小さな戦争の始まりです
遅れて申し訳ございません!さて今回のサブタイトルについてはポケットの中の戦争をヒントにしました。
ご覧下さい!
出てきた人はだらしない格好をしている人ですが、先ほどの魔法を見ると普通の魔法使いではないことがわかります。
「私達ですか?ただの旅人ですよ、この先のベルタルタ国を目指していたのですが―」
「ベルタルタ国なら〜さっき陥落したよ〜そのドラゴンは同盟組んでる国に連絡しようとしたらしいけど〜…まさか君たちがそいつの仲間だったりしないよねぇ~?」
「さっき見てたなら分かるでしょ、そのドラゴン私達を襲ってきたんだから敵。そしてあんたは私達の敵!」
リオルが指を2回鳴らしました。これは一斉攻撃の合図です!
私とリオル、セーラさんでタイミングをずらし、矢を放ちましたが、私の矢はよけられ、セーラさんの矢は持っていた杖で打ち落とされてしまいました。
「おっと危ないねぇ!人間同士の殺し合いをする時には名乗れって教わらなかったのかなぁ!?」
「では名乗ろう、小生の名はブレイ・ドーファン、貴様を葬る者だ!『バーニングアーツ』!」
ブレイさんは後ろから炎を纏った弓で切りかかりましたが、これも杖で弾かれてしまいます。
「ヒャッヒャ!面白いね!弓そのもので攻撃なんて!じゃあそろそろアタイの名前を名乗らせてもらうよ、アタイはルメラカ国魔術軍三番隊隊長の『砲撃のフルーホ』ことフルーホ・ブッセ!君のハートを物理的に撃ち抜くよ!そりゃ!」
フルーホがブレイさんに向けて杖を振ると詠唱なしで巨大な火の玉が飛んでいきました。
「詠唱なしで魔法を放つか!となるとその杖に何か仕掛けがあるとみた!『ウォーターアーツ』!」
ブレイさんは弓に水を纏わせて火の玉を切り、フルーホに再び斬りかかりました。
「ヒャッヒャ!面白いのはいいけどアタイはあまり近接戦は得意じゃないんでねぇ!そらぁ!」
フルーホが足元を蹴ると軽い爆発が起こり、大量の煙が巻き上がりました。
「ちっ!煙幕か!」
「ヒャッヒャ!いくよぉぉ!!」
煙の中から火の玉が様々な方向から出てきてブレイさんに次々と当たっていきます。
「ぐっ…リオル!そっちから撃てないのか!?」
「撃てるならとっくにやってるわよ!とりあえず煙が晴れるまでは持ちこたえてちょうだい!」
「私も回復してサポートします!『ヒーリング』!」
この呪文は私が魔力を送り続けている間だけブレイさんの傷が治るのですが、私自身の魔力はそこまでないのでいつまで持つか…
「ヒャッヒャ!そんなちっぽけな回復魔法でアタイの攻撃に耐えきれると思ってんの!?ほぉら!とどめだよ!」
フルーホが煙の中から頭をめがけて杖で殴りましたが、当たったのはブレイさんの掌。
「やっと現れたなぁ…貴様が馬鹿みたいに大声をあげたから大体の場所はわかっていた!」
ブレイさんは杖を引っ張り、引っ張られたフルーホの腹を殴りました。
「かはっ…」
「貴様のような外道の血で小生の弓を汚したくはない、貴様は我が拳で地獄に落ちるがいい!」
部分魔力強化で拳と脚を強化し、稲妻の如き速さでフルーホの身体が浮くほどボッコボコにするブレイさん…
「これで終いだ!『ボマーアーツ』!吹き飛べ!!」
ブレイの最後の一撃でフルーホは吹き飛び、腹の辺りが真っ黒焦げになっていました。セーラさんは死体に駆け寄り、興味があるのかまじまじと見始めました。
「所々関節が変な方向に曲がってますね…死んでいるフリをしているか確認のため矢を撃ち込んでおきます…」
セーラさんが、死体に矢を撃ちましたが、リザードマンのように黒くなるようなことはありませんでした。
「やはり…そうでしたか…」
「なにか分かったことでもあったの?」
「はい…この人…さっきから詠唱することなく魔法を出していましたよね?」
「ああ、だが杖が特殊ではないのか?こいつは何も言っていなかったが」
その杖はブレイさんが壊してとても調べられそうにはないですけどね…
「いえ…この人の身体をよく見たら体の様々な場所に小さく術式がいくつも書かれていたんです…これは『ボディスペル』と言って魔力を込めたペンで身体に術式を書き込むと、書いた部分のみですが詠唱することなく魔法を放つことができます…弱点としては詠唱をする魔法より魔力を数倍近く多く消費するのでもう使われていないと思っていましたが…私の矢が効かないのは毒を無効化する鎧のような…膜のような魔力で覆っていると思われます」
「ほう、興味深いな…だがセーラ、何故おぬしはそこで魔法に詳しい?おぬしはハンターだろう」
「実はセーラ…魔法が使いたくて魔法使いになりたかったんです…魔法学の本を本棚いっぱいに買っては読み漁り…初めて魔法を放とうとした時…火の玉一つ出せないほど魔力が無いことが分かりました…ですが今でも本を読むのは好きなので知識だけはあるんです…」
昨日話をお聞きましたが、魔法が使えないと知った時はかなり落ち込んだそうで、全ての本を燃やそうとも考えたそうです。ですがエリーさんに相談した際その知識を生かしてくださいと言われてしばらく魔法学の教師を教会でしていたそうです。
「魔力ねぇ…私は少しくらいならあるけど魔術構造って難しいから使おうとは思わないわね。むしろなんでブレイが使えるのかが不思議なくらいよ」
「知らんな。小生もこう見えて最初はソルジャーになろうとしていたからな、だがガレットが魔力を持て余していて勿体ないと言うのでこうして魔法戦士となった」
「こう見えてって…どう見ても幾千もの戦をくぐり抜けてきた戦士にしか見えないんだけど。さて、これからどうする?どこかの国の隊長倒しちゃったけど…」
「ふん、愚問だな。このまま攻め込むに決まっているだろう。このまま町に帰ってもこの国を支配した輩がブリーズダウンに攻めて来ることが目に見えている」
「ですが…たった四人じゃ無謀にもほどがあります…」
「ですよね。フルーホの言い方では国は陥落したばかりで、一度町に戻ってこのことを知らせることくらいならできそうですが…どうしますリオル?」
「どうするって言われても…そうね、ここから町まで歩いて小一時間…この国に攻めてきた隊がこいつ一隊だった場合…」
リオルが俯いてブツブツと何かを言い、結論に至ったそうで顔を上げました。
「うん。乗り込むわよ」
「えっ…!正気ですか…?」
「正気よ。じゃあ今から手短に説明するから一度で覚えなさい」
リオルの作戦はまず、私がブレイさんに硬化魔法をかけて硬化解除時間まで攻撃を通さないようにし、ブレイさんは突撃、私が回復魔法をブレイさんにかけ続けている間リオルが私を守るというものでした。
「あれ…?セーラはどうしたら…」
「セーラ、あんたは町に戻ってノヴァとエリーを呼んできなさい。もしものことがあったとき頼れるのはあの二人だけなのよ」
「…分かりました…では皆さん、どうか死なないで…!」
そう言ってセーラさんは町のほうに向かって走って行きました。
「いいのか?あのような言い方で」
「いいのよ、そう言わないとこっちのこと心配しちゃうじゃない」
「いや心配していましたよ?かなり心配していましたよ?」
「うるさい。とっとと行くわよ、時間をかけないほど勝率が上がる作戦なんだから」
「はい、では行きましょうか」
こうして私達はたった三人で国に乗り込むことにしたのでした。
小さな戦争はあと2話ほど続けていこうかな…と思っています。
何卒よろしくお願いします!