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里帰りはきちんと連絡をしてから

どうでもいいこと、良くないことは一人ひとりが決めるものであり、人によって見方が違いますよね。

例えをを出すと長くなるのでここには書きませんが、誰かがそれを『どうでもよくない』と思うならそれはどうでもいいことではないのだと思います。

何が言いたいのかというと大事なのはそれを理解してあげるかどうかなのだと思います。

さて、こんな陳腐な話は置いておいて…

本編をどうぞ!


時は現在に戻り、意識を取り戻した私はリオルに過去にあったことを話しました。


「――ということがあったのです。ブリーズタウンに行くまでの出来事は比較的どうでもいいので省略しますが」


「いやそこは大事だろう…」


「そうでもないですよ、その数週間後に王室で爆破を起こして国を追放させられただけですし」


「おぬしかなりのことやらかしているぞ!?」


リオルに過去のことを話し終えた私。

ですがリオルは納得をしていません。


「うんまぁ…過去にそういうことがあったというのは分かったけど…結局どうやってミラは私の記憶を消したの?今話した感じだとそのまま私たちは仲良く暮らして終わりみたいな流れだったけど」


「あの後二度とこういうことがないようにと私達を誘拐した国を探し出して戦争に行きました。リオルのお母さんたちは優秀な魔道士だったので自ら進んで戦争に行きましたよ。私たちが追放されたのはそのすぐ後でした」


「いや私はそういうことを聞きたいんじゃなくて…」


「どうでもいいじゃないですかどうやって記憶を消したかなんて!」


「よくないわよ!私の記憶が消したのミラなんだから!」


言えるわけがありません。

国に追放されたあと森を抜けてしばらく歩いていたら魔物に出会い、魔物に『イレイザー』をかけようとしたらリオルにあたってしまい、何故か記憶だけ消えていたなど…

どうにかして話を逸らそうとしますが、なかなか諦めてくれません。


「さてはミラ…くだらない理由で私の記憶を消したんじゃないでしょうね?」


「そ、そんなことないですよ」


「やっぱり…で、私の記憶って戻るの?」


「…さぁ?」


「さぁ?じゃないわよ!ミラだけ思い出してなんで私の記憶が元に戻らないのよ!」


私の胸ぐらを両手で掴んでグラグラと揺らすリオル。


「分からないですよ~トレラさんは何か知っていますか?」


「魔法の類は一度も使ったことが無いからよく分からん。だが過去のことなど思い出してどうする?」


「どうするって…ママに会いに…」


「お前さんの母親はお前さんを覚えていないかもしれんぞ?」


「そんなことない!ミラ、あんた全部思い出したなら私達の国に行くわよ!」


「い、今からですか?」


「当たり前じゃない!」


まだ日は出ていますが今日中に行ける距離ではありません。

夜になればあたりは真っ暗になり、その中を歩いていれば夜行性の魔物の餌になることは間違いないでしょう。


「落ち着いてください、行きたい気持ちは分かります。ですがあの国はあまりにも遠いのです、ここからブリーズタウンまでの距離より遥かに遠いのです」


「じゃあ…どうしろっていうのよ…諦めろっていうの?」


「そうは言ってないじゃないじゃないですか、ね、トレラさん?」


「何故俺に…まさかお前さん…」


若干引き気味にこちらを見てくるトレラさん。

そうです。トレラさんは竜人族。つまり乗せてもらうのです!


「はい、お願いします!」


私が頭を下げてお願いすると、トレラさんはしばらく黙ってからため息をつき、私の頭をポン、と叩きました。


「ここに連れてきてもらって何もしないわけにもいかないからな。いいぞ」


「ありがとうございます!ではここで一泊してから行きましょう!いいですよね、リオル?」


「…うん」


少し嬉しそうな、不安そうな顔をしてリオルは頷いたのでした。


その夜、お土産屋さんで地図を買った私達は部屋で明日のことについて話し合いました。


「私たちの生まれた国は『ニュームーン』という名前の国で、地図には載っていないのです」


「じゃあ地図を買った意味がないだろう…」


「いえ、意味はありますよ。大体の場所は分かりますから」


私はそう言って森が書いてある場所を一緒に買ったペンで丸をつけました。


「なるほど、ここの森の中にあるってことだな、随分と大きい丸だが」


大きさはここに来る途中の森の数倍の広さで、森を抜けるとなれば一直線に歩いても二日以上はかかってしまうほどの大きさです。


「お前さんたち…よくこんな森から出られたな、しかもあの町までも相当遠いだろう?」


「ええ、ほぼ行き倒れ状態でノヴァさんに拾われましたから。一週間近くは歩きましたね」


「そうね…何故か記憶が途中から思い出せるのよね…町についたときにはお腹ぺっこぺこで倒れそうだったのよね」


「ええ、そして助けてもらったあとしばらく教会に泊めてもらったりなんかして…」


「お前さんたち…想い出に浸るのは構わんが明日のこともな」


「もちろん分かっていますよ、トレラさんに森まで乗せてもらうとして、そこから先は徒歩ですよね」


森の中は木が密集していて、ドラゴンのような大きな生き物が通りにくく、猟師が獲物を獲りやすくなっています。逆にいえばこの森の中に小さな基地を作ってもバレにくいのですが…


「ええ、歩いて二日でしょ?途中で軍に襲われる可能性もあるわね」


「え?むしろ『おかえりなさい』って歓迎されるのでは?」


「国を追放されてるのに歓迎なんかされるわけ無いでしょうが!…それに国に入れたとしてもそこからも問題よね…」


「ハッハッハ!問題しかないな!」


「笑い事じゃないわよ、あんたも殺されるかもしれないのよ?」


「だからこそだ。死ぬかもしれないからこそ面白い。自分の国に殺されるかもしれない少女二人を送るなぞ生きていてそうそうないからな」


「変わった人ですね」


「お前さんたちには適わんがな」


こうして作戦会議を終えて就寝した私達。

その翌日、私達は食料などを揃えて温泉街を出ました。


「よし、ここまで来れば儂が姿を変えても大丈夫だろう。ほっ」


トレラさんはほんの一瞬だけ光ると大木以上に大きなドラゴンに姿を変えてしまいました。


「大きいという言葉じゃ収まりきらないほど大きいな姿ですね…」


「ええ、さすがドラゴンというかなんというか…」


「では行くか!お前さんたちの故郷に!」


私達はトレラさんの背に乗り、『ニュームーン』を目指すのでした。



私は地元住みなので地元を離れている人たちの心境はわからないのですが、例え地元が田舎だろうが都会だろうが生まれた人にとってそこは故郷なので年に三回くらいは帰って日頃の疲れを癒してみてもいいと思います。

ここまで読んでくれた方、誠にありがとうございます!ではまた次回。

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