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第6話 悲劇的前後

 鼻のした伸ばしてすっ飛んで来たはいいが、想像していた子とかなりキャラが違うミイナちゃんこと先輩に、管理人というだけの理由で彼女の部屋を掃除しろと言われ、ちょっとカチンと来たものの、こんなかわいい子の部屋に入れるんならまあいいか、という下心という名の欲望に負け、いざ彼女の部屋に入ろうとしたのだが……出来ない。


 なぜなら、彼女の部屋には人間を寄せ付けない特殊な結界が張られており、俺は玄関で立ち往生するしかなかった。さらに、すぐ後ろにはかわいいネコちゃんの妖怪が控えており、まさに前門の狼、後門の猫といった感じだ。


「何つっ立ってんだよ!さっさと入れよ!」


 なんか後ろで美少女妖怪がほざいてやがるがちょっと待ってろ。今はまず俺の見ていた妄想と、俺が目にしているこの現実の、悲劇的前後ビフォー・アフターを説明せねばなるまい。さて、ここからは某テレビ番組のあのメロディーに乗せてお楽しみください。


ビフォー(妄想)

 やはり女の子というだけあってキッチンは綺麗に片付いていらっしゃいますね。どこに何があるか一目見ればすぐに分かります。壁にご注目下さい。かわいらしい花柄の壁紙が家に入る人を暖かく迎えいれてくれます。そして部屋全体が光り輝いているようにピカピカにそうじされています。うーん……まさに女の子らしい実に清潔感漂う居住空間ですね。


 さあ、この居住空間がたくみの手にかかるとこのようになります。


アフター(現実)

 綺麗に片付いていたキッチンも獣の手にかかれば一変、まるで番町皿屋敷かよ!といいたくなるほどの乱れぶり。どこに何があるかなんて目を凝らしても分かりませんよ。壁にも獣の技が光ります。なんということでしょう。花柄なんか見る影も残さないほどあちこちにできたクレーター。その数はおよそ200。一体この部屋でどんな紛争が勃発ぼっぱつしたんでしょう。そして部屋全体を覆い隠さんばかりに敷き詰められたゴミ袋の絨毯じゅうたんはまさに生活感なんて欠片もないゴミ捨て場をほうふつさせます。いえ、この異臭はもはやゴミ処理場の域ですね。


 はい、これビフォーとアフターが逆ううぅぅ……


 いやね……たぶん9割ぐらいの読者が予想していたんだろうと思う展開なんだけど……言っておくね。これ、君たちの予想の軽く10倍はひどい。というか酷い。だってこれ散らかってるてレベルじゃねえもん。明らかにドリームアイランド現象だもん。


 ていうか先輩?これもう1民間人に処理できるレベルを遥かに逸脱いつだつしてますよ?こんなの近隣の皆様から臭いなどの苦情が殺到して、役所の人間が業者と撤去しに来るレベルですよ?とりあえず何があったのか住民の方に事情を聞いてみましょう。


「えっと……先輩?何をどうしたらこうなるんです?」

「何か文句あんのかよ!!」


 はい、取材拒否!!


「いや、文句って言うか……」

「お前、困ったことがあったら命がけで何でもするっつっただろうが!!」


 いえいえいえ!そこまで言ってません!命はかけません!この世にたった一つしかない自分の命は大事にしたいです!!


「あのですね……」

「今さら出来ませんで通用すると思ってんのか!?あぁん!?」

「ていうか……あの……あれ……?え……?えぇ!?」

 

 番町ゴミ屋敷に入ることを渋っていた俺に痺れを切らしてしまったのか、先輩はとうとう自分の本性をあらわにしてしまった。


――頭頂部にピンと立つ耳――

いわゆるネコ耳というやつだね。


――スカートの裾から覗かせるにょろにょろとうねる尻尾――

まあここまでなら萌え要素とかいう言葉でごまかせただろう。


――全身から逆立つ毛。ちなみに模様はトラ。ていうか、むしろ虎――

おっと……


――小さなお口に並ぶ綺麗な牙は鉄パイプぐらいなら軽く噛み千切っちゃいそうだぞ――

うーん……


――鋭い爪はもはや鋭利な刃物となんら殺傷力はかわるまい――

…………


 やっぱりか……いや、うすうすは予想していたんだよ?俺が想像するようなネコ耳美少女なんて出て来ないって。でもまさか……こんなゲゲゲんとこの娘さんも真っ青の化け猫が来るとはな……お前それじゃ猫娘というより、人間のコスプレした二足歩行の虎じゃねえか……それじゃ萌えねえよ……ふつうに恐えよ……


「てめえ、分かってんかよ!?」


 しかもめっちゃキレてるよ。むっちゃメンチきってるよ。むちゃくちゃ恐いよ。お化け屋敷なんか目じゃないよ。凄い逃げ出したいよ。だけど足がすくんで動けないよ。それ以前にこいつが出口塞いでるから逃げられないよ。

 いやいや、人を見かけで判断しちゃいけないように妖怪だって見た目で判断しちゃいけない!こいつだって見た目がものすごく恐くても!!口の聞き方が恐ろしく悪くても!!本当はいい奴かもしれないよ?子供の頃に見たアニメに出てくる二足歩行のしゃべる猫みたいな感じかもしれないよ!?ていうかそうだと言ってくれ!!


 そう願った矢先である。この地球上で最も生命力が強い黒光りするGが俺の目の前を横切り壁に止まった。それを見たこの二足歩行の怪物ちゃんは何をしたと思う?言っとくけど「キャー」なんてかわいい悲鳴は上げないからね。はい、それじゃ正解いくよ。正解は……


“ドゴーン!!”


 何ていう現実世界ではまず耳することはないだろうと思っていた轟音ごうおんと共に素手で……いい?妖怪とはいえ女の子にも関わらず素手でだよ?Gを葬り去ったのさ。そして壁にまた一つ新たなクレーターが出来たのであった……

 ってちょっと待て!!このクレータ−の原因全部それ!?じゃ何か?これ全部がGのお墓!?お前どんだけ養殖と殺戮を繰り返してきたんだよ!!いや、待て!冷静になれ!突っ込むところはそこじゃなかった。こいつが素手でコンクリの壁をへこませたってことだ!!俺のほうがへこみそうだが頑張れ!美樹ちゃんこれどういうこと!?元気一杯の力持ち!って、そんなかわいらしいレベルじゃねえよ!!お前こんなの体育会系どころか動物ゾオン系の能力者じゃねえか!!ネコ耳じゃなくてネコネコの実、モデル・レオパルドだよ!!


「目障りなんだよ!クソが!」


 しかも優しさのかけらなんて微塵もありゃしねえ!!


「で、やるのかやられるのかどっちだよ?」


 言ってることおかしいよね?普通さ、「(掃除を)やるのか(掃除を)やらねえのかどっちだよ?」でしょ?でもこの人は「(掃除を)やるのか(あたしに)やられるのかどっちだよ?」て言うんだよ?これ、二者択一のようで実は一つしか選択肢ないからね。やりたくないって言った瞬間、世界政府に消されるからね。


「分かりました……先輩は終わるまで俺の部屋で待ってて下さい」


 こう言うしかあるまいよ。


 そこからの俺はすごかったね。一体どこにそんな力があったの?ていうぐらい頑張ったもん。まず、ゴミ袋の絨毯とコンクリの破片を片っ端から撤去して、バル○ンでGを大量虐殺して、掃除機かけて拭き掃除もして、洗い物や整理整頓も完璧にして、ホームセンターまでひとっ走りして、壁を直す接着剤みたいなもの買ってきてそれで直して、新しい壁紙を張りなおして……まあ簡単に言うと悲劇的ビフォー(妄想)を現実にしてやったのさ。


 あぁ……ただの挨拶だけで済ますつもりが半日を費やし人の家を片付けてしまった。いやこれはもうかたづけというよリフォームだな。マジで劇的前後だよ。これを1人でやったって言うんだから、もう自分で自分を褒めてあげたい。良君えらい!よく頑張った!!でもさ……これだけ頑張ったのにも関わらず、あの先輩は綺麗になった自分の部屋を見てなんて言ったと思う?


「お疲れさん……もう帰っていいよ」


 だってさ!ありがとうのキスなんか期待しちゃいなかったけどさ!礼の一つも言ってくれねえのかよ、畜生!


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