番外編・絵里たんのぽわぽわ絵日記
「ふぅー……これでよしっと」
実家に帰って来た俺は荒れ果てたかつての我が家を片付けていた。全く、あのクソババアめ……突然家に帰って来いって言うから何ごとかと思えば、掃除の手伝いかよ……息子をなんだと思ってんだ。
「黙れ小僧!!」
「うるせえ!!てめえが黙れ!!」
「お前にあたしが救えるのか!!」
「だから、こうして救いに来てやったんだろが!!」
全く……この理不尽さには驚きだぜ……あ、そうそう驚きと言えばもっと驚いた事がある……それは……
「おい、良平……ちょっと、父さんの腰にシップを貼ってくれ……」
サファリパークに捨てられた親父がぎっくり腰だけで帰って来た事だ。全くこの夫婦はどんなバケモンなんだよ……よく、ライオンに食われなかったな……
「いやいや、それでもあいつら足が速いからな……なかなか肉にはありつけなかったよ……仕方ないから、肉をくわえたライオンを片っ端から襲って食料を奪っていたんだ」
食われるどころか食料奪ってたの!?
「冷蔵庫にお土産のお肉あるから食っていいぞ」
しかも、土産に持って帰れるほど奪っていたの!?お前、マジで何もんだよ!?もう、バケモンだよ!!
「信じられねえ怪物夫婦だぜ……ん?」
ぼやきながら新聞をビニール紐で縛っていると、その間に古ぼけた一冊のノートを見つけた。しかも、そのタイトルが……
――絵理たんのぽわぽわ絵日記――
痛々しい!!母よ!!世紀末救世主伝説ごっこをリアルにするのは構わないが、こっち方面に向かうのだけは勘弁してくれ!!息子としてはメラゾーマをかけたくなる気分だから!!でも、中にはどんな事が書いてるんだろう……
―――12月4日―――
今日、良平がカニとイクラを食べたいとほざいた。とりあえず5発殴った。
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これのどこがぽわぽわ!?ただの虐待日記だよね!?おい、これ警察持っていきゃ証拠になるよね!?あいつ、ムショにぶち込めるよね!?いや、待て続きがある……
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今日、良平がカニとイクラを食べたいとほざいた。とりあえず5発殴った。泣き喚いた。少しやりすぎたかな。あたしもカニは食べたいし、たまには息子の願いを叶えてやるのも母親の勤めだと思い、面倒だが、イクラとカニを獲りに行った。
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母さん……なんだよ、あんたにも意外と母親らしい感情が……ん?獲りに行った?買いに行ったの間違いではないのですか?
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家を出て歩くこと30分。青森に着いた。
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おい、ババアアアァァ!!お前、東京〜青森間の距離どれぐらいか知ってんのか!?新幹線でも30分は絶対無理だぞ!!それを歩いて!?お前一体どこの時空を歩いてたんだよ!!
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家を出て歩くこと30分。青森に着いた。大間岬にて水着に着替えると真冬の津軽海峡に飛び込んだ。水が少し冷たかったが、泳ぐ事20分、オホーツク海に出た。カニ漁をしている漁船に見つからないよう、3kgのカニを捕獲して知床岬に上陸した。
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お母様!?あんた真冬の津軽海峡に水着で飛び込んだの!?それ自殺以外の何物でもないよ!?しかも、そのままオホーツク海まで直で行ったのかよ!!あと、漁船は確実にあんたのこと見つけていたよ!!見つけていたけど、ありえなさすぎて見て見ぬふりしたんだよ!!
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駆けつけた警官を殴り倒し、衣服を奪うと山中にてサケを徒手でゲット。手刀で腹を裂きイクラを取り出すと、津軽海峡線の電車に飛び乗り青森に戻った。
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警官の服奪ったって……お前はターミネーターかよ!!しかも、なんだよ!!電車に飛び乗ったって!!お前どこのアクション俳優!?MI6でもそんな無茶させないよ!?
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冬の気温が低いとはいえ、イクラとカニが腐らないよう青森から少し駆け足で東京に向かった。おかげで5分で家に着いた。
自宅にて良平と奴隷にカニとイクラを調理させた。美味。しかし、今日は少し疲れた。
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だから、なんで青森〜東京間の距離を無視してんだよ!!5分ってそれどこの時空だよ!!ていうか、それだけのハードスケジュールをこなしてよく「少し疲れた」だけですんだな。範間勇次郎でもそれはないよ?
ていうか、あの時のカニとイクラは「タダで手に入れた」とか言ってたけど、まさか本当だったとは……
「もう……もう、母のことは突っ込まない……あの人はもう……さりげに親父までも怪物になってたけど……いや、なんでもないです……もう、いいです……というわけで、次回……」
「番外編・ポチクロ」
「はぁ……やっぱ動物って癒される……」