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第7話 隣のデュークは賛美歌13番!?

 気づけばもうとっくに日が暮れている。半日かけて人の家をリフォームした俺は疲れきった心と重たい体を引きずるようにアパートの階段の踊り場までやってきた。そこで気になる人物に気になる疑問……というか苦情をぶつけてみたいと思う。よし、そうと決まれば早速携帯を取り出してレッツリダイヤル!


『はい、もしもし藤崎ですけど。どうかしたの?少年?』

「ああ、藤崎さん?2階に住んでる藤崎・・ミイナはあれ何?お宅の娘……じゃないよな?年齢的も種族的にもそれはないかも知れないけど、同じ藤崎ってあんたと何らかの関係があるってことだよな?」

『うんにゃ、あの子はさ……元野良猫でね。名前はあったんだけど苗字がなかったら、それじゃ不便だろって思ってあたしの藤崎って名前をあげたの』

「へえ……そうなんすか……」

『あの子さ……かわいそうな子だから優しくしてあげてね。あたしの用件はそれだけ。じゃあね』

「いや、あのちょ……」


“ブチッ……ツー……ツー……”


 おいいぃぃぃ!!俺の用件くじょうがまだだろうが!!なんで先に切るんだよ!!俺の話も聞けよ!!でも、もう一回リダイヤルしてもあの人の相手すんのは何か疲れるし、腹立つし、もういいや……それにしても先輩がかわいそうな子ってどういう意味だ?頭がか?まあ先代管理人ふじさきさんの言うことを聞くのは癪だし、先輩はちょっとどころか、かなり性格が最悪だけど、かわいい子には優しくするのが俺のモットーだからな。出来うる範囲で優しくするよ。


 不承不承ふしょうぶしょうながら自分を説得しあざむき俺は階段を下りていった。するとアパートの庭、つまり一階に並ぶドアの前に広がる敷地内で妙なことをしている男が居た。


 さらさらのロングヘアーを頭の後ろで縛ったその姿はまさに現代に生きる侍ボーイといった感じだ。少し前髪で隠れているけどその顔は美少女顔負けの美しさがある。しかし、その目は漢と書いておとこと読む者が持つそれだ。何より女は上半身裸で日本刀を持って精神統一なんかしないだろう。それにしてもとんでもねえ体してやがる。こいつ体脂肪ないんじゃないの?マジでヒッティングマッスル?といいたくなる筋肉だ。そしてジーパンを黒いブーツの中に突っ込んでいるその姿はハリウッドのアクションスターを思わせる。マジで何かの映画にでたんじゃないだろうな?


 何てことを考えていたら、そいつは突然目を見開き、刀を鞘から抜き放ち、何かを切った。目をこらしてよく見るとひらひらと舞い落ちるサクラの花びらが真っ二つになっている。剣術のことなんか全然わかんねえけどそれが凄いことのような気がしたのは本当だ。


「お前が新しい管理人か?」


 目も合わせずにそいつは言った。恐い。確かに恐い。見た目は人間なのに、明らかに人間とは何かオーラのようなものが違う。ひょっとしてこれが妖気って奴なのかな?いや、そんなことより取り合えず自己紹介をしておこう。


「ああ、俺は加茂良平っていうんだ……」

「天童修司。隣に住んでる」

「あ、ああ。それは……」

「けど、あんまり馴れ馴れしくするな」

「は……なんで?」

「殺しなんて仕事をしてると嫌でも恨みを買っちまうからな。お前が巻き込まれて命を落としても俺は責任取れないぜ……」


 はは……なるほど……確かに美樹ちゃんの言うとおり恐いけどいい人だ。こいつは一匹狼を気取りたがるロンリーウルフとは違う。自分が生きる修羅の道に他人を巻き込みたくないという優しさがある。ならばここはこいつの気持ちを汲んでやるのがベストだろう。


「分かったよ。俺も命は落としたかねえからな」

「そっか……」


 俺の気持ちを察したのか、天童はそれ以上何も言わず刀を鞘に納め、それをゴルフバッグにしまうとタバコを吸いながら自分の部屋に入っていった。俺は何も言わずその後ろす姿を見送った。ドアの横には猫水のように空の一升瓶が並べられている。あいつには友達や仲間なんて要らないんだろう。愛と勇気だけが友達の正義の味方がいるんだから、酒とタバコだけが唯一の仲間という殺し屋がいてもおかしくはないだろう?


……


…………


………………


 なーんて、シリアスな台詞はアクションとかハードボイルドのジャンルでやってもらえばいいとして、ここはコメディらしく突っ込むべきとこは突っ込んでおかないとね?みんな、準備はいいかい?それじゃいくよ?



リピート・アフター・ミー



何で日本刀なんか持ってんだよ!?

お前は何時代の人間なんだよ!?

今は平安じゃねえんだよ!!平成なんだよ!!

てめえは未成年の飲酒や喫煙に関する法律だけじゃなくて銃刀法も知らんのか!?

しかもカタナ・イントゥー・ゴルフバッグってお前それ完全にヤクザの発想だよ!!

その上さらりと「殺しなんて仕事をしてる」

そんな爆弾カミングアウトはいらねえんだよ!!

何なんだよ!隣のヒットマンは賛美歌13番ですか!?

料金前払い、スイス銀行の指定口座に振り込んでくださいね、ってか!?

お前そんなネタ少年少女に分かるわけねえだろ、ボケエエェ!!

お前そんなの分かるの大きいコミック読んでる大人の人たちだけだよ!!


 おいいぃぃ!!これはマジでシャレになんねえよ!!いくらコメディだからって許されるわけねえだろ!!こんなの笑えねえもん!!特に俺が!!二階に住んでるCP9がかわいく思えてきたよ!!だってあいつはGを殺しまくってたけど、こいつは殺しまくってるGだもん!!成功率99.6%だもん!!進学率よりたけーもん!!マジで斬る仕事している人だもん!というかKill仕事か!?いや、どっちにしても一緒だ!!こんなの即、通報だよ!通報、逮捕、連行、死刑、射殺の必殺コンボかましてくれよ!!神が許さなくても俺が許すからさ!!

 だが相手はFBIやCIAでさえ恐怖する鬼の殺し屋。人間の警官が向かったところで返り討ちにあうのは目に見えている!ここは一つ、隣に住む妖怪警察24時に頑張ってもらいましょう!

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