番外編・オレオレ詐欺師の奮闘記・出張サービス
俺の名は天才詐欺師エース。本名は秘密さ。俺の得意な詐欺はオレオレ詐欺。そう、電話を使い、相手を騙し、巧妙な手口で俺の講座に金を振り込ませる、ローリスクハイリターンな詐欺さ。
今日のターゲットは加茂絵里と言う主婦だ。この女の息子は高校に落ちて、その後なぜか徒然荘というアパートの管理人になったから、俺の設定は不動産業者と言う事にしておこう。そして、息子がアパートの住人とトラブルを起こし、相手の住人が50万を払わなければ刑事訴訟も辞さないと言ってきてるとしよう。
この50万という金額がポイントだ。無理に高い金額を要求すれば、この話自体が不自然に思われ不信感を抱かせる事になる。だが、ギリギリこれぐらいなら払えるという金額を提示する事により、冷静に考えるより、かわいい息子のために急いで支払わなければと思い込ます事が出来る。この家庭の年収から考えるなら、50万が妥当だろう。
よし、一度シュミレーションしてみよう。
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“プルルルルル……ガチャ”
「あ、もしもし加茂様のお宅でしょうか?」
「はい、そうですが……どちらさまでしょう?」
「失礼いたしました。わたくし、エース不動産の山田太郎と申します。実はお宅の息子さんが管理人をなさっているアパートで、息子さんが住人の方とトラブルが起こしてしまい、相手の方が……なんと、申しましょうか……少々普通の職業の方ではなく……いえ、この際ハッキリと申し上げます。暴力団の方が息子さんを訴えると言っているのです」
「ええ!?息子がですか!?」
かわいい息子が、それもヤクザに訴えられるかもしれない……母親にとってはこれ以上にショックな出来事はないだろう。動揺を誘える事は確実だ。しかし、下手をすれば……
「警察……警察の方を挟んで話せば!!」
などと言い出すかもしれないな。だが、そんな時はこう言えばいい。
「落ち着いてください、奥さん!!相手はヤクザですよ?その時は丸く収まっても、後で息子さんをどんな目に合わせるか分かったものではありませんよ」
「あ……」
「それに相手は息子さんもまだ子供だと言うので、今回は50万の慰謝料を払えばなかった事にしようと言っているんです」
「50万……それぐらいな何とかなります」
「よかった……それでは、今から言う口座に至急50万を振り込んで下さい。後は私の方で何とかしますから」
「はい、分かりました!!あの……」
「何か……?」
「何から何までありがとうございます……」
「いえいえ、それが私の仕事ですから……」
それにお礼を言うのは私の方ですよ……奥さん♪
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完璧だ……完璧すぎる!!これなら絶対に上手くいくはずだ!!よし、それじゃ早速、受話器をとって番号をプッシュと……
“プルルルルルルル……ガチャ”
「あ、もしもし加茂様のお宅でしょうか?」
さあ、狩りの始まり……
「黙れ、小僧!!」
だ…………黙れ小僧!?うん!?え!?あれれ!?何かおかしいよ?この人黙れ小僧って言った!?今、言ったよね!?電話かけてきた人にいきなり……ええぇ!?
いやいや、たまたまいたずら電話とかに悩まされてる時にタイミング悪くかけてしまっただけかもしれない。これしきのことでひるんでどうする、エース。お前は天才詐欺師なんだから。な?気を取り直して……
「あ、あの……私エース不動産の……」
「お前にサンが救えるのか!?」
ええええぇぇぇぇ!?それ……あれだよね!?ジブリのビーストプリンセスだよね!?何で!?電話かけてきた人みんなにそれ言ってるの!?何この人!?絶対頭おかしいよ!!ミワさんの怨霊にでもとり憑かれてるの!?変なオーラが泉のようにあふれ出ちゃってるの!?
“ガチャン!!ツー……ツー……ツー……”
きりやがったよこのクソババア!!なんだよこいつ!!騙す以前にどうやって会話したらいいんだよ!!もう、訳分かんねえよ!!
「もう、丸分かりのオチじゃねえか……ネタに困ったからってこんな奴出すなよ……で、次回はどんな話?げ!!また、ババアメインかよ!!もう、勘弁してよ!!」
「番外編・絵理たんのぽわぽわ日記」
「ぽわぽ……え?何これ?何かの入力ミスだよね?」