予定は崩れて当たり前
今回ミラちゃんが気絶しているのでモノローグがリオルちゃんとなっております。
予めご了承ください。
博士に会いミラの左目を治すためにベッチオタウンに向けて出発してしばらく歩いた私達。
もう昼を過ぎているのにミラが起きないのはとても不安だけど起きてパニックになっても嫌なのでそのままに。
エリーの話によるとベッチオタウン周辺の地域では戦争が起こっていて危険だと言っていたけど…
「リオルよ、そもそもベッチオタウンへの行き方は分かるのか?」
「ええ、メモに地図が書いてあったから。手紙の大きさなのにかなり良く出来てたからびっくりしたわ」
私が持っている博士からのメモにはベッチオタウン周辺のことが書いてあり、入念に下調べをしたかのようによく書けていた。
地形やら出現する魔物やら…
どうやら周辺は砂漠のようなところで植物がほとんど生えていないらしく、私達が今歩いている所もかなり乾燥してきていて砂もさらさらしている。
まるであらかじめ私達がベッチオタウンに来ることを予想していたかのような…博士の造った人造人間の中には予言ができる人がいた…?
考えても仕方がないか。
地図通りに進んでいると見たことがない魔物が正面から現れた。
ベッチオタウンの方には行ったことがないし仕方がない。
大きな一本の角が生えて尻尾の先端にはトゲトゲしたボールをつけていて豚のような見た目。
大きさは二メートルあるかないかくらい。それに対して角の大きさが同じくらいなんでけどよく倒れないわね。
「攻撃手段は角で突進、よけられたら尻尾で攻撃といったところか」
「遮蔽物もありません…先手必勝です」
リオルが素早く矢を放つと魔物は簡単に角で払い、矢は折れてどこかに飛んでいってしまった。
「これ…まずくない?」
こちらを倒せると思ったのか魔物は前掻きを始め、突進する準備をしている。
「これ…逃げ切れると思う?」
「無理…です…」
「無理だろうな、隠れる岩や木もない」
いきなり絶体絶命って何それ…
「とりあえず目を狙って少しでも邪魔するわよ!」
私とセーラで魔物の目を狙って矢を放ったけど、角を振り回して弾き飛ばされてしまう。
鼻息を荒げて私の方に真っ直ぐ突進してくる魔物。
間一髪で右に跳んでよけたが予想されていたのか方向転換し、刺がついた尻尾を振ってその勢いで針を飛ばしてきた。
私は尻尾自体をかわすことができた。けれど脇腹と左腕に太い針が刺さってしまった。
急いで針を抜いたが出血量がなぁ…
「いったぁ…幸い毒が入ってないことが救いだったかぁ…」
見たくもないけど脇腹と腕に小指程度の穴があいてる…
「リオルさん…大丈夫ですか?」
「死にはしないけど…このままじゃまずいのはたしかね」
正直背を向けて逃げたいけど殺られる未来しか見えない。
こういう時どうすれば…
私を囮にしてセーラに射ってもらえば…いやそうだとしてもこの魔物の皮膚が硬かったら?
なにせ魔物がどんな魔物かよくわかっていないから作戦の立てようがない。
ブレイが戦えればと思うけどミラを背負ってるし、落ちないように固定してるから一度降ろそうにも時間がかかる。
どうする私…どうすれば突破できる…?
ここは私を犠牲にしても二人に行ってもらう…
「おいリオル、余計なこと考えているだろう」
「えっ、いや何を?」
「どうせ自分を犠牲にして小生らを先に行かせようとしているのだろう?そうはいかんからな」
「そ…そんなこと考えてないわよ!」
「考えていたんですね…」
この二人は…ったく。
「よし!私は魔物に正面から突っ込む!セーラは魔物の横に回ってとにかく打ち込みなさい!ブレイは魔物の背中に蹴りでも入れておきなさい!」
「だがミラは…」
「少し揺らしたくらいじゃ起きやしないわよ!」
私は魔物に向かって走るとこっちから突っ込んで来るとは思っていなかったのか一瞬だけ驚いた様子を見せてから突進してきた。
予想通り!
私はすかさずスライディングをして下に潜り込み両足で腹を蹴りあげた。
いや…硬い。
本当は腹を蹴り上げて怯んだところをセーラが殺るはずだったんだけど…びくともしない。
私にのしかかろうと足を崩そうとしたので私は急いで転がり腹の下を抜けるとちょうど足を崩して地面に腹をつけた。
「予定とはちょっと違ったけど…今!」
「はぁぁぁっ!!」
ブレイは高く跳び、魔物の背にかかと落としを食らわせると重い音がなり、魔物付近の地面に軽くヒビが入った。
「セーラ!止めだ!」
「はい…!」
力強く弓を引き、矢を放つと魔物の皮膚を突き破って肉に突き刺さった。
魔物は十数秒くらいは苦しんでいたけどすぐに息絶えて黒くなっていった。
「はぁ~…疲れた!」
その場に仰向けで倒れる私。
穴があいたところからはまだ血が止まらないけど霞んできてるくらいだし問題ないかなぁ…
「リオルさん!治療をしないと!」
「セーラ!バッグから包帯と薬草を取りだせ!小生がやる!」
また私気絶するのか…フルーホにやられた時もこんな感じになってたんだっけ…
というか脇腹と腕に穴があいただけなのに二人共必死だなぁ……
「…『ヒール』」
どこからともなく消えそうな声が聞こえると私の体の穴は一瞬で治り、疲れも吹っ飛んだ。
「今の声…まさか!」
立ち上がってミラを見てみたけど寝ている。
でもこの中で回復魔法を使えるのはミラだけ。
「全く…寝てる時に一番役に立つって…でもありがとう」
「これも人造人間だから…でしょうか?」
「さぁな、あいつが造った人造人間は一人一人秀でた能力が全く違うからな。小生の場合は武器生成だ」
「それで私達の武器が作れたってわけね…でも博士はミラは何も秀でていないって言ってたわよ」
「それは知らん。博士から聞いただけだからな」
「えぇ…」
ブレイから博士がどんな人だったか話を聞きながら歩き始め、ベッチオタウンに近いと思われる場所まで行くと何かが爆発をした音が複数聞こえてきた。
「戦争中か。遠回りするか」
「まぁ戦場のど真ん中を突っ切るようなことはしたくないし…そうするしかないわよね」
歩く速度を落として回り込むように歩いていく。
爆発の音がなるべく遠くなるように、巻き込まれないようにゆっくりと。
「手を挙げろ!」
バレちゃったかー…




