i didnt cry Ⅲ
「レイモンド‥‥私達の弱さが‥‥お前を独りにしてしまう、許してくれ。」
「レイモンド、貴方は強い男になるのよ。独りでも大丈夫、貴方のお父さんは弱いから、私が付いて行ってあげないといけないの。でも貴方は大丈夫‥‥でもごめんなさいね、もっと一緒に居てあげたかったわ。」
「‥‥済まない。」
私は、これから未来のある子供の両親を、奪う。
「仕方ありません‥‥私達黒騎士は‥‥汚れ仕事をこなさなければならない身であり、こうなることもわかっていました。貴方を責めるつもりはありません‥‥ですが、私達の子供が貴方を恨むでしょう‥‥そうなればきっと力をつけて挑んでくると思います‥‥その時は‥‥許してやって欲しい、そして、一思いに‥‥」
母親の口から子供の未来について、一言言われた。
すまない‥‥謝ることしかできないのだ、お前達を狩らなければ‥‥そうしなければお前達の子供も危ない。
「私達のような、国の汚職を隠す役目の者達はみな‥‥獣になります。黒騎士達は元々、貴方達と盟約がありますから‥‥覚悟はしておりました。」
「あぁ‥‥血の盟約は絶対だ。だが‥‥お前達の中の獣が‥‥あまりにも早く成長し過ぎてしまった‥‥すまない。」
「良いんです、醜い化け物になって、子供に手をかけるかもしれない私達を‥‥救ってくださるのですから。私達の子を守ってくださるのと同じことです、ただ‥‥ワガママを言っていいのなら‥‥」
父親は‥‥涙を流し、枯れた声で言った。
「もう少し、息子の傍に‥‥レイモンドの傍に、居たかった。」
母親は、目を瞑り、澄んだ声で言った。
「息子を‥‥お願いします。」
「‥‥‥‥いつまでこんなことを続けなければならないんだ。私は。」
痛みと苦しみを与えぬよう、声もあげさせず確実に、首を落とした。
父親の目はカッと見開かれ、悲しみに満ちていた‥‥私はその目を閉じさせて‥‥風にさらされない様に、焼いた。
「お前達の息子は奴らに渡さない‥‥必ず人として、死なせよう。」
「はい‥‥それでは、私も、夫の所に‥‥お願いします。」
「あぁ‥‥すぐに追いつけよ。」
目を開けさせない様にして正解だった‥‥お前の夫は、まだ追いつける場所に居るはずだ。
「‥‥‥‥必ず、追いつけよ。」
灰となり、煙や塵となった夫婦は空へと昇っていく。
私は‥‥いつお前達の所にいけるのだろうか。謝っても謝り切れないことばかりだが‥‥お前達に言いたい。すまなかったと‥‥私達の呪いが、お前達の‥‥未来を閉ざしてしまったことに‥‥謝りたい。