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第64話 お待たせしました霊界編

 幻想的なまでにピンク色な空。見た事もないような綺麗な花たち。心を落ち着かせるようなせせらぎの音。どうやら、都羽姫に斬られた上に心臓ぶっさされた俺は三途の川に来ちまったらしい。そして、これからどうしようかと途方にくれていると俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、俺はゆっくりと振り返った。


「よう、少年……」


 威厳のある重い声……


「また会ってしまったな……」


 ガチャガチャと響かせる武者鎧の音……


「と、言っても久しぶりとは言いがたいが……」


 武士道を最後まで貫き通した男・堺甚五郎……の肩にラジカセ?


「ひとまずはー♪拙者のー♪」


 あれ?武者鎧の上から……アロハ!?


「ラップを聴きやがれ!!」


 何かヒップホップに目覚めてるううぅう……


「キャー!!ジンちゃん、素敵よー!!」


 しかも女まではべらせてるううぅぅ!!

 おいいぃぃ!!武士道どこに消えうせたんだよ!!お前昇天してから再登場する2話の間に一体何が会ったんだよ!?


「いや、何かー?現世でテンシュー・ジードーと?軽くバトったつったら?こっちでテーモーテーモーみたいな?」

 

 うん、とりあえずその六本木でブイブイ言わせてた80年代のプロデューサーみたいな喋りかたやめて?腹立つから。


「ウィッシュ!!」


 殴っていい?


「え、あんた甚五郎さんだよな?」

「イヤァー!!」


 何それ?肯定してんの?否定してんの?馬鹿にしてんの?


「え、ごめん落ち武者の……甚五郎さんだよね?」

「イヤ!!俺がヒップホップのカリスマDJジン!!」

「あ、もういいわ。ちょっと、こっち来て」

「ワッツ?」

「そうそう、そこに立ってて……」


 面倒くさくなった俺は川のほとりにDJを立たせるとその背中をポンと押した。


“トポン”


「ちょ、ちょ、ちょ、何してくれてんの、少年!?三途の川はピラニアたくさんでマジ危険なんだ、YO!!」

「うるせえ、YO」


 ピラニアがいようとサメがいようと心配すんな。お前はDJだ。何とかなるYO。

 そんな事よりこれからどうするYO。ま、この世に未練がないっちゃウソになるんだけど……とりあえず死んじまったんだから何とかしてこの川を渡らなきゃ。


「泳いで渡るのは……さすがに無理かな」


 川幅が結構広いしそこも深そうだ。それになによりピラニアがいるらしいしな。ていうか、なんで三途の川にピラニア?ここはアマゾンかよ。


「三途の川と言えば川渡しがいるはずなんだが……ん、あれは?」


『ボートショップ魔竜王』


 さて、何とかして川を渡る方法を考えなきゃな。え?ボートショップ?何言ってんの?そんなもんないよ。目の錯覚か何かだろう。


「ふふふ……お困りのようだな」

「その声は……!!」


 後ろから聞こえたのは、アホDJとは別の聞き覚えのある声。そう、幾度となく俺の頭に語りかけてきたあの声だ。それがあの世でこんなにはっきりと肉声として聞こえると言う事は……


「そうか……そう言う事か……」


 いや、うすうすはそんな気がしたんだ。俺にしか聞こえない不思議な声。妖怪ですら何も感じられないのに、俺にははっきりと聞こえたのは俺と血のつながりがあるから。そして、その本人があの世にいると言う事は……


「あんた、俺の先祖だったのk……」

「さすが、良平。それでこそ……」


 モコモコの巨体……背中から生えた羽……白い服……手には釣竿………………訂正。熊のようなというより、限りなく熊のフォルムなバデーにハトのようなちっこい羽。それが白い着物を着てぇ?三途の川でぇ?釣りいいいぃぃぃいいい?


「我が子孫だ!!」

「…………」

「どうした……?」


 幻想的なまでにピンク色な空。見た事もないような綺麗な花たち。心を落ち着かせるようなせせらぎの音。どうやら、都羽姫に斬られた上に心臓ぶっさされた俺は三途の川に来ちまったr……


「おーい、現実を受け止めたくないからって、冒頭からやり直すなよ、マイ子孫」

「ふざけんな!!お前のどこが先祖だ!!クマがどうやって進化したら人間になんだよ!!ダーウィンもビックリの進化論だよ!!大体、お前クマのくせに何で背中に羽生えてんの!?何で釣竿使って釣り!?川に入って直接魚をバシコーンってゲットしたらいいだろう!!」

「そんな一度に突っ込まれても困るのだが……まあいい。順に説明していこう」

「はぁ、はぁ……そうしてくれ」

「まず、この姿は本当の姿ではないし、私はクマでもない。元々はお前と同じ姿をしていた人間だよ」

 

 つまり、俺の先祖はクマではないと。あー、良かった。そんなダーウィンも腰抜かすような話されたら、俺どうしようかと思ったよ。つーか現実とこの場から全速力で逃げ出していたね。


「ていうか、何であんたそんな格好してんの?紛らわしいから人間の姿で登場しろよ」

「それはまあ、変装と言うか、変身と言うか、呪いというか……とにかく、こんな姿にされてしまって、仕方ないからクマライフをエンジョイしていたのだ。いわゆる着えろす・・・・だよ」

「………………それを言うならコスプレな」


 ちょっと間違えると大分意味合いが変わってしまうから気をつけような?


「次にこの羽だが、これは単なる飾り……などではない!!本気を出せば数mmの浮遊を可能にする優れものだ!!」

「ど……」

「ど?」

「いや、なんでもない……」


 ただ、ちょっとドラ○もん並じゃねえか、って突っ込みそうになっただけだから。


「そして、川に入って魚を直接バシコーンしないのは……泳げないからだ!!」

「…………」


 最早突っ込む気すら起こらねえ……いっそのことこの川に蹴り落としてやろうかな?


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