you dont cry Ⅱ
「貴方に依頼したいのはヘラルテル王国戦士長二人の暗殺です。」
今回は王国ヘラルテルでの仕事、最初目標はヘラルテル王国の戦士長アレン・ギースという人物を殺す事。
噂はとても多い、強すぎる上昇志向と部下への度重なる度を越えた訓練と称した暴力、民間人への横暴と売春宿で女性達への異常なまでの過剰要求。一部の貴族の弱みを握り搾取する人間と聞いている。
「ろくでもない人間です、なるべく苦しめて殺してください。それでは前金として半分お渡しします。」
「・・・確かに、それで潜入の件のほうは?」
「そちらの件はご安心を、貴方は今王国に新しく採用された騎士長として配属される事にしてありますのでお名前を言ってくだされば城内に入れます。」
なるほど、それでは安心だ。
「貴方の噂・・・血の一族の噂は聞いております。復讐を生業とし類まれなる技と魔法を持っていると‥‥その腕を見込んでの依頼です、必ず成功させてください。」
「これはこれは‥‥それでは早速取り掛からせて頂きます。仕事が終わり次第またこの場所で。」
血の一族、忘れたいと思って居ても無理なようだ。呪いのように私について回るそれは身体に巡る血のようだった。
悲しい等と言う感情は捨ててしまったからもうわからない。ただ少し、寒い気がした。
「私は此度騎士長として配属されたフェイル・ドロイだ。早速戦士長と挨拶をしたいのだが、どこにいるか分かるかね?」
「貴方が騎士長フェイル・ドロイ様ですか?私はヘラルテル王国の門番をさせて頂いているピストロと申します。戦士長殿は現在野営地に出発してしまった為、しばしの間王宮の方でお待ちくださいませ。」
どうやら対象はしばらく戻ってこないらしい、少しの間騎士長に用意された部屋で休んでいることにしよう。
少し眠ってしまった為、どれくらい時間が過ぎたか分からないが窓から部屋に差し込む光は白から赤みがかった黄金へと変わっていた。
身体をソファーから起こし仕事の準備をしていると部屋の戸が叩かれた。
「騎士長フェイル・ドロイ様、戦士長アレン・ギースが帰還致しました。」
「わかった、ここに通してくれ。」
この部屋では仕事が出来ない、外に連れ出して人目のつかない場所へと連れていく必要がある。
噂通りの人物であれば酒と女性を使うことになるだろう。
「戦士長アレン・ギース、お待たせしてしまい申し訳ございません騎士長フェイル・ドロイ殿」
「あぁ、入ってくれ。」
ふむ・・・噂通りの人物そうだ。
「何か御用でありましょうか?騎士長殿」
「あぁ、この王国に着任してばかりでな、この王国の娯楽や施設を確認したいのだが手の空きがなくてな、君に案内してもらおうと思ったのだ。構わないな?」
「はっ・・・了解しました。」
娯楽と言う言葉に反応を示した目標は何やら楽しそうな表情をしている、好都合だ。
外に連れ出すことに成功した私は人目のつかない場所を探しつつ相槌を打ちながら酒場を案内させた。
「一番強い酒を持ってこれるだけ頼む」
「き‥‥騎士長殿、よろしいので‥‥?」
「あぁ、君も飲むといい、ささやかなお礼だ。断ってくれるなよ?」
「はっ・・・はい!」
眠るほど飲ませてやろう、起きたらどうなっているか‥‥知らないがね。
では‥‥始めようか。
仕事を。