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第59話 百鬼衆現る!!

 神社入り口にて俺たちに奇襲を仕掛けてきた30匹以上の鬼達は、天童のウルトラ反則的なまでの強さに、ものの2,3分で全滅してしまった。結局、俺たちは無事だった。


誰一人怪我をすることなく勝利できたのはいいが、戦っている時の天童の姿……ありゃ一体なんだ?いや、人間離れした強さを持っている事ぐらい知っているよ。けど、こいついくら相手が下種野郎だからって簡単に殺しすぎじゃ……血の海と死体の山なんて戦争映画の中だけの話だと思っていたぜ……まさか現実にお目にかかってしまうとはな……


「恐い……恐いよぅ、管理人さん……」

「先輩……」

「大丈夫ですよ、先輩。悪い奴らはみんな天童がやっつけちゃいましたから」

「ううん、そうじゃないの……」

「え……?」


 じゃあ、何が……!!そうか、先輩が恐がっているのは……


「やれやれ……だから、俺一人で来たかったんだよ……」

「天童……」

「ま、慣れてるからいいけどな……」


 天童の苦笑いは見ていられないほど悲しいものだった。うん、見ていられないな……


「おい、天童」

「良平……?」


 俺は天童の肩を軽く叩くと、精一杯の爽やかな笑顔を浮かべ……


「お前がどんなに化け物じみていても、俺は絶対におべうぇええぇぇ」


 吐いた……盛大に吐いた……勢い良くあふれ出す嘔吐物。飛び散る飛まつ。その先はつい先ほど30匹以上のモンスターを瞬札したお方のお召し物……軽くヤバイ?


「おいおーい、良平さんよぉ……おらぁ、確かにこんな殺人鬼みたいな奴だからさぁ、そりゃ助けた人に礼も言われず色んな事されたよ?」

「いや、違うんだ……これは違うんだ!!待ってくれ!!」

「時には石をなげられました!!化け物とののしられたこともありました!!」

「だってこんなグロテスク極まりない光景生まれてはじめてなんだもん!!そりゃ我慢の限界オーバーしちゃうって!!」

「けどな!!ゲロをかけられたのはさすがに始めてだぜ!!」

「許すのですよ、にぱー☆」

「問答無用!!」


 腰の横に添えられた右手……来る!!アッパーだ。俺のあごに到達するまでの時間は……およそ0.0000000000000000000000000……


「あべし!!」


 考えているうちに天童のアッパカットをまともに喰らった俺は、生まれて始めてトリプルアクセルをきめた。縦方向に……ただ、残念な事に後頭部から着地してしまった為高得点は期待出来ないだろう。


「にゃ〜♪」


 仰向けに倒れた俺をミイナちゃんは超ご機嫌な笑顔で見下ろしてきた。


「あの……先輩?俺がこんな目に合ってるのにどうしてそんな笑顔?」

「うん?ミイナより下等な腰抜けがいて良かったー、って思ったの」


 そうなんだー……うふふー……ねえ、僕死んでいい?


「さて、ギャグパートはその辺にして、そろそろシリアスパートに入ろうぜ」

「ええ、そうですね」

「にゃあ!!」

「うん……」


 約一名テンションが低いまま、俺たちは鳥居をくぐり、神社へ続く石段を上って行った。ちなみにゴブリンズの遺体は、例のクサレポリス妖怪やジャンキーヤンキー妖怪が片付けてくれるとの事なので彼らにお任せいたしましょう。あいつらにはうってつけの仕事だ。見た目的に。


「待て」

「……?」


 先頭を歩いていた天童が、神社まであと数段といったところで突然手を伸ばし、待ったをかけた。何のマネだ?


「良平、ゆっくり上がって来い」

「何でだ?神社はもうすぐ……!!」


 2,3段上がって俺は天童の行動の意味を察した。

 境内のほぼ中央に置かれた折りたたみ式の小さなイスにどっしりと腰を下ろし、両手で刀を杖がわりに武者鎧を身にまとった妖怪が逃げも隠れもせず、威風堂々と眼光鋭くこちらを睨みつけていた。その顔を鬼の面に隠して……


「落ち武者……境甚五郎、か……」

「おいおい、こいつのどこが落ち武者だよ……どう見たって現役バリバリの戦国武将じゃねえか」

「良平、あっちにもいるぜ」


 天童が指差した方には、バチ当たりにも賽銭箱に腰かけ、紙風船を宙に放っては受け取り、放っては受け取りと一人遊びに没頭する和装のお姉様がいらっしゃった。しかし、その素顔はやはり鬼の面に隠されていた。


「片車輪のお菊……」

「き、気のせいかな……?何だかさっき襲ってきた鬼達とは比べ物にならないほどの威圧感があるんだけど……?気のせいだよね?」

「冴えてるな……その通りだよ。あいつもとんでもなく強いぜ」


 マジで〜……そんな正解いらな〜い……どうせなら不正解のほうがいい……


「……おい、良平。あれ……何だと思う?」

「え……?」


 天童の視線の先には………………え?何これ?あれ?鬼の面をつけた犬?落ち武者、片車輪って来たんだから最後は窮奇かまいたちでしょ?それがこれ?いやいやいや、それはない。絶対ないって!!だってこれ、どう見ても犬だもん。シベリアンハスキーだもん。イタチじゃないよ、これ?


「ハッ、ハッ、ハッ」


 ほら、ハアハア言ってるし……ていうか、本当これなんなの?

 そんな事を考えていると、天童が俺に任せろ、という視線を送ってきた。よし、ここは戦いのプロに任せよう。俺もあの能力がまた使えるのかどうか分からないし、使えたとしても使いこなせるか分からないしな……ここは頼むぜ、天童。


「おい、犬っころ。てめえ、何者だ」

「ハッ、ハッ、ハッ、俺様は……ハッハッ……百鬼衆の……ハッ……ああ、もうこれ喋りにくい!!」


 あ、お面捨てた。そして、落ち武者が慌ててそれを拾ってワンちゃんに……


「貴様!!それは百鬼衆のトレードマークだぞ!!ほら、ちゃんとつけなさい!!」

「やだ!!喋りにくいし、息も出来ない!!」

「じゃあ、顔の横につけておけばいいから!!」

「うん……」


 何だこのハスキー……無駄にかわいいぞ……


「改めて、俺様は百鬼衆の一人!!送り犬のポチだ!!」


 ポチって……完全にただの犬の名前じゃねえか……


「ま、今更こんな自己紹介なんざしなくても、この俺様の悪名はそちらさんに知れ渡っているんだろうがな」

「いや、全然知らん。てか、お前ノーマークだよ」

「うそぉーん……」


 あ、ショック受けちゃった。メンタル面弱いな、この妖怪。


「ふふふ……まあ、いいさ。知らねえってんなら教えてやらぁ!!この俺様の恐怖の半生を!!」

「何!?」

「聞いて驚け!!俺様は……」


 長くなるのでまとめます。ポチ君は2年前、長野県の山田さん宅にてシベリアンハスキーの子として生まれ、その後横浜にお住まいの知人の男性にもらわれましたが、血統書でない事が判明し、捨てられ野良生活ワイルドライフがスタート。何とか人様の家で飼われようと必死で人語を学習し、血統書の書類とかを偽造して犬の品評会とかにもぐりこみましたが、3分で事が露見。ただの不気味な犬と保健所のブラックリストに載る歯目に……そんな逃亡生活のおり、百鬼衆の一人、お菊さんに出会い、半ば強引なストーカー的に彼女と行動を共にするようになり、現在に至る。


「どうだ!!恐れ入ったか!!」

「ああ、マジで恐れ入ったよ。まさか、犬が自力で学習して人語を覚えるとはな……バウリンガルいらずだよ」

「ふふ〜ん♪」

「でもな……お前それ妖怪でも何でもねえよ!!ただの頑張りやさんな犬じゃねえか!!」

「ガーン……」


 お、凹んだ。本当メンタル面弱いな。このままじゃかわいそうだし、仕方ないここはクロちゃんのおやつ用のこいつで……


「ほーら、骨っこやるから……取ってこーい!!」

「!!!!アン、アン!!アォーン!!」


 俺の投げた骨っ子めがけて犬まっしぐら。よし、何はともあれ、これで一匹かたづい……え?あれ?ウソ?あの黒い影はまさか……


「待て、新参者!!あの骨っ子はオイラのものだ!!」

「何を!!俺様が先に目をつけたんだ!!てめえなんかにくれてやるかってんだ!!」


 クロちゃんんんんんん!!!!しまったああぁぁ!!まさか、こっちの犬まですっ飛んで行くとは予想でき……あ、玉希ちゃん?


「あんの、クソ犬ううぅぅ……!!」


 こりゃ、帰ったらお仕置きは間違いなさそうだ……

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