の流れを掴むのに半月はかかりますし、十分才能はありますよ」
そうなのか、才能はあるのか。イメージじゃなくて化学とかを元に考えればいいのに。この世界じゃなんで火は燃えるのかとかは、分かってないんだろうな。
確か火は酸素と結びついて……。なら小さい火種をイメージして、そこに空気中の酸素だけを結合。後は火が勝手に酸素と結びつくから――。
「――――できた……! やっとできたぞ!」
「え!? 嘘……ほんとにできてる。凄い。凄いです! こんなに早く習得した人は初めて見ました。やっぱりハルト君には、才能がありました」
「にしても凄いな。火力も申し分ないし」
「ハルト君! 早く魔素の供給を切ったほうがいいですよ。魔素切れしたらかなりきつい思いをしますよ」
「え? もう魔素は注いでないよ。これはもう完全に独立して燃えてるよ」
「そんな馬鹿な! そんなことできるんですか?」
ユミリナは何か一人で呟きながら色々試している。でもこれ少し改良がいるな。まず俺の魔素は最初しか注がないでいいが、魔法を消せない。何かしらでレジストする必要がある。それに少し試したいこともあるしな。
まずはさっきと同じ要領で火の魔法を作る。だが酸素と結びつける前に指向性を加える。これで真っ直ぐ飛ばせるはずだ。この後に酸素と結びつけて……。よし。これで戦いに使えるかな。俺の科学の知識で魔法を使うと、少しだるいな。いちいち指向性加えるのは、時間がかかるし要実験ってところだな。
「とりあえず、えい!」
俺の放った魔法は狙い通り真っ直ぐ飛んで、的を壊した。……だけにとどまらず、その奥の壁も、ていうかそれ以上に奥の家を跡形もなく消していた。あそこ確か空き家だったよな。あぶね……。
「え!? 何その威力! 今のサイズでその威力って、ハルト君、宮廷魔術士になれますよ! 冒険者のランクで表すとSランクはあります!」
ユミリナが興奮状態で詰め寄ってきた。お、おぉこんなキャラだったか?
「い、いやまだ実験段階だし、そんなに魔素注いでないよ?」
「その威力で実験段階ですか……。完成が恐ろしいですね……」
「まぁあと何回か実験を繰り返して、威力の調整ができるようにはしておくよ。このままじゃ戦いに使いずらいし」
「は、はぁ。まさか教えて一時間でここまでになるとは思ってませんでした。流石ハルト君ですね」
「ありがと。ユミリナのおかげだよ」
ユミリナは俺のお礼を無視して、一人で頭を抱えている。
まぁそんなところで悪いけど、更に頭を抱えてもらおう。イメージで魔法ができるなら成功するはずだ。さっきの火の魔法の練習でコツは掴んだしいけるはず!
あくまで行けるのは俺が知っている場所だけだが、これができれば移動がかなり楽になる。所謂あの某ロボットが使う不思議なドアの劣化版だ。でも多分できると思う。場所のイメージは、ドランさんの酒場でいいか。
「よし。 [ゲート] 」
俺がイメージをそのまま形にする。何もない空間に扉が浮かび上がる。
「何ですか? これは扉?」
「まぁとりあえず開いてみて。そしたら何か分かるから」
「え、あ、はい」
ユミリナが扉に手をかけて開く。扉の先にはドランさんの酒場があった。この魔法は、成功のようだ。
「お、成功したな」
「成功したなじゃないですよ! 何ですかこの魔法! 見た事ないです」
「これは自分の行ったことのある場所までつないでくれる魔法だよ。一応行ったことのない場所しか行けないから、使い勝手は良いとは言えないけど、かなり便利だと思うよ」
「はい。凄いです。私の瞬間移動よりも便利ですよ!」
「あれは酔うからな。これは酔うとかないから、確かに便利だな」
「あ、あの時はしょうがなかったんです! 普段は酔いませんから!」
「ふーん」
「何ですかその目は! もういいです! そろそろ帰りますよ。もうすぐエルンさんが起きる頃ですし」
「分かった。じゃあ早速ゲート使って帰るか」
俺らはゲートを使って宿に帰る。さぁ、魔法も覚えたし、ガルガンチュアに向けて出発だ。
「あれがアポロ二ウスの転生者か」
「流石神の転生者だな。魔法の火力は桁違いだ。これは早急に対応する必要があるな」
「あぁ、邪神復活を妨害されてはたまらんからな」
「じゃあ俺が行きますぜ。あんな奴さっさと片づけてやりますよ」
ハルト達を遥か上空から見つめる三つの影は怪しげな会話を残して、ガルガンチュアに飛び去って行った――――。




