baby don't cry Ⅲ
今回の仕事の目標人物、王国最強の騎士”マグダルド・アニュー”の暗殺‥‥胡散臭い小太りの汚い男が私に依頼をしてきたのだ、汚い歯並び‥‥下衆な笑い方と顔が歪んでしまうほどの口臭と異臭、ある程度の拷問には馴れているし何も感じない私でも辛いと思うほどだった。
「へへへっ‥‥旦那ぁ‥‥マグダルド・アニューって知ってますかぃ‥‥? あの男‥‥殺してくれやしませんかね? 俺様の計画に邪魔なんですよあの男ぉ‥‥」
「ほう‥‥〈咳払い〉、なぜ私にそんな事を頼むのだ?」
私を誰かと知って居ての依頼に間違いないが、あまりにもの匂いで頭が回らず余計な事を聞いてしまう。
「へっへっ‥‥あの男が王国に来てからあっしの商売がねぇ‥‥? 上手くいかなくなっちまいましてぇ‥‥」
「貴様の商売か‥‥私になんの得があるというのだ? 調べはついてるとは思うが言ってみろ」
「はっはぁ!! またまた御冗談を‥‥あっしにはわかりますよぉ‥‥旦那ぁ、金を貰えれば好んで人を殺してくれるっていう”血の者”‥‥でございましょう?」
ふっ‥‥
「‥‥受けようその依頼、いくら出す?」
「ありがとうございやす旦那ぁ‥‥ざっと‥‥こんなもんでどうでしょう?」
後ろで小さな少女達が虚ろな目と顔をして袋を持ってきた‥‥ほう‥‥? 領地が持てる程の金塊とは、さしずめ貴様の商売とやら、そう言う事で稼いだのだろうな?
「あっしの商売の邪魔ばかりするんですよぉあの男、それじゃあお願いしやすよ旦那ぁ‥‥へっへっ‥‥おい、行くぞ豚共。」
「ハイ」「ハイ」「ハイ」
声を揃えて小汚い豚へとついていく少女達を私は引き留めた。
「ところで‥‥依頼人、その者達、私が買おう」
「おやおや‥‥旦那も良い趣味してますねぇ‥‥いくらで買います? 安くしときますよぉ‥‥?」
「値段はこちらが決める」
「‥‥ふむ? どういうことで?」
ちょうど人手が欲しかった所だ、もちろん対価は払おう。
「最近屋敷の人間が次々と故郷へと帰っていくものでな、手が足りないのだがその少女達の対価は、これでよいか?」
「へぇ‥‥それで? ‥‥ぐっ‥‥!?」
私は貴様のような臭う人間は大嫌いでね、それに、その少女達には利用価値があるから使わせてもらうだけのことだ。
「へっ‥‥へっへへ‥‥じょ、冗談‥‥がっ‥‥」
「貴様の命では足りないかもしれないが‥‥まぁ、そんなことでもどうでもよいか。」
「っへっへ‥‥」
少女達は目の前で腹を貫かれた小汚い豚を見て、みるみるうちに虚ろな顔に血が戻り色を取り戻していく。
「‥‥へっ‥‥?」
「何を惚けている、君達にはこれからここで働いてもらう、食事と寝床に給料は約束しよう。」
「な‥‥なにが、お、おこっ‥‥」
「こんな寒い中をこんな小汚い豚に連れられ歩いてさぞ辛かったろう、おいガイス、後始末とこの者達に治療と食事、風呂に衣類の用意を急いでしろ、我が家の絨毯をこんな豚の血で汚すな。」
ガイス、私が小さな時から執事として働いている男の名だ。
「ウル様‥‥もう少し緩急をつけて頂けると助かるのですが‥‥お嬢様達、突然ですみませんが、こちらへどうぞ。温かいものをご用意いたします。」
「早く入りたまえ、屋敷に冷たい空気が入ってしまうだろう?」
「は・・・・はい」
まったく、拷問のような依頼だったな今回は。