i didnt cry Ⅰ
どんなに時間が流れても、どんなに洗っても、決して取れることのない染みついた血の匂い。
どうやっても逃れられない‥‥血族である私が血族足らしめている血の呪い。
「どうしてウル様は‥‥心で血の涙を流しているのですか?泣きたいのなら‥‥泣けばいい良いのでは‥‥?」
そうはいかない、すべて終わらせるまでは許されないのだ。
「ウル様がどんなお仕事をなさっているかわかっております。ですが‥‥ワインだけで貴方様の心労は癒せません。」
わかっている‥‥魔の長を殺したことであと5人‥‥5人の魔の上位者達を殺せば終わるのだ。こんなバカげた呪いも、私達血の一族も‥‥終われるのだ。
「ですが‥‥」
何も言うなアイラ、お前は自分の事だけ考えておればよいのだ。
「‥‥フレイ様が消えてしまった日から一度たりとも私達に笑顔を見せてはくれておりません。アイラは‥‥辛いのです、それだけではありません‥‥お仕事を終えて帰ってくるたび決まってワインを口にしながらお一人で涙を流されていた、それすらも‥‥」
良いのだ、すべては私の運命。受け入れている。
「ウル様‥‥」
「良い‥‥今夜はもう遅い、部屋に戻れ」
「‥‥はい。失礼致します。」
アイラ‥‥君の私を心配をするその目はフレイによく似ている。私はその目で見つめられる度にすべてを吐き出してしまいたくなるのだ。
だがそれだけはしてはならない、私達一族の業は‥‥最後の一人となった私が全て持っていく。