you dont cry Ⅶ
セレル・リーペイ‥‥元ヘラルテル王国騎士長にして、現在の階級は戦士長。度重なる暴走が上層部の目に止まり、先日謎の失踪を遂げた戦士長アレン・ギースの後釜、事実上の降格をされた男。元より降格されるはずだったが辺境での任務にて少し遅れてしまう、だがその程度だ、アレン・ギースの捜索願いを出し受理されたものの、セレル・リーペイは彼を探す事無く自宅に引きこもる生活が続いているのだという。
「フェイル・ドロイ‥‥か、まがいなりにも名があるならそれはそれで・・・」
ワインを一口含み、縛り上げられ口に布を当てられた男を見る。
「貴公のような者にも名がある、最初は両親に愛され産まれたのだろうが・・・なぜこうなったのか知りたいところだな。」
眠っている男は二度と目覚める事はないだろう。
「やりすぎはよくない‥‥そういうことだよ、坊や。」
目を開け眠るこの男は、私よりも先に依頼を受けた何者かに、もしくは私怨を募らせた人物か・・・どうでもよいが、仕事を奪われてしまった事に少し腹が立つ。セレル・リーペイは余程の事をされてしまったようだ、人間というのは水分が身体の半分以上を占めているはずだが‥‥今のセレル・リーペイには水分というものを全く感じない、雨の降らないひび割れた大地のようだ。
「こんな手を使う同業者は滅多に見ない・・・・一体どこの誰だ?」
身体から水分を抜いて殺すなんて私でも考え付かない、魔法でなら再現は出来るが・・・・
「腕と太ももの内側に小さな穴・・・・私も大概の死体を見て来たがこれは惨たらしいな。」
先日、デルタ―卿の若き有望株をこの手で殺めたが、さすがにここまで水気を抜くことは出来ない、考えうる中でこのような手を使う同業者は‥‥約3名。
「・・・・まさかな。」
私の想像したうちの1人、暗夜のマリー
「‥‥彼女ではないな」
次に想像したのは、紅の吸血鬼ザイード
「・・・・ザイードならわざわざ血以外の水分まで抜くか?いや、必要以上にはしないはずだ。」
なら‥‥残るは、奴だけだ。
「そうか‥‥また貴様か。」
フリアイア‥‥穢れた血の一族の追放者。