第74話 生まれ変わった都羽姫
一難去ったらまた一難。せっかく、都羽姫の体にパラサイトしてやがった窮奇を倒したのに今度は都羽姫の命を狙ってる夜行のおえらいさんがこちらに向かっている。しかも、そいつは天童と俺が束になってかかっても敵わないような大妖怪らしい。万事休す……そう思ったとき、先輩の口から……
「だって、管理人さん言ったでしょ?玉希ちゃんは、天童君でも倒せない怪物を倒すための助っ人だって。でも、天童君がやっつけちゃったよ」
「あれ……そう言えば……いや、でも、あの時は確かにオッシーがそう考えたんじゃないかと思ったんですけど……」
「その事なんだけどね、管理人さん……」
この時、先輩はいつもと何かが違うオーラを発していた。天然ゆえに野生の勘が働いたのか……
「オッシーはそんな事、考えないと思うの」
「え……?」
あるいは、見た目は子供、頭脳は大人の名探偵小学生が乗り移ったのか……こう言った。
「あの子なら、きっと都羽姫ちゃんの事も助けてあげて、って言うと思うよ」
「あ……」
「だから、玉希ちゃんの本当の役目は都羽姫ちゃんを助ける事なんじゃないのかな?」
それだ!!ナイス助言です、先輩!!これで、事件の謎は……もとい、どうすればいいか分かったぞ!!
「玉希ちゃん!!君たち妖狐族って狐の妖怪だよね!?」
「今更何を……そうですけど、それが何か?」
「なら、変身とか大の得意なんじゃないのかな?」
「変身ではなく変化です。いいですか。私の先祖・白面金毛九尾の狐こと、玉藻前様は化粧前とも呼ばれ、化粧を施せばまるで別人の……よ……う……なるほど」
よし、そうと決まれば善は急げだ!!
「ささ、都羽姫ちゃん!!お召し物を脱いで、脱いで!!」
「え、え、え?何で!?てか、良兄……何する気!?」
「いいから、いいから♪これも君のためなんだ!!」
「やああぁぁ!!」
すまない、都羽姫……どうやら、またあの先祖に体を乗っ取られてしまったらしい。こんな事……本当はしたくないんだけど……体が勝手に動いちゃうの♪
「待て、良平!!」
「天童……」
「俺にも手伝わせてくれ!!」
「オッケーブラザー!!」
「これ、スカートってどうやって脱がしたらいいのかな?」
「やああ!!離せバカ!!触るな!!」
何やらいたいけな少女が、頭を叩きながらわめき散らしたりと、必死に抵抗をしたが、テンションの上がりきった男たちにはまるで通用しなかった。ビバ、思春期パワー。
しかし、俺たちは大事な事を忘れていた。
「こんのバカ男どもは……」
玉希ちゃんがいたことを……
「ミイナちゃん!!出番よ!!」
「うにゃああ!!」
CP9がいたことを……
「「きゃあああぁぁぁ……」」
“バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ”
バカ2名の悲鳴と人間が肉塊へ変わっていく嫌な音が森の奥に木霊した……
――10分後――
“バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ、バキ、ゴキ、ガス、ドス、ドム、ドム、ボカ”
あの……ミイナさん……すいません……いい加減、勘弁してください……マジで死んじゃう……
薄れ行く意識の中そう思ったとき、玉希ちゃんの救いの声が聞こえた……
「ミイナちゃんー、もう終わったからいいわよー」
「は〜い」
玉希ちゃ〜ん、僕たちの人生も終わりそうですよ〜
「さ、都羽姫ちゃん。生まれ変わった姿を見せてあげなさい」
「う、うん……」
恥ずかしそうに玉希ちゃんの前に出てきた都羽姫の姿は本当にかわいかった。
ツインテールの髪は真っ赤に染められ、白い肌とオッドアイの瞳に良く合っていた。そしてどこから用意してきたのかお姫様のような純白のフリフリワンピと同じ色の日傘。そうだね……ここは正直な感想を言おう。
「ああ……かわいいよな……天童?」「俺も……そう思うよ」
「あ……ありがと……」
都羽姫の顔が凍りついていた。無理もない。どっちかっていうと変身したのは俺達の方だからな。
「とにかく、これで顔は何とかごまかせる。後は名前だな……」
「名前?ねえ、良兄。あたし名前も変えなきゃダメなの?」
「まあ、一応……別人になるわけだから、生まれ変わったつもりで。な?」
「うん……」
こいつにとっては複雑な気持ちかも知れないな。何せこいつの名前は親にもらったもんじゃなく、自分で考えたものだから……“都”に住んでいた“羽”の生えた虎の末裔で、お“姫”さまを夢見るから“都羽姫”か……なら。
「なあ、お前の名前……俺が考えてもいいかな?」
「え?良兄がきめてくれるの?………………いいよ」
「よし、じゃあ、お前には“友”達がたくさん出来た。そしてお“姫”様にもなれた。だから、お前は今日から友姫だ」
「友姫…………」
「嫌か……?」
「べ、別に嫌じゃないけど……まあ、良兄がどうしてもそう呼びたいって言うならそれでもいいよ?」
大変、気に入ってくれたご様子だ。
だけど……こんなんで本当に上手くいくのかな?