第65話 霊界偏・その2
前回のあらすじ……ある日、三途の川、ご先祖様に、出会ってしまった。
「つかさ、あんた俺に一体なんの用があるの?」
「ふむ、お前の望む物をくれてやろうかと思ってな」
「俺の望むもの?何だそれは?」
「ふ……」
クマが不適な笑みを浮かべた。クマの分際で生意気な。
「お前がここに来る前に欲したものだよ」
「ここに来る前……まさか!!」
「そう、お前が望む力をくれてやろう。それも生き返る方法をセットにしてな」
「マジっすか、ご先祖様!!あんた、なんていい奴なんだ!!」
「うむうむ」
「今度のお盆にはちゃんと墓参りに行くよ!!」
「よしよし。では、早速修行に入るとしよう」
え?ちょ、待っ、修行?何言ってんの、こいつ?
「辛く厳しい修行になるが……なに、ほんの3ヶ月の辛抱だ」
は?3ヶ月?ふざけんなよ?
「ん?どうした、マイ子そ……」
“トポン”
「ちょっとおおぉぉ!!いきなり何してくれてんだよ!!私は泳げないんだよ!?」
「うるせー、クソの役にも立たない無職プー太郎め。何が3ヶ月だ、ふざけんなよ。お前この作品の第1話がアップされたのいつか分かってんの?去年の4月10日だぞ!?もうすぐ1年越しちまうよ!?それでも最終話が見えてこないんだぞ!!もういい加減、読者もうんざり気味だよ!?その証拠にコメント書いてくれたのたったの二人だけだもん!!もう、みんな心の中では「もういいから早く終わっちゃいなよ」とか思ってんだよ、絶対!!そんな時に3ヶ月も修行なんかしてられるか!!作者だってもたねえよ!!別の連載とか、別のサイトとか、スパロボZ更新したいんだよ!!お前、それ分かって3ヶ月とか言ってんのか!?あぁん!?」
「ブクブク………………」
「あ、いけね……」
ここでマジに溺れてもらっちゃ俺が困るんだよ。仕方ねえ。ここは助けるとするか。
「よっ……こらせ!!」
「ふー……死ぬかと思った。あの世で死ぬというファインプレーをしてしまう所だった」
半分は自業自得だ。残りの半分は作者のせいだ。俺は何も悪くない。
「良平よ、力をやる前にお前に聞いておきたい事がある」
「何だよ、急に改まって」
「力が欲しいか……?」
「は?何言ってんの?欲しいって言ってんじゃん」
「力が欲しいのなら……くれてやる!!」
「…………」
“トポン”
「ふざけんなよ、てめえ。何でよりによってARMSをチョイスしてんだよ!!せめて、DRIVEだろ!!」
「ごめん、ごめん!!一度でいいからジャバウォックやってみたかったんだよ!!もうしないから!!ふざけないから!!」
何が聞きたい事があるだ。お前ただそのネタやりたかっただけじゃねえか。真面目にやれよ。
「分かった。では一つずつ、順を追って説明して行くぞ」
「ああ、頼む」
「良平よ、この世には2種類の人間がいるのを知っているか?」
どこかで聞いた事あるようなフレーズだな?この場合は……
「勝者と敗者……かな?」
「それも一理……だが、正解とまではいかん」
「え、普通そうだろ?」
「否、お前と私だ」
「いやいやいや!!それこそ否だろ!!もっと周りを良く見て!!他にも色々いるよ!!お魚さんやお花さんやオ○マさんとかたくさんいるよ!?」
「そうではない」
「……?」
「人が対峙する数は常に1……もしくは0だ。分かるか?」
それはつまりこうやって面と向かって人と会話したり、何かをするのは1体までが限界ということか?
「おい、ご先祖様。非常に興味深いご意見だがよ、あの神社の入り口で襲ってきた鬼たちとの戦闘はどうなる?あれはどう考えって一対一じゃねえだろ?」
「あれもまた然り」
「どこがだよ!?俺はあのとき同時に2体の鬼を相手にしたし、天童に至っては30体以上だぞ!?」
「否、それは結果論に過ぎぬ。良く考えてみよ。お前が鬼Aと対峙している、すなわち戦っているまさにその瞬間に、鬼Bとも戦っていたか?」
「ああ?どういうことだ?」
「分かりやすく言おう。秒単位でその光景を見るとどうなる?さらにその光景を細かくしていけば、果たしてお前は同時に戦っていたと言えるかな?」
「……あぁ、なるほど。つまり、鬼Aの攻撃をかわしてから、鬼Bの攻撃に対応して……ってな具合に順番に一体ずつ相手にしていったってことか?」
「その通り。それ、すなわち1か0……この世の全てを表す理なり」
こ、この世の全て!?おいおい、人の限界からいきなりとんでもないスケールの話になっちまったけど、どういうことだ?
「1と0……男と女……光と闇……白と黒……この世の全ては相反する二つの属性によって成り立つ」
「人は一人じゃ生きていけないってうあれか?」
「全然違う。それに、人は一人でも生きていけるぞ。ただ、寂しいだけだ。こんな事、言わなくてもお前は良く知っているだろう?」
「な!?人を寂しい奴みたいに言うなよ!!俺は結構友達とかいるよ?」
「だが、お前の友の中にはお前以外に友と思える者がおらぬ者もいる」
「あ……」
天童……
「ふむ、あ奴とあの娘は似ておるな……」
「天童とあの窮奇がか!?」
「………………そうだ。どちらも憎しみを糧に復讐を心を拠り所に生きてきた。ただ、一つ。違うのは……あの少女の復讐は永遠に叶わない」
「どういうことだ?あいつは誰を憎んでいるんだよ?」
「自分を生み出した世界全て……そして、自分の存在を認めない者全てだ。それゆえに孤独。それゆえにお前たちのつながりが眩しく、また恐ろしかったのだろう……」
「そんなの……そんなのただの八つ当たりじゃねえか!!それに、あいつの方がよっぽど恐ろしいよ!!」
「ふむ……」
クマが黙り込んじまった。俺、へんな事言ったかな?
「おい、どうしたんだよ?」
「ふむ……いやな、あの未熟な少女のどこが恐ろしいのだろうと、考えていたのだよ」
「あいつが……未熟?どういう事だ?」
「あの娘の最たる特徴はただすばしっこいだけ。それだけだ。それ以外は特に剣が使えるわけで無し、誰かを殺せる度胸もない……」
「タイム!!物の怪目録には確かにあいつは大勢の人間を……」
「あんなもの信じるな」
「え……」
ご先祖様が始めて声色を変えた……どすの利いた、恐ろしい怒りの声だ。
「大人はいつだって自分たちの都合のいいように真実を捻じ曲げる。奴らは悪だ。それゆえ討たねばならぬ……などとな」
「違うってのか?」
「良平、悪とは何だ?」
何で質問に質問で返してくんだよ、このおっさんは。ていうか、悪とは何だって言われても……その質問自体何なんだよ。
「あれじゃねえの?悪っていや……悪い奴?」
「否、悪とは正義に対峙する者」
「それじゃ同じだろ」
「違う。断じて違う。正義が必ずしも正しいとは限らぬ。正義など所詮、戦いの勝者に過ぎぬ。そして、敗れたものは自然と悪というレッテルを貼られ、それが後世まで続くのだ」
「つまり……悪い奴がいい奴に勝ってもそれが正義になっちまうと、そう言う事か?」
「そうだ……悲しい事にな」
「そんなの間違っている気がする……でも、今の俺にそんな世の中を変える力なんてない。あったとしても……正直、そんなでっかい事する勇気はない。けど……けど!!悪のレッテルを貼られて命狙われているような奴がいたら、ましてそれが女の子なら助けたい!!だから、教えてくれ!!あいつは一体何者なんだ?どうして世界を憎む!?俺はどうすればいい!?」
「やれやれ……一度に聞かれても困ると言うに……ま、いいだろう。どうせ、それも教えるつもりだった。お前たちの下らない過ちもな」
俺たちの下らない過ち……?