転生した世界で帝国を作りました
序章 現実世界の戦争
鳴り響く銃声音
鳴り響く空襲警報サイレン
耳をふさぎたくなるような大砲の音
地面を大きく揺らす戦車の横隊
空で轟音を響かせる戦闘機
はたまた、銃弾が風を切る音、着弾音
それはまさに地獄絵図であり
現代戦争の恐ろしさを人類は身をもって思い知った
だが、それにも関わらず人類は戦争をやめることはなかった・・・
自ら犯した行いで滅びるまで
「メディーーック!衛生要員はいないのか!」
一人が肩を撃たれ、助けを求める
「おい!大丈夫か!?今手当てするぞ!」
それを聞いて遠くから一人駆け寄ってくる
しかし、現実は非情である
「砲撃だ!身を隠せ!」
その直後、何発もの砲弾が陣地付近に降り注ぐ
私は負傷者を引きずり、塹壕の中へ退避した
そして、負傷者の上に覆いかぶさり頭を手で隠す
カコン
上から何か降ってきた
それは、同じ味方のヘルメットと思われるものだった
何秒経ったかのかわからないが、砲撃が止み、塹壕から頭を出す
周りには大砲により空いたたくさんの大きな穴と複数の味方の死骸・・・
もはや、それが人間だったのかもわからない物もある
敵を目前にして発砲する味方は一人もいない
「・・・・」
余りの悲惨さに声も出ない
このような光景が第二次世界大戦、第一次世界大戦にはあったのだろうか・・・
覆いかぶさり、守っていた負傷者はもう息をしていなかった
多量出血か、ショック死かはわからない
「ちくしょう・・・」
悔しさのあまり涙する
しかし、敵は仲間の死を悲しむ時間すら与えてはくれなかった
敵の歩兵が牽制射撃をしながら進軍してきていたのだ
味方陣地からも射撃音は聞こえてくるがそれは消極的であり、とても敵の進軍を止めれるようには思えない
明らかに戦線の状況は崩壊しかけていた・・・
「ジョグイダ!」
ついに、自分のいるところにも敵が迫ってくる
敵が何を言っているのかはわからない
おそらくここに敵だ!とでも言っているのだろう
すぐに、敵の注意を引き付けこちらがいたところに銃弾が降り注ぐ
もうこうなると頭を上げれない
そして、5分も経たずして第二次砲撃が頭上に降り注ぐ
刹那、目の前が暗くなる
無数の石か何かが体を貫通し痛みが走った
肩、腹、足、腕をそれぞれえぐる
「これなら楽に殺してほしかった・・・」
耐えきれないほどの痛みで顔がゆがむ
「ぐっ・・・右腕が・・・」
特にひどかったのは右腕だった
血が絶え間なく流れ、中の骨まで確認できる
力が入らずだらんとぶら下がっているだけだ
「ジョグンジェ?」
話し声がよく聞き取れる
もう、目と鼻の先に敵がいるようだ
痛みをこらえ、ガンベルトからP220拳銃を引き抜き
塹壕の壁に体を押し当てながら身を乗り出し
左手でP220を発砲する
「ぐはぁっ!」
敵の一人が足を撃たれ前に転ぶ
少し遅れて敵もAKを発砲
1発、肩を貫通
もう一発は胸を貫通した
その衝撃で再び塹壕の中へ戻される
「っ・・・」
言葉にならない悲鳴があがる
そして次第に瞼が鉄のように重くなっていく
懸命に開けようとしてもそれに逆らうことはできない
『私は・・・死ぬのだろうか・・・?』
かすむ視界から最後に見えたのはAKをこちらに向けて発砲する寸前の敵兵だった・・・
第1章 世界樹と妖精と・・・
「・・・ここは・・・?」
私は森の中にいた
時間は夜
周りは月の光を遮るほど木は高く聳え立っている
それでも、木々の間から漏れる月の光が辺りを微かに照らしていた
「あれはなんだ?」
辺りを見回しているとある方向にかなり明るい光があった
それに吸い寄せられるように勝手に足が進む
何故かはわからないが呼ばれているような・・・そんな気がするのだ
木の根に引っかかりそうになっても、木や茂みに遮られても前に進んでいく
何分ぐらい進んだだろうか
ついに視界が開け、眩しいという感覚に襲われる
どうやら森を抜けたらしい
視界の真ん中には大きな1本の木が聳え立っていた
木の葉の間から動く無数の光を出している
色は赤、黄色、青、紫など様々
夜の空には無数の星が幻想的に輝き
3つの月 黄色、赤、青の順に大きく光っている
その美しさに、目を奪われる
「あぁ・・・きれいだ・・・」
景色を見つめていると一瞬フラッシュバックする
銃声、爆発音、大砲、悲鳴・・・
嫌な光景が刹那襲う
「ぐっ・・・」
膝を地に付き、左目を抑える
「なんなんだ・・・これは」
一瞬見えた光景に動揺する
酷い光景、血なまぐさ
見たことがないはずの光景
だが、なぜかどこかで見たような懐かしい光景のように思えた
両手には小銃、腰には拳銃、迷彩服
自分の服装にこの時は疑問には思わなかった
「そこのお方」
「・・・・・・」
目の前には、浮いている妖精(?)がいた
大きさは手のひらほどで髪は金色
目の色は赤で服は紫と青を基調とした物
いつからそこにいたのかわからないが見たことのない存在に呆気を取られてしまう
「君は・・・だれ?」
「んーーーーそうですね・・・この木の妖精とでも言っておきましょうか」
「木の妖精・・・?」
「そうです、木の妖精」
目の前の女性は木の妖精と名乗った
「私はなんでも・・・とは言いませんが大抵のことは知っています、おそらくあなたが今知りたいことも」
「知りたいこと・・・ですか」
「はい、なんでも質問してください・・・ですが立ち話もなんですのでこちらへお越しください」
と言い、手であの大きな木を指す
話が急展開過ぎて動揺していたが、ほかに話せる妖精・・・あるいは人もいなさそうである
どうやら、彼女についていくしかないらしい
彼女の言われるがまま木の根元まで足を運ぶ
やはり、その木・・・樹木といった方がいいだろうか
樹齢何千年と言っても過言ではないほど巨大な木だった
根元まで来て改めてその大きさを知る
「少し浮くので気を付けてくださいね」
彼女ことその妖精さんがそう忠告すると
体が勝手に宙に浮く
「おぉ・・・すごい」
「ふふふ、そんなにすごくはありませんよ」
体全体が暖かい光に包まれ、無重力の様な感覚に襲われる
早い話がジョットコースターのふわっとした感じだ
そのまま徐々に上がっていき
木のどこかはわからないが、太い木の枝に座るような形で着地した
そこで、改めて話題に移る
「知りたいこと・・・とりあえずここはどこですか?全く分からなくて」
「わかりました、そうですね・・・どこから話しましょうか」
腕を組み頭を傾け悩んでいた
そのしぐさがなんとなく愛らしさを覚える
どうやらとても複雑な説明が必要らしい
彼女が答えるまでの時間がとても長く感じられた
「まず、あなたは前世・・・と呼ぶべきかどうかはわかりませんがその世界で死んだのです」
「え・・・?私は死んだのですか?」
「そうです、あなたは兵士として戦争に参加して死んだのです」
私はもうすでに死んでいるという受け入れがたい彼女の発言に動揺していた
現に私は生きていて彼女と会話している
死んでいるということはないはずだ
しかし、思い返してみると不自然だった
ここがどこかもわからない
妙に美しく言葉では表せない景色
美しく輝く3つの月
目の前にいる彼女・・・木の妖精
ここが天国か死後の世界であると言われても反論は出来ない
「私は・・・私は・・・」
「動揺するのはわかります、すぐに状況は飲み込めないでしょう」
彼女は私の動揺を察したのかフォローを入れてくれる
「あなたは偶然にもこの世界に迷い込んでしまった魂なのです」
「では、私は幽霊なのですか?」
「ん~~~半分正解ではあります」
「半分・・・?」
「そうです、この世界に迷い込んでしまったあなたの魂をあなたの記憶から私が再現したのです」
驚愕の真実
彼女の話が本当ならば
死後、行くはずの世界から外れてこの世界へ迷い込んでしまった
それを彼女が見つけ、私の記憶から生前の私を再現し今に至る・・・ということらしい
突拍子もない話だが彼女の話を否定する根拠もない
「私は・・・どうなってしまうんですか?成仏できるならできれば・・・」
彼女に小さな指で後の言葉を遮られる
「ふふふ、心配いりませんよ」
彼女は微笑み私に語り掛けてくる
「あなたはもう普通の人間です」
「どういうことですか?」
「つまり、もうあなたは幽霊・・・そこら辺に漂う魂ではなく人間になったのです、もう成仏とかそういうのを気にしなくていいのですよ」
それを聞いて安堵する
死、成仏ということを考えて不安にならない人間はあまりいないであろう
こういうことを考えられるのは人間のみ・・・なのかもしれない
「しかし、まだ完全ではありません」
彼女は真剣な顔になり改めて口を開く
私もさっきまでの気のゆるみが引き締まる
どうやらまだ続きがあるらしい
「この世界には魔力・・・魔法というものが存在します、おそらくあなたの世界にはなかったものです」
おそらくだが、私の記憶から見たのだろう
なんとなくうろ覚えではあるが記憶にはある
その、混沌とした世界を
「なるほど・・・魔法というものが存在するのですか」
「そうです、それをあなたにどれほど与えるかまだ決まっていないのです」
「では、その魔力をどれほど与えるのかどうやって決めるのですか?」
「それはあなたの返答次第ですね」
つまり、どれほど魔力を与えてくれるかは彼女の気分次第・・・ということなのだろう
聞く限りだと魔力はあって越したことはないようだ
具体的にはわからないが・・・
「・・・」
「この世界には魔王というものが存在します・・・」
彼女が説明してくれたのはこの世界の現状だった
魔王というものがこの世界には存在しており、魔物を使って人々を苦しめているという
もちろん、魔王に直接関りがない半ば野生の魔物もいるらしいのだが
その魔王が指揮する魔物は特段強く今の人類ではなかなか太刀打ちできないほどの強さらしい
また、人類側も人類共通の敵がいるにも関わらず人間同士でも醜い争いが続いているという
国家同士の戦争や民族間の紛争、独立戦争など
戦いの要因は色々だが人類が共闘していないのも魔王軍を壊滅させることができない理由だと思われるということ
治安もあまりよろしくないところも多く存在し、人身売買や奴隷、誘拐など日常茶飯事
盗賊や海賊も珍しくなく旅人を襲っては略奪しているらしい
「今や魔王軍の力は強く強大で、対して人類は衰退への道を突き進んでいます」
「なるほど・・・で、私にどうしろと?」
「私の見る限りあなたのいる世界は私たちの世界の何倍もの科学力があります、どのような形でも構いません、あなたの知識や知恵を生かして魔王軍を倒してほしいのです」
「・・・」
「もちろん、容易ではないこともわかっています、できるという保証もありません」
彼女は半ば懇願にも似た表情で話しかけてくる
私が思っている以上に事態は悪化しているのだろう
「動く鉄の乗り物、動く鉄の船、人が携帯する装備、空を高速で飛ぶ乗り物、何キロ先にも届く爆発する矢、ひとたび放たれれば地上を焼き尽くす神罰の光らしきもの・・・どれをとっても私たちにはない武器です」
彼女は私の記憶から見たであろう描写を彼女なりの言葉で伝えてくる
でも、彼女は知らないであろう・・・その兵器でどれほどの犠牲が出たのか
人類がどのような結末を辿ったかなど・・・
「あなたはこの世界の希望ともいえる存在なのです、この世界を救えるのはあなただけと言っても過言ではないでしょう」
彼女の言う通り、私のいた世界の武器ならばどんなに魔王軍が強大でも文字道理撃退するだろう
だが、他界の・・・この世界におけるオーパーツをこの世界に持ち込んで果たして大丈夫なのだろうか?
武器だけではない、何百年、何千年、下手をすれば数万年単位で早く産業革命を起こすことになりかねない
それが果たして人類の為なのだろうか、いくら魔王軍を倒すための手段だとしても・・・
「・・・少しだけ考えさせてください」
「はい、もちろんです・・・良いお返事を期待しております」
「決まったよ」
小一時間ほど悩んだだろう
この決断が正しいのかはわからない
もしかしたらこの世界を破壊に導くかもしれない
でも・・・
「私は、この世界の魔王軍を倒そうかと思う」
だからと言って魔王軍に蹂躙される人々を放っておくことは私にはできなかった
もちろん、盗賊や海賊に襲われて亡くなる無実な人々も
これが単なる正義感に過ぎないことはわかっている
正直迷いがないとははっきり言えない
だが、後悔はしていない
「そういってくれると信じておりました!」
彼女はこれまでに見たことも無い笑顔で言った
まあ、あってから1時間ほどしか経ってはいないのだが・・・
「では少し痛みますが我慢してください、最後の仕上げです」
どうやら魔力を与えてくれるらしい
いくら魔力を与えてくれるのかはわからないが正直そこまで魔力が必要なのだろうか?と感じてしまう
魔力の使い方もわからないし、どのような効果があるのかもわからない
それは追々聞くことになるのではあるのだろうが・・・
そのようなことを考えていると彼女は私の右目に手をかざす
「神聖なる神よ、勇気ある彼に力を与えたまえ」
呪文を唱えると彼女が白く光りだす
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
それと同時に余りの痛さに右目を抑える
目にゴミが入った、などの痛みとは比べ物にならない
目を殴る、切られたような痛みが15分ほど続く
もだえ苦しむ私をよそに彼女は力を注ぎ続ける
「・・・・お疲れさまでした、よく耐えてくれましたね」
「はぁ・・・はぁ・・・」
彼女が力を注ぐのをやめるとさっきまでの痛みが嘘だったかのように今は痛みがない
それでも、まだ右目に違和感の様なものを感じていた
怖くてまだ右目は開けれない
私が右目の違和感を取り除こうと目をこすっていると、彼女が何かを持ってくる
自分の体の何倍も大きなものを持ってゆらゆら飛びながらこちらへ手渡す
「これを身に着けてください」
それはウエストポーチだった
色は自分の服の色と同じ迷彩色
大きさはチャック部分の全長がが30センチ程度と少し大きめである
「これは一種の魔法道具です」
「魔法・・・道具」
「そうです、これは所有者のイメージした物がそのまま出てきます」
「なにか、凄そうなものですね・・・」
「実際にすごいものですよ、私がさっき作ったんです!エッヘン!」
彼女は自信ありげに胸を張る
「これは世界に1つしかありません、本当は2つ同じものがあったのですがそれを奪い合う戦争で2つとも紛失してしまったんです」
なるほど、確かにイメージした物がそのまま出てくるというのは流石に希少価値だろう
戦争に勃発してもおかしくはない
・・・ということはこの妖精は神か何かなのか?
こんなものを一瞬で作れるとは並大抵ではないということはなんとなくわかる
「さて、この所有者を決めるにあたってマークを決めなければなりません」
「なぜですか?」
「だって、所有者が決まらなければ意味がないでしょう?」
「な、なるほど」
つまりはそういうものらしい、この世界では
「一度決めたらそのマークが一生自分のマークになるのでお気を付けくださいね」
適当に決めれば何とかなる・・・と思っていたが一生付きまとってくるなら慎重に考えなければならない
さらに、マークを決めるのに2時間ほど四苦八苦した
色々迷った末、行きついたマークは
月桜だった
左上に左少し上向き気味に三日月があり中央付近に桜のマークというシンプルなものだ
三日月を選んだのは今が夜であるという単純な理由
桜を選んだのは自分が桜が好きだったからだ
転生したころは記憶が曖昧で前世の頃のことをあまり思い出せなかったが
3時間たってだいぶ落ち着いたのか思い出せるようになってきた
桜が好きだった理由として一番に挙げられるのは自分の誕生日が4月上旬で桜の満開時期に生まれたからで
何かしら運命の様なものを感じていたからだった
「決まりましたか?」
「はい、まあなんとか」
「ならこれに触れてそのマークをイメージして魔力を注いでください、コツは力をそこに集めてくるような感じです」
「やってみます」
例のウエストポーチを手に取って魔力を注ぐ
目をつむって集中し、マークをイメージする
すると、ポーチが浮かび上がり、側面にマークが刻まれる
「おお・・・すごい」
「これで完成ですね、改めてこれはあなたの物です」
彼女はそういうとポーチに片手をかざし始めた
「少しおまじないを掛けますね」
なんだかよく分からない言葉を唱え、ポーチに新たに魔力を注ぎ始める
するとまたポーチは浮かび上がり赤や青、白といった輝きを放ち
しばらくするとシャン!という音とともに光は消え自分の手に落ちてきた
「これで、書き換えができなくなりました、もし盗まれたとしても持ち主を変えることはできません」
「このマークは書き換えができるんですか?」
「まあ、少し魔力は使いますが書き換えは可能です」
「なるほど、マークを刻んだからと言って永遠に自分のものになるというわけではないのか」
「そうですね、いましたのはいわゆる窃盗防止みたいなものです。それに、このマークがついていればどこに居てもこれがある場所がわかるんです」
もし、誰かがこのポーチを盗んで書き換えを行おうとしてもそれができず諦めるしかないということで
ずっと持っていても持ち主に追跡されていずれは取り返される
このマークがいかに大事かやっと理解したように思う
彼女には感謝してもしきれない
「では、持ち主も決めたことですし早速使い方をお教えします。例えば・・・これを作ってみましょう
そういって89式小銃のマガジンを指さす
彼女はこの89式小銃とマガジンの事を知らないらしい
おそらくそのほかの装備に関してもあまり知識はないのだろう
「ポーチの中に手を入れてください、そこでほしい物をイメージして手に握っている感触がしたら抜いてください、そうすればイメージした物がそこにあるはずです」
彼女に言われた通りの動作を行う
すると手には89式のマガジンが握られていた
もちろん5.56mm弾もマガジンの中に装填されている
私は試しにマガジンを填めリロードしてみる
コッキングハンドルを引き薬室に弾を装填する
カチャという音とともに弾が装填された
「おお・・・本当にイメージした通りのものができている・・・」
「お気に召しましたか?」
もし、これが前世で開発されていたら世界の戦争・・・軍隊に革命を起こしたであろう
マガジンをわざわざ大量に持ち運ばなくて済み
重量の低減ができる
それは同時に機動性を向上させ疲労を少しばかり減らすことができる
マガジンが詰まっていたところには別の物を詰めることができる
それどころか、戦場に必要なほとんどの物はポーチ一つでどうにかなってしまうレベルだ
また、弾切れを心配する必要がない
弾はそのポーチから無限に湧いて出てくるのだから当然だ
水も、食料も、手榴弾もおそらくこのポーチから供給できるはずだ
軍隊だけじゃない
一般市民にも配布されれば世界の今までの生活標準が一気に崩壊することは間違いない
確かに、この魔法道具を争って戦争をする価値はあるようだ
「この道具は魔力消費を抑えることに加えて無詠唱で物を生み出せる能力があります。水を出して攻撃したり、炎を出して攻撃するにしても詠唱が必要です、それをこれは無効にして生み出せるんですね」
「なるほど・・・確かに素晴らしいものですね」
「まあ、攻撃魔法には使えませんし生み出せる物の大きさにも限界があります。それに、もう一つ欠点があるのです」
「欠点?」
「試しに、さっき作ったやつを外して枝の上に置いてみてください」
彼女の言うまま、マガジンを外して枝の上に置いてみる
最初の方はあまり変わらなかったが次第に薄れ始め、5分ほどで消滅してしまった
「このように、持ち主から離れると一定時間で消えてしまうのです」
つまりはお金の様なものを作ったとしても一定時間で消えてしまうため詐欺みたいなことはできないということだろう
「ふむふむなるほど」
「今あなたが肩から下げているそれも同じような原理で作ったものなので、手を離したら消えてしまいますよ」
「え・・・ではこの小銃が消えてしまうともう使えないのでは・・・」
「もちろん対策はありますよ」
それを聞いて安心した
おそらくパーツから組み立てればまた使えないことも無いだろうがさすがにそれは問題がある
別に急を要さなければ問題ないが、いきなり奇襲されたときに一から組み立てるのには時間がかかりすぎる
それを考えれば、何処かに完全体で収納しておける方がはるかに有利であるし無難だった
「簡単なことでさっき作ったマークをそれにも刻むのです」
「なるほど、そういうことができるのか」
「早速やってみましょう、やり方は一緒ですよ」
ポーチの時と同じように89式にもマークを施す
当然だが89式にも同様の事が起き、引き金の少し上の部分に月桜のマークが刻まれた
たったこれだけだが89式に愛着がわいたようにも思う
「これで地面においても消えることはありません、ただあまりにも小さい・・・コインの様なものや生ものには使用できませんのでご注意を」
やはり、お金擬きは作らせないようだ
別に作ろうとも思わないが・・・
生ものは保存的な要素で無理なのだろう
「しかし、これにも弱点?かどうか状況によるかもしれませんが他人がそれに触れると消滅します」
「つまりは他人がこの89式を使おうとしても無理だということで?」
「そうですね、基本的に魔法で生み出したものは本人の物ですので本人でなければ使えません。だたし、血のつながりがあるものは使えます」
「例えば・・・子どもとか?」
「ほかにも父親や母親、妹や弟などですね。婚姻関係になるとその婚約者にも使えるようになります」
「なるほど」
「そして、これはしまうこともできます」
「しまう・・・?」
「そうです、詠唱するとしまうこともできるし逆に生み出すこともできます。ただし少し魔力を使いますが」
「詠唱・・・よく聞きますがそれはどうやって決めるのですか?決まったものがあるなら教えていただきたいのですが・・・」
「いえ、自分で自由に決めれますよ。なので後で自分の好きなように決めるといいと思います」
「は、はあ・・・」
その他こまごまとした最低限の説明を受け
全てが終わる頃には空はいつしか日の出を迎えようとしていた
あの幻想的な輝きも日の出を得て色褪せようとしている
「さて、ここまでのようです」
「そうですか・・・」
「これからこの世界の事をよろしくお願いします、もしかしたらまた会う日が来るかもしれませんね」
「できる限りは頑張りますよ」
「あなたを今から眠らせてとある場所にテレポートさせます。次、目が覚めるときあなたは別の木の上で眠っているでしょう」
「わかりました・・・ではまた会う日まで」
「はい、あなたに神の加護があらんことを」
彼女が手をかざし、詠唱を始めると次第に眠たくなっていった
ついに瞼は完全に閉じ、私は心地よい空間へと落ちって行った・・・
今回は読んでいただきありがとうございます
初めましてsilverfoxというものです
いくつか別のサイトで小説は書いていたのですが今回は思い切ってここに出展してみました
まだまだ不甲斐ないのですが完走目指して頑張りますのでよろしくお願いしますね
アドバイス等あれば何らかの形で教えてくださるとありがたいです