you dont cry Ⅲ
「お、おい止めてくれ!!」
「そういう訳には行かないんだよ、戦士長」
君は多くの人に恨まれ過ぎた、行き過ぎた憎しみはこういった形で君を襲う、例え私がやらなくても誰かが君を殺そうとする。
どちらにしても君はそれだけの事をしてしまったのだよ。
「あぁ俺が一体何をしたって言うんだ‥‥ま、まさか血の一族に狙われるなんて」
「我々の事を知っているなら話は早い、そういうことだ、多くの人間が君に強い憎しみを持ち私に仕事として君をこの世から排除することを頼まれた。君の命の価値はこの金貨袋二個分‥‥一体どれだけの事をしたらこんな大金へと膨れ上がるのか・・・想像もできないな。」
戦士長アレンの下半身のズボンは、一部分をじわじわと濡らし始め、嗅ぎなれた匂いが周辺に漂う。
「君はやり過ぎたんだよ。」
「‥‥ハッ‥‥ハハハハッ‥‥アーッ!!」
何かが千切れた様に笑い始めた戦士長の顔は恐怖と笑顔が交じり合い、立ち上がらせ腰に差した剣を抜かせた。
「何故抗う?諦めてしまえば楽になれるモノを。」
「うるせぇ‥‥うるせぇッ!うるさいんだよッ!!」
切りかかって来た戦士長は半狂乱と化していた。
「お前さえやってしまえばっ!!」
「・・・案外諦めの悪い人間とは思わなかったよ」
だが敬意に値する、死を恐れて立ち向かうその姿は立派な人間の姿だ、私などよりよっぽど立派な人間だよ、戦士長アレン。
「‥‥もう少し人の恨みには敏感になることだ。来世ではそういう人間になれる事を祈って居るよ。」
剣を抜いた戦士長アレンは立ち尽くして居た。胴体から首が落ち、恐怖と笑顔の入り混じった今にも叫びそうな表情、私を睨らむかのように見つめ続けていた。
「仕事を完了しました。」
「‥‥本当に殺してくれたんですか?しっかりと苦しめて生きていることを後悔させながら殺してくれたんですよね?」
後悔はしなかっただろうな、苦しめても居ない、そうしてやるつもりだったが、余りにも人間らしくてすぐに終わってしまっただけだ。
「約束の半分を頂きます。遺体は南の墓地にあります、ご確認をするなら私が去った後でお願いしたい。」
「わかりました、これが残りの半分です。ありがとうございました。これで私達は楽になれる」
依頼人の女性は顔や腕に青い痕がある綺麗な金髪の女性だ。痕はまだ新しくつけられたもののようで、生々しい痕だ。
「それではまた。」
「えぇ、さようなら」