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馬鹿と天才はなんとやら

遠回りをしていこうとしたら岩陰からどこかの国の兵士が変な帽子を被って出てきた。

手には鉄でできた筒を持っている。

構えているということは武器だとは思うけど…


「どこから来た!」


「ブリーズタウンからよ、博士に会いに来たの」


「嘘をつくな!そのような名前は聞いたことがない!」


話にならないし…殺りたいけどどんな武器か分からないから迂闊に動けない。

かといってこのままだと殺されるか囲まれてどこかに連れていかれるかのどっちかだしなぁ…

とりあえずセーラに隙を作ってると分かるくらいの会話をして二人から気を逸らせるか…


「それは申し訳ないわね、ブリーズタウンは戦争に関わりがほとんどない町だから知らなかったのも無理はないかしら」


幸運にも相手は男。

色仕掛けするような体格はしてないけど相手が女なら少しくらいは気が緩むはず。

焦るな私、だが急げ私。


「フン、確かに弓なんて今時見ない武器を見るとド田舎から来たみたいだな。どうだ、今から俺と―」


私に近づいてきて肩に手を置く兵士。

視線はこっちにしか向いてない!


「そうね、その誘いはとっても嬉しいわ」


指を軽く鳴らすと素早くセーラが素早く弓を放ち、兵士の体を貫いた。


「がっ…あっ…」


「弓が今時古いなんてあんたが決めることじゃないのよ」


私は肩についた汚れを払って再び町を目指した。

町に近づいていくごとに爆発の音は大きくなり、緊張も高まる。

やがて町らしきものが見えてきたけど…一言で言うならスゴイ。

大きな建物がいくつか見え、そのほとんどの建物に煙突がある。


「温泉…じゃないわよね」


「だろうな。サウナだろう」


「違うと思いますよ…」


意外に町目前まで行くと兵士はいなかった。

私達は町に入り、今回の目的である博士を探し始めた。

道に座って何かを吸って臭い煙を吐いている人やぼーっとしてる人、道端で寝ている人を見るとここが少なくとも住めるような場所ではない所ということは嫌でもわかる。

家はあるけど家が建ってから数十年経っているようなボロさ。

博士は本当にこの町にいるのかしら…

町の人に話を聞こうとしても金をくれと言うし、ドアをノックしたら「ボタンがあるんだからそれを押せばいいだろ!」って怒鳴られるし…


「知るか!そんなもん!そっちの常識押し付けんな!」


「おお、珍しくキレたな」


「大体なーにが『情報欲しけりゃ金よこせ』よ!本当の情報を教えるか信頼できないやつに金なんか渡せるわけないでしょ!」


「でも…聞かないよりはいいのでは…」


「そうだけど!そうなんだけど!はぁ…比較的マシそうな人探すしかなさそうね…」


探索するとふわふわなドレスを着て猫の耳を取って付けたような後ろ姿の少女を見つけた。

大きな箱を運んでいるのを見るとおつかいか何かかな…


「こんにちは、ちょっといい?」


「ぬ?…ぬ!」


まさかのアハツェーン。

箱を置いて跳ねているから来るのを待っていたらしい。


「誰だこの子?知り合いか?」


「ええ、人造人間のアハツェーンよ。なんでこんな格好をしてるのかは知らないけど」


「可愛いですね…」


「ぬー!」


アハツェーンはついてこいと言いたいらしく片手で箱を持ち上げて片手で指をさして走り始めた。

ついていくとアハツェーンは煙突がついた大きな建物の中に入って行き、私達も建物の中に入った。

建物の中は意外にも明るく、二階がないのか天井が高い。

建物の隅には百近くの箱が置いてあって全てに蓋がしてあるので何が入っているのかはわからない。

そしてなにより広い。部屋がないというのは変だけど一つしか空間がないからいろんなものが置けそう。


「博士が見当たらないな、出かけたのか?」


「ぬー…ぬー!ぬー!」


一つ一つ箱の蓋を開け始めるアハツェーン。

「ぬ」としか言ってないけど博士に呆れていることは伝わる。

アハツェーンが十個目の箱を開けると勢いよく博士が飛び出し、「おかえり!」と叫んでアハツェーンの頭をわしゃわしゃと撫でる。相当お気に入りらしい。

やがて博士は私達が来ていることに気づいて撫でる手を止めて箱から出てきてこちらに来た。


「いらっしゃい、よく来てくれたね」


「何事もなかったかのようにしてるけど一部始終見てたわよ」


凄まじい勢いで撫でられたアハツェーンの頭はボッサボサになっていて見るからに機嫌が悪くなってる。


「あはは、僕なりの愛情表現さ。僕には妻どころか彼女もいないから女性の扱い方は分からないし一時期研究しようと思ったけどどうにも科学では解明できるようなものではないからこうやって僕なりに驚かせてるんだよ」


「驚かせてる本人呆れてるってことは何回もこの手を使ってるってことよね…」


「よく分かったね、今回で五回目だ」


「そりゃ呆れるわ…それより!」


「分かっているよ、ミラのことだろう。見せてごらん」


私とセーラでブレイに固定していたロープを解いてミラを床に寝かせると今更ながら博士がブレイに気がついて驚いていた。


「何だその表情は。まるで小生が死んだはずみたいな表情をしているぞ」


「いやそんなことは思っていないよ。てっきり今頃どこかの国の道具として使われているんじゃないかと思っていたから…いやまさかツェーンが友達を作るとは思っていなかったんだ」


「友達か、その言い方も悪ないが小生たちの関係は仲間という方が相応しいかもしれん」


「ツェーンって言われたことは気にしないのね…ミラは気にしてたけど」


「番号とはいえ付けられた名前だからな。『こいつ』とか『これ』と言われるよりはいいだろう」


いや番号で呼ばれるのも大概な気がするけど…

博士はミラの瞼を開いて調べ始め、「原因の確認と修復に時間がかかるからそれまでここにある箱を漁るなり町の観光をして時間を潰してくれ、町の観光ならアハツェーンがこの町のことを調べてくれたから案内はできるよ」と言った。

いや「ぬ」しか言えないのにどうやって案内するのよ…護衛面なら安心できるけど…

外に出ても特にすることはないのでブレイは昼寝、セーラは昼ご飯、私は昼ご飯のサンドイッチを食べながら箱を漁ることにした。アハツェーン付きで。

箱の中身は様々で兵士が持っていた武器や爆弾、大量のお金までもが箱に詰まっていた。

小さな声で「こんなものどこから…」と呟いてもアハツェーンがどこかを指さして「ぬー」。

全部の箱を見終わってすることもなく、壁に足を開いてもたれかかって博士の様子を見ているとアハツェーンが開いた足の間にちょこんと座る。


「ぬー」


「何?」


「ぬー…ぬー?」


「ごめんね、何言ってるか私には分かんない」


「ぬー…」


そのあと特に話すこともなく、やがて私は睡魔に襲われたので特に抵抗することもなく眠りに落ちた。


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